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January 20, 2008

Wakiya(再訪 ランチ)

2008-01-15
ヌーヴェル・シノワ(新中華)
Wakiya
☆なし
2 Lexington Ave.(21st St.)
in Gramacy Park Hotel
212-995-1330

友人のお誕生日会を兼ねてwakiyaにランチで行ってきました。
60ドルのお任せコースだったんだけど、なんだか、ふつうのチャイニーズでした。
てか、いちばん首を傾げたのは、コースなのに、麺とかご飯ものとかが付いていないのです。
おもわずいちばんシンプルな海鮮系のタンメンを追加注文しちゃいました。

こういうの、いけないんじゃないでしょうか?
どういうコンセプトなのでしょう?
ご飯、頼めばよかったのかな、ふつうのチャイニーズに行ったときみたいに、注文すれば無料で白米、付けてくれるはずだったのかもしれませんね。

メニューはロブスターとグレープフルーツのサラダから始まり、次もロブスターの味噌を使った辛味のある黒豚角煮。重複、リダンダンシーです。

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次の揚げシーバスのスープ仕立てもまずくはないがべつに、という感じ。
最後は例によって和州ビーフの黒酢揚げ煮です、それのサラダ菜巻き。これはせっかくのビーフが、なんだかわからなくなっちゃってるという代物。しかも、下に敷いてあるのが、先のシーバスのときと似たようなもんで(ウェイターに訊いたら両方ともレンコンを棒状に切って揚げたものだと言ってましたが、なんとなく違うような気がします。どっちかはパースニップだったんじゃないかな)、それにしてもロブスターが2品にまたがっていたりと、こういうの、もうちょっと気を遣うべきでしょうね。

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ふーむ、こんなもんかね。
まあ、いっときますが、まずくはないんですよ。
でも、そんなにうまくもないの。

向こうの席にヒロミ・ゴーがランチを食していて、誕生日の友人が写真をいっしょに撮ってもらったのが、よかったといえばよかったですけど。

ちなみに、昨年11月のディナーの訪問時はこちら
こちらの☆2つもおまけが入ってたんですが、今日のと合わせて☆1つがこのレストランのまあ正当な評価かもしれません。

January 14, 2008

Bar Blanc

2008-01-11
フレンチ-アメリカン
Bar Blanc(バー・ブラン)
☆☆☆
142 W 10th St(ウエストヴィレッジ)
New York, NY
212-255-2330

ブノワで食わされたあのロースト・ポークのどうでもよさを、さらに際立たせてくれると書けばよいのかそれともそれを覆い尽くして癒してくれたと言えばよいのか、とても美味しいロースト・ポークに新年早々出遭いました。そうそう、これです、ロースト・ポークはこうでなければなりません。皮をわざと残してそこをカリカリカリッとさせ、そうして肉部分はやわらかなれど肉の食感を保ってしっとりと火が通っている。もう、こんなに穏やかに幸せな気分にさせてくれるお肉はありません。まあ、ご覧あれ。

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まず、皿に置いたお肉のたたずまいまでブノワのとは違います。これは重要。料理人が、いかに自分の作ったそれを大事に思っているか、それが表れるからです。客のためのプレゼンテーションというよりも先に、まず自分の作品にシェフ自身がどれほど傾注しているかということなのです。
ブノワのはこれです。比べてみて。

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その差は味のみならず歴然でしょ。

さて、2008年最初のレヴューはグリニッヂヴィレッジに1カ月前に開店したばかりの「バー・ブラン」です。「白いバー」という意味で、フロアを除いて内装は白で統一されています。1カ月前といっても、ここを作ったのは「Bouley」のシェフだったセザール・ラミレスと、メートルディのディディエ、セクレタリーだったピエール、そして業務法律顧問だったキウォン・スタンドンの4人です。レストランがどういうものであるかを知り尽くしている彼らのことですから、1カ月にしてすでにインスタント・トップレストランです。訪問した11日は金曜日で、いやいや、店内はじつにウエストヴィレッジらしい喧噪(私たちはバースペースのテーブル席でしたのでなおさら)に満たされ、じつにニューヨークでした。

私たちは5人でテイスティングメニューを頼みました。ですので、メニューにあるのとはポーションもアレンジメントも少し違うと思いますが、印象は掴めると思います。冒頭に紹介したのは5コースの中での最後の肉料理でしたのでそれは再度、最後に詳述するとして、まずはアミューズが2つ供されました。

