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いや、今度のヘドウィグは、よい!

ぼくは17のときにジーサス・クライスト・スーパースターをNYのブロードウェイで見て人生観を変えたってえ世代なんですよね、ぶっちゃけ。いや、それ以前にもいろいろほかにもファクターを得てはいました。ウッドストックもそうだし、コルトレーンはいたし、ジャニスもジミヘンも生きてたし。で、プロってもんの恐ろしさをそのときから知った、というか崇拝した。

で、です。そのときからプロじゃないものは見たくないと、いろんなものを見るたびにその思いが重なった。そんで、劇団四季のジーザス・クライストを見たときに、ものすごく怒ったわけですわ。ロンドン、ニューヨークでやったジーザス・クライストで世界中の劇団がこれを自分たちでもやりたいと思った。ところがどうだ、劇団四季のジーザス・クライストを見たら、世界中の劇団が、これはもう、どこでもやらなくてもよいと思うのではないか。

以来、基準にしたことがある。
自分の歌よりうまくないミュージカルは、見るべきではない。

わたし、じつはロック少年で、高校・大学までロックのバンドをやっていました。ドラムでしたがね。高音が出たんでバックコーラスというか、リード・ヴォーカルのラインから外れる部分をオレが歌う、みたいなこともやってたの。で、いまも、はは、ものすごく歌、うまいのよん。ハイウェイスター、歌えるんだぜ、へへ、みたいな。

また今回も前置き長いな。
本題に入ります。
もう昨日ですが、ヘドウィグのゲネプロ(舞台総練習)、見てきました。ええ、わたし昨日まで札幌でぎっくり腰で1週間寝てて、そんできょうやっと東京に着いたわけです。そんで最初のオーダーが、このゲネプロだったのです.

感想。
これは楽しみだ!

それじゃわからんな。まあつまりあのね、これは三上ヘドとはぜんぜん違います。三上のときは三上ですごかったけど、あれはいい意味でもそうでなくても三上のショウだった。彼の圧倒的なパワー。でも今度の山本ヘドは、山本だけのヘドではなく、中村中の絡むヘドであり、鈴かつさんのヘドであり、ジョン・キャメロン・ミッチェルの悲しみを背負ったヘドだったということだった。おまけにそれは日本のヘドだった。

しみじみするのはきっとセリフのせいでしょう(ちょっと自画自賛。えへへ)。
1つ1つのセリフがまるで詩のように響く。どうしてヘドウィグが書かれなければならなかったのか、それがわかる。ジョン・キャメロン・ミッチェルがなにを言いたかったのか、それが響いてくる。つまり、このヘドウィグは、悲しいの。これはショーじゃない。演劇なんだ。三上バージョンのように、ヘドウィグはオカマ笑いを笑いながら喋ったりはしない。酔っぱらって訥々と自分を語りだす。

で、なにはさておき、山本君、歌、うめえじゃないの、こいつ、って思いました。
中村中ちゃんはもちろん歌、うまいです。で、この2人の声のアンサンブルが、声質の差とその重なり具合がすごく気持ちいいんだなあ。そんでもって中村君のイツァークの出番、すごく工夫されていて、鈴木さん、これは考えたんですねー。ジョン・キャメロンがいまもう一度ヘドウィグをつくったら、やっぱりイツァークをこうするだろうって思った。いや、もっと正確に言うと、ジョン・キャメロンの気づかないイツァークを、鈴木さんはジョン・キャメロン本人に代わってジョン・キャメロン本人に気づかせてあげた、みたいな。こういうの、演出家やってて醍醐味だろうなあ。力量です。昨晩、初めてお会いしたけど、プロの顔をしてた。

でね、ヘドウィグの山本耕史、化粧その他、女装部分、すごいですわ。なんでこんな? って感じ。でも、言わせてください。ネタバレですけど。これが最後の転換ではじける。彼、すごく綺麗なの。
神々しいのでです。
うわ、芸能人って、こんなに綺麗なんだ、って、思ったです。
しかしなんであんな躯してるんだろ。ってか、あの肌。
思わず手を伸ばして、あ、すんません、ちょっと触っていいですか、ってお願いしたくなっちゃう。
それがわかるステージになってる。あの綺麗さにはひれ伏します。

でね、わたし、ゲネプロ見て、不覚にも左の目から涙が一粒こぼれました。
もう最後に近く、

(トミーの歌:)「LOOK WHAT YOU DONE. YOU MADE ME WHOLE. BEFORE I MET YOU, I WAS THE SONG. BUT NOW I'M THE VIDEO.(きみがしてくれたこと。ぼくを完全にしてくれた。きみ会う前、ぼくは歌でしかなかった。それがいまはビデオだ」

(ヘドウィッグの歌:)「LOOK WHAT I'VE DONE. I MADE YOU WHOLE. YOU KNOW THAT TOU WERE JUST A HAM. THEN CAME ME, THE DOLE PINEAPPLE RINGS...(あたしがやってあげたこと。あなたを完全にしてやった。ただのハムだったあなたのもとに、あたしが来たの、ドールのパイン缶の穴開きパインが)」

*****
ね、すごいでしょ。

悲しいヘドウィグを、ぜひ見てください。この劇が何を言おうとしていたのかを、山本君のことばで聞いてみてください。これは、おそらく、回を重ねるごとによくなってくるはずです。本日のこけら落とし、観客の入った中で山本、中村の2人が、どう化けるか、ものすごく楽しみです。この劇、翻訳してよかった、って昨晩、舞台を見ながら思いました。わたしの日本語がプロによってこなされ、配置され、語られるさまを見て、ゾクゾクしたもんね。はは。これは4月の新宿コマも見たくなってきた。そんときもまた日本に帰ってこようかしら。

****

で、ここで業務連絡。
あした金曜日の新宿FACEのチケットが何枚か別枠で出るそうです。
新宿FACE、ほんとは完売だったんですけど、十数枚かしら、会場の中央部分の席があるって。

わたしのこのブログで告知です。
早い者勝ち。
販売のサンライズ・プロモーション東京
0570-00-3337
ここに電話したら、買えるって。
16日のヘドウィグ、あるんですか? って電話で言ってみてください。

では、

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