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北朝鮮をどうしてくれよう

 横田めぐみさんの死亡説を繰り返すだけの元夫とか「ミサイル発射は平壌宣言に違反しない」と会見でしゃーしゃーとうそぶく外交官とか、まったく北朝鮮の連中は自分の言っていることが世界にもまともに聞こえると信じてるのか。もういい加減にしろよ、てめえ、ってそう、気色ばみたくなるのも当然ですわね。

 ただふと気づいたんだけど、前段の金英男さんも会見で虚勢を張った宋日昊(ソン・イルホ)日朝交渉担当大使も、なんだか自分でもうんざりしてるような顔つきでした。国際社会から繰り返される突き上げ質問にうんざりなのか、それらに同じように答えなければならない自分の現状にうんざりなのかは分かりませんが、以前はもっと毅然として強面だったような印象があるんだけど……。

 そのうんざりさ、げんなりさを知っている拉致被害者の1人、地村保志さんが金英男さんについて「彼も被害者の1人だ」と言っていました。洗脳というよりは恐怖から、彼らはそういうふうにしか言えない。ま、宋大使ほどのエリートにもその斟酌が適当かは分からんけど。

 そこを承知でなおかつ斟酌すれば、本当に「世界からの被害」妄想を信じさせられている人たち以外は、北朝鮮では支配層ですら体制にがんじがらめで、どうしたらよいか分からなくなっているんだと思うわけで。改革を唱えるのも体制批判。粛清渦巻いたスターリン時代の旧ソ連と同じで、互いが互いの脅威を妄想してだれもが動けない。まさに恐怖政治の硬直した成れの果て。こういう時に動けるのは軍部だけなのは歴史が示しています。それが今回のミサイル発射でもあるのでしょう。(それにしても、ゴルバチョフってのは、情況の後押しがあったとはいえ、勇気があったよねえ)

 いまや麻薬や偽ドル、偽タバコまで作っているそんな国家に、はたしてどんな策が有効か。だいたいこのミサイルだって、ひょっとしたら販売促進キャンペーンの一環の商品デモかもしれないのであって。

 日本国内での経済制裁と国連安保理を通じた制裁決議提案も「いい加減にしろ」というメッセージです。それは伝わるでしょう。ただし、それであの国が折れるかどうかは五分五分ですよ。逆に言えば、制裁発動もあの国に対するこちら側の瀬戸際外交になります。チキンゲームに参加ってこと。そうしてついに、北のミサイル発射基地に予防的先制攻撃を行えないか、という意味の発言が額賀防衛庁長官から出ました。「先制攻撃」って単語は注意深く回避されていたけど、これはブッシュのサダム・フセインに体する攻撃の口実になったものとまったく同じもんですわ。その米国もおそらくすでに北の軍部を一気に機能不全に陥れ、反攻を最小限に食い止めるような軍事作戦の立案を行っているでしょう。

 ダダをこねればアメを与える、といった従来回路を断ち切り、次の一歩を進めたいってのが例の六カ国協議の狙いです。次の一歩を、というのは北も同じなんでしょう。ただしその一歩が、体制のがんじがらめでこれまでと同じような方法でしか出せない。病理的にはガチガチの硬直部を内部から解きほぐしてやるような東洋医学的な説得と懐柔が一番の打開策なんでしょうが、そんなのんきな時間もない。本当にどうすればよいのでしょうか。

 言えることは、西洋的処方であるもう一方の軍事行動はどうしたってオプションではないということです。有事となれば数百万という北の難民が韓国や中国、ロシアへと流出し、それは東アジア全体のより重大な危機に直結します。ことは38度線の問題ではなくなり、黙視するはずもない中国の軍事行動は容易に台湾問題へとも飛び火するでしょう。先制攻撃論をぶつというのは逆に日本も相手方の先制攻撃の対象になるということで、それは危険を回避するどころか更なる危機を呼び込むことにもなるのです。国内向けの政治的発言であるという読みもできますが、すぐに国際的にニュースになってしまうようないまの状況でそういう発言をすることがどういうことなのか、額賀発言は到底そこまで覚悟した上とは思えないんですけどね。アメリカでは早くも各方面から日本の憲法改正や軍事大国化を予想/懸念するコメントや新聞社説まで登場しています。懸念の背景には、アジアが火種になれば、世界経済は崩壊するって読みがあるんでしょう。日本が振り上げる拳は、そこまでの責任を負えるのか? 拳ってものは、振り上げたあとの後味の悪さに必ず後悔するものなのです。それは個々人の人生の中でも充分に学習してきたでしょう。

 カギはやはり国連安保理なんだと思います。日本の手腕の見せどころは軍事ではなく世界をまとめる外交努力以外にはないのです。とにかく中国を動かすことです。腹芸でも脅しでも使えるものはなんでも使って。中国に平壌説得の時間的猶予を与えたのはその意味では正しいでしょう。六者協議への無条件復帰、それを中国が説得する。説得したのに失敗して、でも安保理では拒否権行使だっていうのは論理的にもおかしいですから、中国も今回ばかりはのっぴきならない状況に押し込まれました。とにかくあくまで外交というか、政治なんです。

 日本が戦争をするようになったらそこらの国と同じでチキンゲームです。日本は戦争をしない。だから強いのです。そうでなければ、これまで66年も、何のための平和国家だったのか分からんでしょう。平和国家の、手練手管を、しかしさて、外務省という最低の官僚組織は持ってるのかしらねえ。

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