ちっちゃなブリオーシュ。中にちょっとだけブリーが挟まってて、さらにトリュフオイルの香りです。こんなにちっこくて、でも口にしたとたん顔の筋肉がへなっとなります。
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これはちょっと甘酸っぱいビーツのジェリーとたおやかなクレームフレーシュのアイスクリーム。フルール・ド・セルがジェリーの上に掛かっています。なかなか洒落た陶のスプーンを見つけてきましたね。
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そうして最初の前菜が2種類のマグロの刺身と、フォワグラの蒸したのです。
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向こうっ側の2つがマグロ。手前がフォワグラ。マグロはメニューにあります。
右上のがポン酢と黒トリュフのドレッシング仕立て。これはみんなちょっと塩っぱいと言ってましたが、わたしは気にならず。
左上のは黒タマネギとイカ墨と味噌のソースに、上にゴボウのフライとマイクログリーンが載ってますね。
フォワグラは、これまた蒸してまるでアン肝のように軽く上品に仕上がっています。それを定番の果物のソース(リンゴ?)の上に置いて、さらにフルール・ド・セルでカリカリ食感を加えています。木の芽が裏返しなのはご愛嬌です。これは、ほんと、鮟肝もこうやってポン酢の代わりにべつの甘くて酸っぱい林檎やブドウで食べさせても面白いかもしれないですね。

ほんでもって、次のこれも美味しかったの。
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中央のはすごい軽い羊のリコッタチーズの上にローストしたウサギの肉をいろいろ成型してスライスしたのを敷いて、そんで上に載っているのはリ・ド・ヴォーです。茶色いソースはジュですね。右上にはウサギのレヴァーペースト(といってもものすごく滑らかでクリームたっぷりの絶品)。手前と奥のマイクログリーンに隠れているのはちっちゃなクリミニマッシュルームを甘酸っぱく漬けたもので、これがまたファッティな皿のアクセントとしてなかなか頭の良い配置です。
んで、うまいんだ、このコンビネーション。ウサギの肉のやさしさ。子牛の胸腺の火の加減。セザールって、こんなに肉料理が上手かったっけ? これはメニューでは前菜のところにSlow Roasted Rabbit and Sweetbread Saladとして表記されています。
いやいや、困ったなあ、こういう素敵なレストランがあちこちにできると、金がいくらあっても足りなくなります。

次は何? そうそう、これ。ホタテ。纏っているのはフィロ・ドー(薄いパイシートみたいなのです)、で、奥にエスカルゴが2つ隠れています。
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いやいや、こう振り返るとやっぱり美味かったんだなあ。どんどん味を思い出してしまってまた食べたくなってくる。メニューにもPan Seared Jumbo Scallopというのがありますが、これはエスカルゴも入ってるしソースも違うかもしれません。このスープっぽいソースの緑はたしかタラゴンです。エスカルゴにタラゴンが合うところからの即興かもしれません。ホタテのジュースがベースでしょうか、全体をなんとなくシトラスの風味とともにまとめあげています。

そんでもって、写真ではなんだかわからんが、低温調理のサーモンです。
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サーモンはとろとろほろほろです。その上にプレザーヴド・トマトを掛けて、そこにハーブのパスタのシートを載っけて、そこにさらに白ワインの泡のソースを覆いかぶせてるんですね。
これね、じつはわたし、いちばん面白いと思った。このジャム状にしたトマトが何とも味が濃くて、オレンジの味まで含んでいる。サーモンのオレンジソースは定番ですが、このトマトがめちゃくちゃ濃くて美味しいのです。でも、残念ながら塩っぱすぎたの。量で調節して、もっと少量にすればよかったのかもしれませんが、そのアンバランスによってトマトの濃さに占領されちゃった感。ウーム、残念。

そんで料理コースの最後は冒頭のポークです。
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メニューではMilk Fed Porceletとあります。乳飲み子の豚の仔っこ。うー、かわいそ。心して食させていただきましょう。というかほんと、こういうのを不味くするなら調理人は罪人です。
中央のがそのロースの部分ですね。脂身の部分まで付いているのが日本人の私にはうれしい。左側に、さらにその脂身を越えてカリカリの皮がちょっと剥がれているのが見えるでしょ? うひひ。
で、右奥のはバラ肉部分の角切り。その上から橋のように渡されているのはクラッカーの上にその豚の頬肉とかで作ったテリーヌをちょぼちょぼと並べているわけですね。
バラ肉部分は調理法が違うのか、もっとワイルドな味がしますが、とにかくこのロース部分が美味しい。しかも下に敷いているのが芽キャベツの賽の目切りの、なんというの? ちょっと甘酸っぱい感じのもので、これも豚肉にぴったりなんだ。ソースは2種類。肉汁にシナモンとスターアニス(八角)のと、オレンジのです。これがまた押し付けがましくなく、さりげなく肉の味を両脇から支えるのです。

