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Wakiya

2007-11-11
ヌーヴェル・シノワ(新中華)
Wakiya
☆☆
2 Lexington Ave.(21st St.)
in Gramacy Park Hotel
212-995-1330

ニューヨークの中国料理は、いやアメリカ全土でそうかもしれません、中国系移民の歴史と伝統から、外食産業においても古くから日常料理として発展してきました。したがって、チャイニーズ・フードというと、1970年代初期からこれはデリバリー用とか持ち帰り用のファストフード的な位置づけで急速に広まりました。チャイニーズはけっこう味付けもはっきりしているし、甘酸っぱかったり辛かったり、アメリカ人の嗜好にぴったりだったわけです。そこで彼らは箸の使い方をこのチャイニーズでおぼえた。その後しばらくして日本食が流行したときに、「お箸の使い方がお上手ですねえ」と日本人に会うたびにいわれて辟易するのは、そのチャイニーズ好きの背景から、そんなの当たり前なのに日本人は箸の何を特別だと思っているのだろう、と思っているからです。

そういうわけで、中華=普段料理、という構図で、マンハッタンにも高級中華というのはありますが、なかなか最高級クラスは期待できません。なんといっても繊細さに欠ける。内装や食器類もなんとなく嘘っぽい。高級な酒を置いていない。それに、トドメが、サービスも一般的にかなりぞんざいだということが理由です。

そこに日本のwakiyaが来るというので、私たち日本人の期待はいや増していました。しかもサービススタッフはNOBUの連中で、しかもオープンまで1か月間徹底的に実地訓練したと聞いています。ってか、NOBUって、トライベッカの店のウェイティングスタッフはかなりスノッブで軽佻浮薄、あんまり気持ちのいいサービスじゃないんで、私はよほど招待でもされない限りあの店には行くつもりはないんですけどね。

さてこのWakiya at Gramacy Park Hotelです。
結論を先に言うと、個々の料理の味はかなりおいしいです。繊細で上品。

ただ、なんちゅうのかなあ、食材さえそろえば、なんか、おれにも作れちゃう、みたいな感じがするのはどうしてでしょう。エピセではそんなことはみじんも感じなかったのでしたが……。うーん、きっと上海料理とかって、どっちかっていうとじんわりとおいしいもんだから、四川みたいに、どうだ、みたかあ〜! みたいな迫力で脅すみたいなことをしないからかなあ。そうかもしれませんね。するとそれは私の現在の好みの問題だということでしょう。脇屋さんって、上海料理だっけ?

それと、どこか節々にやはりアメリカのチャイニーズの雰囲気を消し切れていない、というのも感じました。なんでかなあ、と1日経ってから考えたんですが、ふと思い至りました。最初の前菜とか、北京ダックの添えの、キュウリとかネギとかの千切りの仕方が、日本の高級店と違ってじゃっかん太いし不揃いなのです。日本の高級中華って、こういうところ、ものすごくきれいですよね。それがちょっと違うことによって、口に含んだときの食感がざらつく、粗いものになっていた。そのせいかなあ。でもそれだけじゃないような気もします。

ウェイティングもやはりNOBUっぽくてけっこう軽めです。

しかしまあ、マンハッタンの中国料理としては、ここは最高級に属するでしょう。
あ、そうそう、デザートがすごくうまいです。とくにマンゴプリン。お試しあれ。

メニューはスタッフにおまかせで大皿で人気料理を出してもらいました。

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棒棒鶏です。四川の代表料理。ソースが香り高く、うまいです。こういうの、もちろん好きです。芝麻醤は使ってませんね。香辣醤みたいな感じです。いやしかし、中華のこういう辛味発酵調味油ってのは奥深くてわかりません。で、ほら、胡瓜、千切り、ちょっと太いでしょ? 日本の胡瓜を使ってるのかなあ。カービーじゃないよね。

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これは牛肉のサラダ、ユズ風味のドレッシングだって。これも辛味油です。ラー油でしょうか。そんなに辛くはありません。
プチトマトとセロリと、そういう野菜との組み合わせが清々しくおいしいです。蕪の形も、茎を付けたまま縦に薄切りって、かわいいね。
でも、ユズはほんのかすかな風味で、聞かなきゃちょっとわからなかったかも。

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ティン・タン・スープ(Tin Tan Soup)っていうんだが、どういう意味だろうね。Tan は「湯」だろうけれど、では Tin は? ま、いっちゃえばワンタンです。上等な鶏ガラのスープです。そこにごく滑らかなワンタンの皮に包まれたふわふわの具が入っています。鶏肉、葱? レンコンもしくはクワイ? それで卵白なんでしょうか山芋のたぐいなんでしょうかこのふわふわ加減の素は。とてもおいしいです。上品で優しい。でもしっかりと味覚の芯まで食い込んでくるような。もっとも、これも作れといわれたら作れるような。その辺がビミョーです。
で、勘定書を見たら、これ、小椀だったけど、1人13ドル付いてるわ。これ、間違いでしょうね。5人で65ドルだもん。店のレビュー類のメニューでは、普通椀で1人前9ドルだもんね。絶対間違ってるわ。くそ。
うーむ、ここの店も、最後のビルはきちんと確かめたほうが良さそうです。

