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帰米

18泊19日の日本でした。滞日中、今回もみなさんにいろいろとお世話になりました。
ありがとうございました。

もっとも、昼間はだいたい弟のいる千葉の病院に行っていたので、夜もあまり遠くには出歩かず、とくに新宿にはいちども足を運びませんでした。こんなことって初めてですが、新宿方面の皆様にはまことに失礼をいたしました。申し訳ありません。渋谷の友人宅に滞在していたのですが、病院にはバスに乗ることもあって往路も復路も2時間以上かかり、帰ってきたらもうなんとなく一日も終わって、さあ、近くでメシ食って、という感じになっておりました。

その渋谷、青山近隣地区ではいろいろとおいしいものを食わせていただきました。とくにどこに行ってもイベリコ豚イベリコ豚と、かの地では日本のグルメのせいでイベリコ豚が全滅するのではと心配されるほどの人気ぶり。アメリカでは食えない、ジュワッと甘い脂身を堪能してきました。

今回のお星さまレストランは、西麻布のエピセ(☆)でしょうか。
四川中華とワインをあわせて一品ずつデギュスタシオンのごとくサーヴするという趣向に酔いました。もともと四川は調味香辛料の宝庫。豆板醤と豆鼓とを使えばなにを作ってもうまいというのはじつは公然の秘密なのですが、1つ1つの皿がとても丁寧で、たとえば付け合わせの搾菜ひとつとってもきちんと日本ネギを刻んで辣油とともに和えてあるという具合で、それはそれは神経の行き届いた料理です。
また、食事の最後に厨房から出ていらしたシェフの、いまどきのシェフらしからぬ腰の低さと自信なさげなへなへな笑顔が、料理の鋭さと確実さとにじつに対照的でなんだかうれしくなってしまいました。

つぎは白金台の看板のないレストランでしょうか。ここはお星さまが付くか付かないかの、なかなかよい線をいっています。こちらではそのイベリコ豚のグリルなどを食いました。
いずれもシンプルな調理法で料理がすっとまっすぐに提示されます。イタリアンというか、日本料理の率直さもあいまって、シンプルとはいえここもとても丁寧な仕事ぶりです。なにより山田さんと前田さんというおふたりのサーヴィングスタッフがカジュアルながらしっかりした対応をしてくれます。その気持ちよさにのっかって、ここでは4人で4本のワイン(あれっ、5本だっけ?)を空けてしまいました。
当然のことですが、それで結構なお値段になってしまいました。(けっきょく、ここもわたしの友人が1人で支払ってくれたのですが)。

日本はワインが高いですね。
NYではワインは市価の2倍。原価の3倍でレストランで売られます。日本ではこの原価が高いんですね、きっと。NYでは80ドルのワインなんか、最高級レストランでもさて、頼むかなあ、という感じです。50ドルでけっこううまいワインが飲める。ところが日本ではおいしそうなものはのきなみ1万円近くですものね。

帰米前々夜には四谷の名店から分かれて南青山に昨年できたという若いお寿司屋さんにもその友人と参りました。大将は33?35歳?。お店のインテリアも落ち着いてよろしく、他に客の目に見えるところで働く2人の店員も20代できびきびとかつ初々しく好感が持てます。ネタもとてもよいものを仕入れていることが一目で分かります。
ただ、どうも肝腎のお寿司にメリハリがありません。この微妙な違いが、店を出てからの印象におおきな差異をもたらすのですね。つまり、店を出たとたんに忘れてしまうのです、なにを食べたか、その味を。

まず酢飯がどうもうまく仕上がっていないのです。米粒のまわりが柔らかく中心がしっかりしているという二層になった仕上がりで、わたしはどちらかというと米粒は周りも中心部もおなじしっかりさ、さっぱりさのものが好きです。あまり粘らずに口の中でさらりとほぐれるようなのが理想だと思っています。お米はなにを使っているのか、大将が即答できなかったのもいただけません。
つぎに、どうも酢の切れがなかった。魚もいろいろと〆てあるのですが、酢の力でうまさを際立たせるということにあまり成功していないようです。
おいししかったのはカレイと赤貝ですか。いずれもそのままで出されたものです。
あと、添えの甘酢の端噛みですが、酢になじむように叩いてあるのかしら、ちょっとふにゃふにゃとやわらかすぎで、しかも甘みが酸味や塩気に勝ってだらりとした感じで、どうも口直しの役に足りないのでした。そう、この店の寿司の味の全体の印象がこの感じなのです。どうもキレがない。難しいですね。
こういう若いお店はどんどん客が店を育ててあげるのがよいと思います。
ここはまだまだ☆無しです。1年くらいしたらまた行ってみようかしら。

別の友人の誘いで、日本橋のおそば屋さんで日本酒の利き酒会というものにも参加させてもらいました。
14種類もの今年の出品酒を味わいました。いやあ、おいしいお酒というものはあるんですね。舌の上で転がしてじんわりとうまい酒が数種類ありました。ワインの話をしましたが、日本じゃ日本酒を飲むのが正解です。もっとも、こういううまい日本酒がレストランですぐ手にできればですが。

なかでも感銘を受けたのが群馬県館林市の龍神酒造の「尾瀬の雪どけ」という大吟醸でした。これはもう、乳酸発酵のようなほのかな酸味がとても効果的に行き渡っている美酒でした。うまい。じんわりくくくっ、という味。雑味がまったく感じられない。ああ、思い出すだけで唾が出る。もいっかい飲みたいなあ。

こうやって書くとなんだか食って飲んでばかりの日本みたいですね。
さ、6月はみっちり仕事をしなければ。

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