というわけで、腹一杯になって、デザート。
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オヴンから出したての熱々のアーモンドケーキと、洋梨とマスカルポーネのソルベ。
そんなに甘くなくて美味しい。まあデザートメニューは驚くというのではなく、手堅くという構成です。
デザートを凝るのはやはりグランメゾンですから。ここはほんと、スペースといい造作といい、ご近所のしゃれたレストランという位置づけ。デザートで客を惹き付ける必要はないでしょう。

でも驚いたのが食事が終わって厨房に謝意を伝えに訪れた時です。(中央の笑顔の眼鏡がセザールです。あら、彼、腕にタトゥー、すごいな)
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10人以上が働いてるのです。この規模でこのクックの多さは贅沢なもんです。素晴らしい。

さて、初回の訪問はじつに満足の行くものでした。
Allen & Delancey のときにも書きましたが、ニューヨークはいま、第2次なんだか第3次なんだか、レストラン業界に新しい波が生まれています。一流どころで修行したシェフたちが続々と自分の店をオープンさせて、それがいずれもなかなかよい仕事を見せています。Allen & D はいま現在、もう予約の取れない人気店です。

そこでこのバー・ブランの参入です。
この日の料理はいずれも実に洗練されたもので、ブーレイの尾っぽをまだ引きずっているようにも感じました。というか、ブーレイがセザールの料理だったのですが。
私が今回、サーモンのトマトに惹かれたように、今後はもう少し尖る部分もあっていいのではないか。何せここはヴィレッジです。顧客層も若い。大人の味と同時に、食べると思わずニヤけてしまうような遊び心のある皿を見せても面白いと思います。

本日のテイスティング・メニュは1人90ドル。
ワインは50ドル前後でじゅうぶんに美味しいものがそろっています。
私たちはサンセール($48)から急に贅沢して2003 Chateau de Puligny Montrachet Puligny Montrachet Folatieres($148)、2002 gevrey chambertin sarl maurice chapuis($105)といただきました。

January 02, 2008

ブノワ

2007-12-15
フレンチ
Benoit(ブノワ)
☆なし
東京都渋谷区神宮前5-51-8
ラ・ポルト青山 10階
03-5468-0881

泣く子も黙るアラン・デュカスの東京ビストロ。ミシュラン東京で☆1つ獲得したそうで、この日はランチで5500円のコースを食べました。が、まったくいただけませんでした。シェフが不在だったのでしょうか、どれもとんでもなくしょっぱいのと、味がだれているというかボケているというか、ひどいもんでした。周りは女性客で溢れていましたが、こんなものを食わされてこれがフレンチ(地中海風と銘打ってはいますが)だと思わされているならかわいそうです。まあ、サービスは悪くなかったですけどね。

5500円のコースはオードブルメニューから2品、前菜から1品、メインから1皿、それにデセールですが、値づけがまず高すぎます。青山の国連大学ビルの並びなんですけど、地価でしょうか。

私はオードブルから牛のタルタル(左)とズワイガニのアスピック仕立てを選んだんですが、だいたい、このズワイガニの容器が口の狭いつぼ型で食べづらいことこの上ない。なんか、ジャムを入れるガラス容器の使い回しみたいな感じで、なんでこんなもんに入れて出すんでしょうか。牛のタルタルもべつに何ですかって感じで、ワインはサンセールを頼んだんですが、これを食べてワインを飲むとちょっと味が変わって面白いのはたんにウスターソースのスパイスのせいでしょう。

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前菜なるものは地野菜のブイヨン煮を選びましたが、この野菜、まったく風味も食感も死んでしまっていて、ブイヨン煮というよりもブヨブヨ煮。そこらのスーパーで買った野菜だってうまく調理したらこれより美味いはずです。コンソメブイヨンも煮詰まった感じで香りがボケていて、なおかつとてつもなく塩っぱい。まいったね、こりゃ。

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とどめはこの鹿児島産黒豚のロティ。
エシャロットのコンフィとほうれん草が添えられていますがね、このソースはシャルキュティエ(豚肉加工職人風)と呼ばれるもんなんだけど、炒めたまねぎ、ピクルス、粒マスタードが入ったソースなのにそのいずれの風味も平坦に塗り込まれた泥壁みたいに一元的で、何なんでしょう、これは。そんで、やはり塩っぱい。