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北京ダックですね。1人1個。はい、この日はブーレイ・アップステアーズの三上さん、山田さん、そしてマリアさんと宝石デザイナーの石田さんの5人で参りました。
この北京ダック、あまり変哲がありませんでした。もちょっと脂があってもよかったです。期待されるしっとり感とパリパリ感、その強弱がなかった。そんでもって、ほら、このネギとキュウリ、ね、またでしょ?

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小龍包は豚と、ロブスター&ロブスター味噌の2種類。
針ショウガの黒酢が付いてきます。酢は味がきついのでパスして、酢を付けずにショウガだけ載せてそのまま食べてもぜんぜんだいじょうぶ。そっちのほうがおいしいかもね。
チャイナタウンに小龍包が名物のレストランがあるんだが、そこの小龍包はなんだか生臭くてぜんぜんだめでした。wakiyaのこれはそんなことはもちろんありません。上等です。

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これはFiery Chicken 火の点くような鶏、って意味ですね。でもふつうの鶏の唐揚げです。薄く黄色っぽく見えているのがそれ。赤い短円錐形のものは大量の唐辛子です。それをガーリックと日本の実山椒の佃煮みたいなので炒め合わせちゃったものです。量は多く見えますが、唐辛子は辛くて食べられません。唐揚げ部分だけを探りつつ食べます。唐揚げは、しかしぜんぜん辛くありません。どちらかというとプレゼンテーションですね、この料理は。

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タンツウ・シーバスって英語でいわれたので、これは糖醋(sweet and sour)和えのスズキの唐揚げ。そのままの味です。

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これね、Washu Beefの黒胡椒ソースってやつなんですが、ワシューってのは和州で、もともとは米国最北西部のワシントン州のことです。そこで和牛とアンガス牛を掛け合わせてアメリカ産の和牛ができあがった。それでワシントン州と日本の「和」を掛けて、こうした米国産の和牛を「和州牛」と呼ぶんですね。NOBUとかでもこの和州ビーフを使ったメニューがあるから、同じ仕入れなんでしょう。
とても良質のビーフです。お豆があるから豆鼓でも使ったソースかしらと思ったら、そうじゃなくてけっこうあっさり目のソースでした。こういう場合、でもちょっと牛の乳臭さというか、いくら上質のビーフでも特有の臭みが出てしまいます。塩胡椒だけでは立たない臭みが、こういう液体のソースだと出ちゃうのはなぜなんだろう。

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これはオムライスからの連想でしょうね。チャーハンを卵焼きでくるんで、その上からXO醤の餡を掛けた。ま、チャーハンの中に入れる卵を外側にした、というのでもいいけど。
私は餡かけチャーハン大好き。これは干しえびや干しホタテなどXO醤の味と香りが立っておいしうござんす。

で、じつはこれでも足りないというので最後に焼きそばなんぞを頼みました。

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上海焼きそば。
これがいちばんおいしかったかなあ。
麺はもちもち。しっかりと海鮮の具の味がしみ込んで、これ以上はないといううまみの凝縮系。
野菜もシャキシャキ。海老はぷりぷり。日本人、こういうのに弱いです。

それでデザートに行きました。
マンゴープリンの下から吹き出るドライアイスの雲!
マンゴープリンって、こういうふうに作るといいんだという見本形です。果肉の繊維が残って、さらに生臭さもマンゴーならでは。それが嫌味ではなくまとまっています。わたし、マンゴー好きじゃないんだけど、これなら食えます。
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これは杏仁豆腐の脱構築形。私としては中央のスポンジもソルベもいらないから、目の前で掛けてくれるアーモンドミルクと周りのアーモンドゼリーを山盛りで食いたい!
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というわけで、なんだかんだと腹いっぱい。
ここはファミリースタイルで取り分け式じゃなくて、個別サーブもあります。
値段はちょい高めですが、4人くらいで来て取り分け式でいろいろ頼めば比較的安く楽しめると思います。
ワインはボトルで50ドルからあります。取り揃えは多くありません。赤白各30種くらいでしょうか。でも、今宵はサンセール(60ドル)、ピューイ・フュメ(55ドル)、ヴーヴレー(55ドル)、と白のロワールで攻めて、それからアルゼンチンのTerrazasのリゼルバのマルベック(50ドル)で締めました。ワイン、これも市価と比べて2.5倍強とやや高めの設定ですが、おいしいものをそろえているようです。

あと、紹興酒、老酒などがメニューに見当たらなかったけど、どうなのかしら。

ちなみに、脇屋さんは1か月に1度の頻度でやってくるそうです。

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