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February 02, 2008

Falai(再訪)

2008-01-29
イタリアン
ファライ(Falai)
☆☆☆☆
68 Clinton St.
(bet. Rivington & Stanton Sts.)
Manhattan, NY
212-253-1960

前回ここに掲載してからじつは3度ほどすでにこの店には来ていまして、そのときどきに瞠目すべきメニューが続いていたのですが、今回は驚くほど楽しく美味しく、あらためてその才能を感じました。恐ろしいです。

最初のアミューズはおちょこサイズのちっちゃなロブスタースープです。ほんとにクイッと一口だけど、ロブスターの味噌と肉とが隠れています。凝縮した味に、厳寒の冬のNYのメニューの意気込みを感じる出だしです。
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つぎはこれまたやさしいウィンタースクワッシュとアプリコットのポタージュ! それに子牛の軽いミンチの入った小さなトルテリーニ。立っているのはパルメジャーノです。
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そんでもってこれが極楽です。
タコです。下にあるのは雪が温かければかくあるかと思うような淡いポレンタ。
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デビル(悪魔)の異称もあるくらいですんで、盛りつけも不気味でいいですね。写真じゃ大きさはわからないでしょうが、タコは幅5cmほどのこれもミニチュアなんです。イイダコなのかなあ、それにしては足が細長い気もするけど。それがほろほろと崩れるように下煮してあって、それをグリルしてカリカリさと燻香を纏い、上にキャヴィアが載っています。で、緑のソースはオレガノとミントの風味です。はじめ、なんだかわからなかったが、こうやって写真を見返すとたしかにミントの葉っぱが載せられてあるね。なんちゅうか、皿の上でさまざまな味と食感の交差軸が生まれていて、それが1つの世界を構成する。じつに多様ながら、それらが争うことなく平和に共存する。この世には、紛争地区みたいな皿があまた存在するというのにね。

ういー、と唸っているあいだに、次のが来ました。
こりゃ、ぜったいに写真から味を想像することはできませんね。
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いろんなシェフ100人にこの写真を見せて、どんな味だか当てさせてみても、当たる人はまずいないと思う。
ヒントは、これはリードヴォーをイタリアのパン粉(細かい)を付けて揚げたもの。これもほんの5cm足らずの大きさです。でも、それでなおさらわからなくなる。
で、口に含んだとたん、とにかくありとあらゆる予想を裏切って舌と鼻腔がははあっ?と驚きます。そんで、うめえじゃねえか、これって、となるのです。

さて、この黄色いソースは何か? またカボチャ系統だと思うでしょ? 違うの。リンゴとオレンジのピュレなのです。そんでもって、アップルパイの中身のようにバターの焦がした味がして、キャラメル状態でデザートみたいに甘いのです。じつは写真には写ってないが、周りにはオレンジマーレードとバターソースが飾ってあります。さらによーく見ると、フルール・ド・セルがリードヴォーの上にパラパラしてありますね。
このコンビネーション! なんでこんな発想ができるかなあ。

これも、このサイズだからできる味だと思う。そうかあ、サイズと味の濃淡、冒険の具合、そういうものは密接に関わっているのですね。こんなの大皿いっぱいくれても困るもん。さすが、小皿料理のスペインのタパス、いやエル・ブリで修行してきただけある。わたし、いままでエル・ブリの料理を見て話を聞いて文章を読んで、果たして料理としてうまいのかどうなのか、と実際を知りもせず考えたりしてましたが、こりゃ、行ってみなくちゃしょうがありませんね。エル・ブリのブームから10年も遅れてますが……。

で、この甘くとろけるような皿のあとは、これ。
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これもなんだかわからんでしょ?
そう、リゾットなんですがね、上に載ってるのはフォワグラと、そんで、ニワトリの鶏冠(とさか)ですよ。

これもサイズに合った味付けです。リゾットはぐいっとチーズを利かせ濃厚、フォアグラはまろやかに、そしてこの鶏冠、どうやってるんだろ、下茹でして、ワインかなんかで煮たんだろうか。ゼリー質でジビエっぽいんだなあ、中華ではあるんでしょうけど、私は初めて食いました。いやはやありがたいことです。

まだ続きます。
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これね、カカオつまりチョコレートの元の粉ね、甘くないやつ、それをパスタに練り込んで、なかにスクランブルエッグを入れたそう。で、上にウニと唐墨をあしらえて軽い塩味で食わせる。いや、うまい。

この辺から酔っぱらってしまいました。
なさけない。料理がうまいとワインが進み、ワインが進むと料理がわからなくなるという、ダメダメな私です。反省。

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ワインはカンパーニア地方の白、ファランギーナ種のやつから始めてもう1本白を頼み(銘柄忘れた)さらに赤へと進んで、ポデレ・ディ・ジネプリ・ガッテイナーラの2001年(ネルヴィ)、さらにタウラジのレセルヴァ2001年、ともにDOCGです。前者が105ドル、後者は100ドル。まずまずの値づけでしょう。うまいもんねえ。

まだ出てきます。
こっからメインなんでしょうね、まずは鯛です。これもあっさり味ですが、すんません、憶えてません(汗)。
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そんで、鹿。ぺろっと食べてしまいました。
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はあ、極楽です。
この後、インテルメッツォの柑橘系の冷たいスープが出て、デザートが2品。
参りましたあ。

今夜のシェフズ・メニューはぜんぶ含めて1人90ドル。
5人で行ったのですが、ワイン入れて税金払ってチップ入れて、1人頭計190ドル見当でした。
素晴らしい夜でした。ごちそうさまでした〜。