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November 17, 2014

エボラ禍で私たちにできること

米国移送の最初のエボラ感染患者がニューヨークの病院から退院する一方で新たに搬送されたシエラレオネの医師が治療の甲斐なくネブラスカ州で死亡するなど、エボラ熱との戦いはまだ続いています。感染爆発の西アフリカでは死者5000人を超えました。

これから始まる新たな社会問題もあります。エボラで死んだ親の子供たちが、感染を恐れる親戚にも見放されて続々
と孤児になっているのだそうです。中でも死者が3000人近いリベリアでは孤児の数も4000-5000人いると見られています。ところが彼らを世話する孤児院がない。

その孤児院を建設しようと、1人の牧師さんがこの夏からニューヨークで資金集めに奮闘しています。首都モンロビアで最大のキリスト教区を持つサミュエル・リーブズ牧師です。

そもそもなぜリベリアで感染被害が多いかというと、リベリアは家族や友人をとても大切にする社会で、道で会っても話をするときでもいつもハグしたりキスしたり手を取り合ったりしているのだそうです。また家族が亡くなるとみんなでその遺体を拭き清める習慣もある。そんな温かい関係がかえってエボラ熱の接触感染を広める仇となったのです。

にもかかわらずエボラの恐怖と社会的スティグマは家族親族の関係を断ち切るほどに強い。私たちも知っているエイズ禍の時と同じです。

リーブズさん自身、9月の故国からの電話で、幼馴染の隣の教区の牧師さんがエボラで急死したという方を受け取りました。国の保険証の担当官と一緒に国内のエボラ患者の支援と救済に飛び回っている最中に自身もエボラに感染してしまったのだそうです。

リーブズ牧師はどうにか孤児たちを引き受ける孤児院を作りたいと奔走しています。全米の教会を回り資金集めに忙殺されていた9月には、幼なじみだった隣の教区の同僚牧師さんがエボラで急死したという電話連絡も受けました。リベリアの厚生省の担当者といっしょに国内各地を回って患者たちの世話をしていて感染したそうです。

リベリアはやっと内戦が終わり民主社会を建設中でした。それがまた壊滅的な打撃を受けています。その立て直しは孤児院の建設から始まると言うリーブズ牧師は、最終的に国内に15の院が必要になると話しています。その第一号の建設地はすでにシエラレオネとの国境沿いに国際支援でできた医療センターと高校施設との共同敷地があるそうです。

資金集めの目標は1000万ドル(10億円)。そこにニューヨークで40年活躍しているジャズマンの中村照夫さんが慈善コンサートで資金集めに協力することになりました。中村さんは日本のジャズ界の大きな賞である南里文雄賞の受賞者で、20年来、日米でエイズの啓発コンサートも続けてきた人です。

今年も12月1日(月)は世界エイズデーです。この日に「エイズからエボラへ」という持続的な社会啓発を謳って中村さん率いるライジングサン・バンドがブルックリン・パークスロープの「ShapeShifter Lab(シェイプシフター・ラブ)」で7時から演奏します。寄付は現金と小切手で受け付けます。詳細は次のとおりです。

    *

【世界エイズデーコンサート=エイズからエボラへ】
日時=12月1日(月)午後7時〜9時
場所=ShapeShifter Lab (18 Whitewell Place, Broklyn, NY=最寄駅はR線のユニオン・ストリート)
出演=Teruo Nakamura & the Rising Sun Band, with Monday Michiru (Vocal/Flute)
入場料=15ドル
寄付願い=できれば10ドル以上を。小切手宛先は The Safety Channel。全額がモンロビアの「Providence Baptist Church Medical Center and Orphanage」へ寄付されます。

November 05, 2014

失望の選挙

2年前の大統領選の時には「オバマ人気」のことを書いていたのに、この中間選挙でこうなると予想していた人は少ないんじゃないでしょうか? しかしその「オバマ不人気」の原因はというとどうもはっきりしません。

強いて挙げれば医療改革で例の保険サイトが初っ端からひどいバグだらけだったこと。それに保険に関しては今のところ出費だけで、新たに病気になってその保険の恩恵を実感できる人がまだ少ない。かくしてプラス評価が出てこない。

イラク撤退。これは当初は評価されましたが、その空白をねらって隣のシリアからイスラム国が台頭してきた。しかもマンハッタンで斧を持ったイスラム国支持男が警官を襲って重傷を負わせ、カナダでは同じくオタワの国会でイスラム国支持男が銃を乱射して……はてイラク撤退は果たして良かったのかという疑念が大きくなっています。

外交上の疑念はそれ以前から芽生えていてイラクやシリアだけでなくリビアもぐちゃぐちゃ、ウクライナではプーチンの良いようにされたまま。「世界のリーダー」だったアメリカはこれでよいのか、あるいは「このままでは国内でまた本格的なテロが起きるかも」という不安が漂ってさえいるのです。

そこに経済です。失業率や株式市場などの数字上の好転がありながら、景気の良さが一般国民にほとんど実感されていません。つまり格差が広がって、単に上部の富裕層が数字を引っ張っているだけじゃないのか?

でも元を正せばこのすべては前政権の失政のせいでした。心の中で「なんでその責任がぜんぶオレに来るんだ?」とオバマは叫んでいるかもしれません。

大統領選挙は「希望の選挙」と呼ばれます。未来を語り、希望の道筋を示すのです。それに対して中間選挙は「失望の選挙」と呼ばれます。選んだ大統領に対して「こんなはずじゃなかったのに」と思う要素が強く出てくる。

この不人気の原因はオバマの失政というより、むしろ彼が2回の大統領選で示した「希望」の大きさに、現実が付いてきていないことへの「失望」なのではないのか。おまけに中間選挙ではその「失望」のせいかあるいは大統領選で示されるような「明確で大きな争点」の無さのせいか、オバマ旋風の基礎となった若者層、社会的マイノリティ層がそもそも投票に行かないという傾向も影響しました。そして決定的なのが、今回改選分の上院議員は、08年のオバマ旋風でに乗って「勢い」で当選した人たちが多かったということ。旋風なしに当選することはそもそも難しかったのです。

だからといって国民が共和党を支持しているのかというと、茶会派で極端に走る彼らへの信頼は厚くはありません。共和党に穏健派が少なくなったことで民主党にも極端に走る議員が増えて、議会に対する国民の信用は14%しかないのです。

こんな不安な時代に人が求めるのは、実はオバマのような理詰めのリーダーではないのかもしれません。「理」よりも「情」に届いてくる、明るく包容力のある人間なのかもしれません。かといって2年後の選挙で出てくるヒラリーがおおらかな「肝っ玉母さん」になれるかははなはだ心許ないのですが。ただしその選挙で改選される上院議員の多くは10年のお茶会旋風に乗って当選した共和党議員でもあります。それが「ヒラリー政権」の追い風になることは考えられます。

それ以前に、オバマが残る2年をどうやりくりするかが問題です。世界に山積する難問は、彼にレイムダックになるヒマを与えないからです。