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Jean Georges

07-05-03
フレンチ
ジャン・ジョルジュ(Jean Georges)
☆☆
1 Central Park W.
(bet. 60th & 61st Sts.)
Manhattan, NY
212-299-3900

ずいぶん久しぶりのジャン・ジョルジュです。何年ぶりかなあ。5、6年かなあ。
そんなにご無沙汰だったのにはもちろんわけがあります。
おいしいと思ったことがないから。はは。ミシュラン3つ星に向かって何というだいそれたことを!
でも、ここがニューヨークで4つある「三ツ星レストラン」の1つだと知って、ミシュランというのは、あ、そういうものなんだあ、とすこし得心したところもありました。

で、3つ星獲得後初めての再訪です。
この日は、ブーレイで働いていたタマちゃんがもう6年になるんでそろそろ他のところも知りたいと言ってブーレイを辞めて、次はマリオ・バターリのデル・ポストに移るというのが決まったので、そのお祝いも兼ねてランチに行ったわけです。ものすごく清々しい春の日で、2時の予約の30分前にコロンバスサークルで待ち合わせしてセントラルパークをちょっと散歩しました。ニューヨークはこの季節がいちばんいいね。

さて2時に入ったらまだ満席です。バーカウンターのあるカジュアルダイニングの席もいっぱい。で、キッチンを見たらジャン・ジョルジュがいたんで軽く会釈したら出てきて挨拶してくれました。こないだ、アップステアーズで彼がデイヴィッド・ブーレイといっしょにいるときに私が現れたら紹介されたんで向うもなんとなく憶えててくれたんでしょう。で、テーブルが空いたらウェイターが来て「シェフがお造りしますがお任せメニューでよろしいですか」となりました。こういうの、楽でいいわあ。日本人だなあ。


(クリックすると大きくなります)

ジャン・ジョルジュがおいしいと思ったことがない、のは、どうもそのスパイスの使い方にもあります。ここが最初にオープンしたのは10年ほど前。そのまえに彼はマンハッタンでビストロ形式とタイ風フレンチのレストランを持っていました。かなりアジアのスパイスを多用する、エキゾティックな味わいを自分のオリジナリティにするべく意識していたんですね、きっと。

でも、それが私のような日本人には付け刃というか、とがり過ぎというか、はっきりいって素材と味付けをどうしてこんな組み合わせをするのかわけわかんない状態だったわけです。味がバラバラ、あっちに飛び、こっちに外れ、そっちにズドン、ってな感じ。んー、もっとわかりやすくいうと、うどんの汁にバニラとシナモンを混ぜてブルーチーズ塗った刺身を食べさせる、みたいな(うへー、わかりやすい)。

さて、突き出しに出てきたのはこの店の有名なエッグカスタードにクレームフレーシュのホイップを載せてキャビアを食べさせるもの。
eggJPG.JPG

これはまあ、そのままの味です。塩加減がちょうどよろしい。でも、カスタードがちょっと熱を通し過ぎでややダマになってます。もうすこし口溶けのよい、滑らかなものに仕上げなければいけません。

続いて出てきた前菜がこれ。
何だと思います?
hamachi.JPG

ハマチの刺身と日本のキュウリの漬け物ですわ。それで目の前でこのポン酢を注ぎ入れてくれるところがフレンチなんでしょうね。はは。で、上には七味みたいなスパイスが軽く振ってあって、ポン酢もこれ、カボスかな? これはわれわれが日本人だからという配慮かしら? ハマチもこうやってキュウリと同じく筒状に切るおフレンチな発想。面白いね。で、味は、まあ、おいしいけど、なんか、微笑ましい、という言葉が思いついてしまうという印象。お家で作れますよ。キュウリの漬け物、ほんとにキュウリの漬け物だから。浅漬けの素つかったみたいな。

次のアスパラガスはおいしかったです。アスパラがおいしい。
それにモレル(網傘茸)のシャロンソースなるものがやはりこれも目の前で載せられます。
aspara.JPG

シャロン・ソースって何?って訊いたら、シャトー・シャロンとかいうフランスのワイナリーのことを説明してたから白ワインのブール・ブランみたいなもんでしょね。モレルもちょうどいい火の通り。白ワインと言いましたが、ソースはなぜかアルコールがまだかなり残っているふうで、ブランデーの味がしました。それが狙い目なのかどうかは訊きませんでしたが、春のアスパラはとくに茎の太い部分がやさしく甘くすべてを赦すような幸せな味がしました。

