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Bouley Upstairs

2005-10-10 w/yoshie
Bouley Upstairs
☆☆☆☆
122 West Broadway NY., NY. USA
予約とらず


煮蚫の蚫煮汁と雲丹のソース
イタリアのママのズッキーニの酢漬けをニンニクとオイルで和えたものを刻み、真鯛の千切りといっしょに混ぜて
紋甲いかのウンベリア製プロシュート巻き&大根煮にマグロの脂身の炙り焼きをのせて酢みそを添えたもの
boiled skate & gnocchi with carrot & passion fruits sauce w/pomegranate, baby basil
sauteed bass and foie gras with truffle vinegar sauce & sliced baby green tomato
grilled swordfish with gin & red bell pepper sauce(?)
コーベビーフのブロイルの海苔ソース カボチャの煮付けを添えて


やっぱり、書き初めはここにしなくちゃならんだろうねえ。

おれはね、日本でバブルのときに新聞記者をしていて、まあ、適当に金はもらってたんだけど社会部記者だったもんで忙しくてさ、あんまりたいしたレストランなんか行かなかった。というか、時代って恐ろしいもんで、あのころ、80年代から90年代の初めにかけては、日本には、東京にさえ、おいしい地酒なんか出回っていなかったし、ワインなんて雲上の高級酒というか、バカ高かったから味もわかるほど飲めなかったわけさね。チーズに関しては何をか況や。

そんで、運あってニューヨークに来てさ、まあ、話せば長くなるけど、ワインは安いし、チーズは安いし、おまけにちょうどニューヨーク自体のグルメブームにかち合った幸運もあって、バルサミコなんてののうまさも初めて知って、オリーヴオイルとバルサミコだけでなんだって食べられるじゃん、とかって思ってたときに、知り合いのジュンコちゃんに、「おいしいところ、あるのよ。連れてってあげる」っていわれて、そんでトライベッカのBouleyってレストランに初めて連れて行ってもらったわけなのですよ。

緊張しましたねえ。なんせ、ジャケット着用でしょ、ネクタイなんかうまく締められないの、当時、おれ、自分では。

そしてさ,Duane Street にあった、昔のブーレイのね、厚く重い、大きな木製のドアを開けたらさ、箱入りの林檎が山になって積まれているの。そんでその香りが、ほわーんと清々しく我を包めり、なわけですよ。

4時間,あるいは5時間でしたね、シェフのお任せコース。
私が食べたのは、何だったのでしょう。地上のものではなかった、と思ったのは、それまでにちゃんとしたフレンチを食べたことがなかったから? いや、そんなことはないと思うんだ。美味いものは知ってたの。まずはうちの母親の美味いものはほんと美味くてね、それにB級グルメだって美味いものと美味くないものは知ってた。謙遜していわなかったが、一応高級料亭とかも役得で何度か行ったことがあるし、本格懐石だってフレンチだって日本では一応ちゃんとした一流店も知ってたわけですさ。

でも、違ったんです、このDavid Bouleyの作るもんは。なにからなにまで。
ジュンコちゃんはBouleyを知っていて、そんで、Davidもきっと自分で作って出してくれていたんだと思う。そのときも他のテーブルと出るものが微妙に違っていたから。ってか、当時、彼はほとんど毎日そうやって客ごとに特別な料理を出していたんだね。

で、毎月、通い始めました。
ずっと、1993年から、一時閉店の96年まで。
一度として同じものが出てきませんでした。
たった一度、なんだったけかなあ、魚かフォワグラか、焼き具合がなんだか違っていて、聞いたらDavidがいなくて別のスーシェフが焼いたんだってすまなそうにいわれた。そのときだけでした、出されたものに隙があったのは。

わからないのさ、なにがこういう味になっているのか。ソースがね。
まあ、果物と野菜のだしがキーなんだろうなあ。でも、食べてるうちに分析の意欲がへなへなと崩れ落ちて、美味さに身を委ねて陶酔してしまいたくなるの。

そんなかんなで13年。
で、本日も行ってきました。アップステアーズ。ブーレイ本店ではなくて、いま(2005年秋冬)はここでDavidがオープングリルの前に立って、客をオーディアンスに料理をしています。(2006年からはテストキッチンでやっていて、アップステアーズには深夜の客としてくるほうが多くなってますが)

先日、エリック・クラプトンが来てね、という話をDavidがうれしそうにするのだ。うれしそうなのはクラプトンが来たからじゃなくてね、クラプトンが、レコーディングのスタジオに籠っているとこれはおれの仕事じゃないって思うんだって言ったことがうれしかったらしい。おれにはオーディアンスが必要なんだ、って言うんですってよ。

Davidいわく、「そうなんだよ、オーディアンスがいることが必要なんだ。きみとか、エリックとか、他の常連のあの人とかこの人とか」って、そうかそうか、クラプトンもDavid Bouleyのオーディアンスなんだよね。一流ってのは、一流を相手にその話を自分の話にして喰ってしまうんだわのう。

いまアップステアーズには和食のNYトップである三上忠夫さんが寿司カウンターに入っていて、従って冒頭のようなメニューとなります。きょう面白かったのは、三上さんが出していると、Davidがやってきて、そろそろおれにも出させろと言って来ること。店に入ったときは「きょうはハンバーガーとピザを作ってやる」と、これまたいままで食べたことのないものを料理してやろうぞ、という顔だったのに、三上さんの出すものを見て3品とも魚にして来たのが面白かった。張り合ってるんだもんね、おたがい。クソっ,そう来るか、とかいって。

ああ、客冥利に尽きるなあ。これ以上、何を望めるレストランがこの世に存在するのだろうか。

料理はスッゲエが、サービスは混乱中。

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