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September 21, 2005

ご無沙汰

サーバーがダウンしていて、ずっと書き込みができませんでした。
その間にも日本の総選挙やらカトリーナの顛末やらいろいろなことがあったのですが、なんだか機を失してしまいました。

ただ、カトリーナの被害を見ていると、都市の衰亡の新しい形を見ているような気がするのです。アメリカはこれまで鉱山や鉄鋼や自動車産業の町のゴーストタウン化を経験してきました。が、中心気圧が904ヘクトパスカルというこの驚異的なハリケーンは、ニューオリンズの半数以上の被災者にもうこの街には戻りたくないと思わせているようなのです。たしかに復興ままならないうちに再び同じようなハリケーンが襲ってきたら(あるいは来年、再来年でも)この数字はもっと増えるでしょう。といっているうちに、リタが襲っているのですが。

カトリーナは沿岸部でさえ海水温が32度だったというメキシコ湾内の異常なエネルギーを吸収して発達したのでした。

カエルを水から茹でると(ってすごい実験ですが)気づかずにいつまでもじっとしているので最後には茹で上がって死んでしまうそうです。本当にそうなのか、なんとなく嘘っぽいのですが、ただし危険というのはそういうものかもしれない、という感じはします。

カトリーナがそのまま地球温暖化の兆候なのか私にはわかりません。ただ確実に地球環境はその方向で変わっていくはずです。産業構造の推移ではなく、自然環境の変化による町の放棄という事態の、これが米国での、目についた最初の例だったということにならなければよいのですが。
    *
ところで10年前に中西部一帯の大洪水を取材したことがあります。その際はいま批判の矢面に立っているFEMA(連邦緊急事態管理庁)が行く現場現場で活躍していて、州兵や民間ボランティアの活動をあまねく統率していて見事でした。

クリントン政権下での当時のFEMAは閣僚級の長官を擁した大きな組織でした。それを9・11以降のブッシュ政権が国土保安庁の傘下において権限を縮小し、大幅な予算カットと人員削減を行ったのです。

そこを攻めているヒラリーら野党民主党を見ていて、ふと日本の民主党のことが気になりました。沈滞気味とはいえアメリカの民主党は人権、福祉、外交、財政問題など共和党との違いがもっとわかりやすい。ところが日本の民主党は、惨敗した選挙前の話だけではなく43歳の前原某が代表になって、憲法9条の改正問題などなんだか言っていることがますます自民党に似てきた。

戦争なんて日本は絶対にやらないと思っていたのですが、最近はどうも違ってきたかもしれません。「いつまで北朝鮮に好きなこと言わせてるんだ」というイライラした層が確実に増えていて、そのあたりの無党派層が「変革攻撃型」の小泉さんや安倍さんを支持しています。すると先制攻撃型のミサイルを持てという世論まであと少しの距離なんじゃないかという疑心暗鬼まで生まれます。「戦争じゃない、自衛だ」という論もありますが、戦争はいつも自衛の論理で始まる。だから第9条があったはずなのです。
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われわれは愚かなカエルか、それとも心配症の炭坑のカナリアか。それがわかるときにはそれにはもう何の意味もないのですが。

September 06, 2005

尾辻さんの軌跡

テレ朝が6日、大阪府議、尾辻さんのカムアウトの軌跡を朝のワイドショー『スーパーモーニング』の一コマとして(はかなり丁寧に)取り上げています。
この下のリンクで飛んで見られますよ。
まずは見てください。

http://dp23055276.lolipop.jp/tv.htm(現在もうリンク切れ)

さて、そこで敢えて苦言を呈します。

1)「性的指向自体は疾病ではない」って、意味不明でしょう。テロップにもフリップにもして2回も強調しているのですが、「性的指向」というのは異性愛というのも含まれているんだからさ。はしなくも、どうも他人事です。自分は含まれていないってことですから。

2)「ドメスティックパートナーシップ制度」を、結婚との比較で「名前の違いで、法的にはまったく同じ」と物知り顔のコメンテーター(だれ? ディレクターかな=後にどっかの弁護士と判明しました。TVによく出ている人のようです)が話してますが、「ほぼ同じ」と言うべきでしょう。養子がとれるかどうか、や、外国での扱いなどがまったく違うのですからね。

3)アメリカではカリフォルニア州などがドメスティックパートナーシップ制度を認めている、とフリップで紹介していたけれど、マサチューセッツ州の同性婚制度があるのですから、それをそのフリップの上段、「同性婚を認めているところ」にオランダやベルギー、スペイン、カナダと並べて含めるべきでしたね。