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それと、ロティというのはローストってことなんですが、この豚肉、バラ肉の部分なんだよね、それを長時間の低温調理でまず下処理してから焼いてるもんだから、ローストの食感がなくてまるでシチュウ肉のように柔らかくて気持ち悪いの。ローストってさ、頼む人は低温でじっくりオヴンで焼いたり、あるいは火にかざして焼き付けるものをイメージしてオーダーするんですよね。で、柔らかくても端がかりっとしてて、ナイフ入れるとまだ食感の残る肉から透明な肉汁がしみ出してくるのを期待してオーダーしてるわけです。口の中で噛むごとに肉の味を楽しむ、みたいな。でも、これ、肉の味もしない。前述のようにソースも単調。まあね、ローストビーフでもこういうのあるけど、ビーフの場合は中がピンクでいいから。でも豚だとね、ぜんぶ火を通すというオブセッションでこんなにぶにょぶにょに処理しちゃうのかもしれないね。でも、なんか違うでしょって思っちゃう。こういう肉が食べたいならシチュウを頼むもん。そうだなあ、ああ、スペアリブでこういうふうにむやみに柔らかく処理しちゃってるのがあるなあ。あれも苦手だなあ。なんか、先に茹でてるんじゃないの、だから味がもう逃げ出ちゃってるんじゃないのってな感じの。

全般的に言って、フランスに行くと何でも味が濃いのはわかりますが、でもそれはそれで味がしっかりと主張してるもんです。でもここのブノワ東京の味は、主張なんかしてない。怠慢な印象がする。

凡庸とはこういう味をいうのでしょう。ディナー・シェフは知りませんが、すくなくとも私の食したこの日のランチは(そうして連れの頼んだ別のメニュー、リゾットやヒラメのソテーなども)、わざわざ高い金を払って食べに出向くようなもんではござんせん。
デセールもまったく面白味のないものでした。
以上。

やくみや(移転・再訪)

2007-12-13
小料理・飲み屋
やくみや

東京都新宿区荒木町1-2
なかばやしビル2階
03-6318-3421

新宿ゴールデン街にあった「やくみや」が2007年11月末に四谷・荒木町に移転し、それでさっそく出向いてみました。地下鉄の四谷3丁目の駅から歩いてすぐです。新宿通から杉大門通りを入って100mほどの右手のビル2階。杉大門通りの入り口あたりからでも水色の四角い看板がひときわ目立つのですぐわかるでしょう。

ゴールデン街のあの雰囲気も良かったが、ここらへんもむかしの花街。路地に飲み屋が並んでていいところですね。今回の移転先はなんといってもゆったりした広さでくつろげます。いっぱいで、行っても入れないんじゃないかという行く前の心配も薄らぎました。そんでもって厨房設備の格段にアップしたこと。シェフの佐和さんもこれなら十分に実力を発揮できるでしょう。ソムリエの朝子さんは相変わらずなかなか妙味のある酒類の選択で、日本酒で「清吟」という、とても清潔でエグミのまったくないいい酒を教えてくれました。

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さて、小料理屋というか割烹というか、こういうところの料理はじつはいくらでも手抜きをしようとすればできてしまうところがある。ちまたにはそういう店があふれています。いわゆるネイバーフッドパブというのはご近所のよしみや手軽さ手頃さもあってそういう手抜き料理でも赦されてしまうんですね。まあ、家で飲むよりもつまみの数はそろっているし、酒の肴の得意な奥さんばかりでもないですからね。それに、家庭料理にちょっと毛の生えた程度の素人料理が出てくる気の置けなさってのも嫌いじゃないし。

でもね、このやくみやの料理を食べると、いつも、正しい料理だなあ、って感心するのです。ほんと、背筋がきちんと一本通っている料理。それにプラスして、調理技術の下地ということだけではなく、いつも、勉強してるんだなあ、考えてるなあ、と感じるのね。そうやって頭使ってるから、ちょいとひねってもひねりすぎることがない。ひょいひょいと宙返りはしても着地はきちんと定点で決まる、みたいな。だからね、おや、面白いなあと思っても安心していられるんですね。やっぱり料理も思索なのよ。

あいかわらず素晴らしい店でした。ということで、今回の帰国では2週間ばかりの東京滞在で計4回も出向いてしまいました(うち1回は定休日なのを知らずに訪れたんですけど)。

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塩水とともに煎った銀杏。きれいだね。

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正しい〆鯖。

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海老しんじょの春巻き。

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焼き野菜。シンプルだけどね、次に紹介の「ブノワ」の地野菜よりはるかに野菜の味がいい。そうね、この焼いた野菜をスープというかだしというか、そういうのに浸して食べさせても面白いかも。

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ブリ大根。色はしっかり、でも味はすんなりとやわらかです。