次がジャン・ジョルジュらしいエビと冬茹(どんこ)シイタケの柚子フォーム仕立て
YuzuShrinp.JPG

ドンコとはいっても、なんとなく普通のシイタケでしたが、エビと一緒にグリルしてあって、この柚子の泡のソースの下に眠っています。けっこう柚子、ぐいっと迫ってきます。逆にエビは叩いてあるのか、とてもほんのりほわほわ風味でした。で、その下にさらにマヨネーズが敷いてあって、そのマヨネーズがぴりりと辛いのは青唐辛子でしょう。ってことは柚子胡椒を混ぜ入れたのかもしれないね。ジャン・ジョルジュらしいというのは、この感じ。この組み合わせ、けっこう力技。面白かったです。

そして魚になります。
seabass.JPG

シーバス(すずき)がきれいなプチトマトのマッシュルームブロスの上に載っています。きれいな一皿です。
で、このマッシュルームブロス、甘酸っぱくておいしい。それだけでなく焦がしバターを混ぜ込んでいます。つまりブール・ノワール(黒)、もしくはノワゼット(焦げ茶)ていどにしたバターの風味がトップノートなのね。で、酸味はトマトウォーターか、あるいはそれにもちろんレモンか。甘みは砂糖でしょうかね。そんでもってふとカレーっぽい香りがかすめるのはきっとコリアンダーシードあるいはカルダモンが入ってるんだと思う。すずきが皮目に纏っているのはおそらくマッシュルームパウダーだと思われます。
おいしかったです。
でも、これ、自分でも作れそうです。今度のパーティーで作ってみましょ。

最後のお肉は、これは自分では作れません。素晴らしいスクワブ(雛鳩)でした。
squab.JPG

スクワブはスモークされていました。これでスクワブのあの血臭さというかレバー風味というか、そういう野趣が野趣のままぐいっと私たちの手元に入ってきてくれます。スモークというのは偉大な調理法です。焼き加減はいうまでもなく、おそらくいままで食ったスクワブの中でトップクラスに入る料理でした。ソースはスクワブのジュにマーマレードっぽく詰めたオレンジ。そこにミントがかぶさっています。ショウガもほんの少し? 白いのはアジアン・ペアつまり丸い形をした日本の梨です。これはただ甘いだけで不要でした。シャリシャリ感はいいのですが、甘くてスクワブの味をぼやけさせるだけです。レモンかオレンジのジュースに漬けてから添えるとかしたらワザありだったと思います。スクワブの上には細かく3切れほどキャンディー(砂糖漬けコート)したドライフルーツが載ってました。梨だったのかなあ?

そこでデザートとプチフールになりました。
deserts.JPG

PetitFluer.JPG

ランチというせいか、あるいは三ツ星を取ったせいか、あるいは春のせいか、今回のジャン・ジョルジュは味の整え方がすこし落ち着いた感じがしました。で、おいしくなったか、というと、うーん、スクワブは見事だったけど、ほかのは私の中ではやはり☆☆かなあ。なんでだろう? 何が違うんだろう? いや、けっしてまずくはないんですよ。

同じ☆2つでも、ここのレヴューに書いてあるレストランで、書き方が違って絶賛しているところもありますが、それは期待値に対してのその期待のプラス方向での裏切られ方、あるいは頑張り方、が私を感動させるのです。ただ、こうやって振り返って見ると、☆の付け方はけっこう絶対値です。☆☆のレストランはいまいくつあるんだろう、でも、振り返って思い出してみても、この☆☆のレストランたちは私にとってはジャンルは違えど、みな同じレヴェルの味がするのです。それは「とてもおいしい」ということなんだけどね。でも、じゃあどうしてジャン・ジョルジュには「とてもおいしい」と、そういうふうな書き方にならないのか?

わっかりませ〜ん。

つまり、☆の数はかなり客観的な満足度の評価、書き方は、ずいぶんと主観的なあれやこれやの思い、ということですわ、いずれにしても。
だもんでそのつもりで読んで下されまし。わたしも自分が主役な人間なのですわ。はは。

ちなみに、この日のランチは、予約時間どおりにテーブルが空かなかったせいか、バーカウンターで頼んだカクテル計2杯(計30ドル相当)とかデザートに付けた紅茶とか、ぜんぜんビルに付いてませんでした。ジャン・ジョルジュお知り合い値段ってことか。したがってお値段は2人で料理各55ドル、白ワイン(nigl=ニーグルと読むオーストリアのワイン。安くてうまいの)55ドル、それに発泡水代と税金とチップ合わせて213ドル払いました。ランチはお得っていうけど、料理の55ドルだってキャビア出してこれはないわね。ぜったい1皿分くらいおまけしてくれてるね。

というわけで、かなり満腹・満足で出てきてもまだ空は4時45分の春の明るさでした。

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