つまり、これらのことは、誤報なのです。ふつうの新聞記事やテレビニュースなら訂正を出さなくてはならないところです。

とても丁寧に、バランスよく取り上げていたことは評価しますが間違いはいけません。「でも、せっかくとりあげてくれたんだし」という問題とはまったく関係ありません。これは「間違いは報道ではゆるされない」という鉄則を外した、というふうに考えるべきです。プロとはそういうものです。これなら、「はい、とてもよく調べましたね」と褒められて喜んでいる学生レベルのリポートであって、プロのやることではありません。

つまり、これほどまでに肝入りで取り組みながら、そこらすらもクリアできないという一般レベルでの知的惨状がはからずも浮き彫りにされているのですね。鳥越俊太郎さんが一言も発していないのは賢明と言わねばならないでしょう。知らないことはしゃべらない。こういう問題で知ったかぶりはできない。そういう判断だったのだろうと思います。

このビデオでいちばんよかったのは、尾辻さんのカムアウトに対して街の声でいちばん多かったのが「まあいいんじゃないですか」「べつにいいんじゃないですか」「ひと、好き嫌いはあるし」とかいうコメントだった、というところでした。それを「他人に対する無関心」としての「受容」ではないのかと示唆しているのです。

これだよ。ここだよね。
この部分こそ、コメンテーターが引き取ってなにかを言うべき勘所だったのに。鳥越さん、ここくらいはなんか言ってよ、って感じでした。だれも引き取らなかった。

でも、尾辻さん、相変わらずかわいかったな。かっこかわいいというのは、彼女のことをいうんだ。こんな彼女を、次の府議選挙がどう扱うのか、「まあいいんじゃないですか」は、票にはならないですからね。彼女を泣かしたくないとつよく思う。

September 03, 2005

カトリーナ

昨日あたりから人種問題が出てきました。
被災地の7割がアフリカ系住民だったことから、ブッシュは黒人のことなどかまっちゃいない、とか、ここが白人地域だったらトラックが到着するまで5日もかからなかったとか、なによりブッシュ自身が休暇をすぐに取りやめて現地入りしていただろうとか(9.11のときのあの8分間の空白を引き合いにして、今回は2日間もぼけーっとしていたとか)、そういう話。

面白い(と言っては不謹慎だが)写真が配信されているのです。

あの沢田教一の「自由への逃走」を想起させる、ニューオリンズの泥水の中を胸まで浸かりながらどこかへ行こうと必死な若い黒人男性のAP写真。両手にはどこかから調達してきた食べ物らしきもの。キャプション「強奪品を手に泥水の中を行く男性」。
まったく同じような構図で白人男女二人が泥水の中を食糧を手に移動するAFP写真。キャプション「どこかで見つけた食糧を手に避難する男女」。

メディアが「強奪」というふうに言うと、ニューオリンズのダウンタウンに残っている黒人層がみんな強奪者のならずものに見えてくるけれど、よくよく考えると食べるものも水もない状況で、近くのスーパーに行って、売ってもらおうにも誰も店員のいないところからとにかく飲食物を確保しようとしたらみんな強奪者になってしまうわね。まあ、あそこからテレビとか貴金属を奪おうとするやつらは強奪者というか火事場泥棒だろうが、水につかったテレビなど取ろうとするやつなどいまのところメディアでは見ないし、衣類だって必要だろ、そういうのをいっしょくたに強奪者扱いではあまりにも理不尽だわなあ。

10年前に中西部の大洪水を取材したことがあるけれど、あのときも堤防決壊。しかし水は今回のような「津波」状態ではなかったから住民は避難もできた。今度のはしかし、ひどすぎる。行政当局の、ひいてはブッシュの責任問題が出てくるはずです。

September 01, 2005

カトリーナと日本企業

そろそろこちらの企業のHPがお見舞いページ、寄付募集の呼びかけページに書き替わりはじめました。
9.11のときもそうでしたが、日本企業のこういうときの反応が鈍い。
インド洋津波のときも同じアジアのことなのにまだまだ遅くて欧米企業の後塵を拝したのです。
その都度言っているのですが(たしかここでも書いたか)、ソニー、トヨタ、日産、ホンダあたりの米国進出企業はいますぐにでもHPを書き換えるべきでしょう。
これは危機管理の一環です。

あ、いま見たら、トヨタとホンダはカトリーナへの見舞金を行ったことを今回は早くもHPで出してる。
そうそう、こういうのはタイミングですものね。