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副大統領はだれだ!

どの州をだれが取ったとかはもう関係ない。どこの郡でだれがどれだけの代議員を獲得したかの、すごいミクロの戦い。で、得票数を合わせてみると、22州の得票総数ではヒラリーとオバマが本当にほとんど並ぶという前代未聞の激戦なんです。予想されていたとはいえ、攻めるオバマ、守るヒラリー、ゴジラ対キングギドラよりすごい。スーパーチューズデーは両者は互いに1歩も譲らず、やっぱり勝負は来月のオハイオ、テキサスあたりまでまた持ち越しです。

対して共和党は中道穏健派のマケインの勝利が近づきました。しかし驚いたのはやはりハッカビーの健闘です。キリスト教福音派、草の根保守層の存在感がまさに浮き彫りになった印象。この票田はもう1人の保守派ミット・ロムニーと分け合ってるんですが、ロムニーとしてはハッカビーさえ出てきてなければ(保守層の票を1本化できて)自分が波に乗れていたのにと思ってるはず。しかしほんと、この2人に分かれなければ、共和党保守派はマケインをとうに退けていたはずです。

さて、CNNなんぞはもう11月の本選挙をにらんで副大統領候補の話までしていました。その共和党の伝統的な支持基盤である保守層に嫌われるマケインは、いったいだれを副に据える心づもりか。

先週、序盤戦の失敗でジュリアーニが降りたときに、「自分は政治理念の同じマケインを支持する」と表明してその彼とハグし合ってましたね。それを見ながら、ふむ、マケインはひょっとしたらこのジュリアーニを副大統領候補として指名することもありかなと思った次第。

この2人が中道穏健派というのは、同性愛者たちの権利獲得や妊娠中絶に寛容だということからです。ジュリアーニはニューヨーク市長としてゲイ・プライドマーチには先頭切って歩いていましたし、マケインはブッシュが憲法修正で連邦レベルで同性婚を禁止しようとしたときに、共和党上院議員なのにそれに反対票を投じた。

このマケイン=ジュリアーニ・チケットは、大統領選で常にカギを握る、総投票者の30〜40%を占める中道浮動層をごっそり持ってゆく可能性がある。ヒラリーもオバマも急進的リベラルすぎると敬遠する中道層はすくなくないのです。そんな彼ら/彼女らは、マケイン=ジュリアーニのほうにずっと魅力を感じるのではないか。

しかし先週あたりからのハリウッドの動きは面白かったです。歌手や俳優たちがこぞってオバマ支持を表明し始めた。

このビデオもあちこちの友人からメールで回ってきました。すごいねえ、このアイディアと、もちろん、それを歌ってしまう才能。

ただ、これを見ながら、政治は芸能活動じゃないとゴアやケリーのときに苦虫をかみつぶしていた保守層の反発のことを思い出していました。ゴアのときも、ケリーのときも、こぞってハリウッドのスターたちが支持を表明して、それがキリスト教右派のやる気に油を注ぐ結果となった。アメリカはまだまだ実直な田舎の生活者の国。派手さを毛嫌いする層は確実に多数派なのです。そういうところからも、共和党は民主党よりも底力を持っていると見ていたほうがよい。

マケイン=ジュリアーニという、民主党の右派と支持層の矛盾しないチケットが出されたら、さて民主党はどうするのでしょう。こちらもヒラリーとオバマとが手を握り、夢の正副大統領チケットとなることはあり得るのでしょうか。

スーパーチューズデー直前のロサンゼルスでの2人の討論会では、さすが政治家同士、それまで修復不能なほどケチョンケチョンに言い合ってきたとは思えないほどの笑顔でした。ではこの2人のチケットはあり得るかというと、うーむ、ヒラリーが正の場合はあるかもしれませんが、彼女がオバマの副大統領候補に甘んじるかなあ。

ではそうなるとまた民主党の勝ちはないのか? また共和党政権なのか?

あります。民主党チケットが勝つための秘策は、ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグを担ぎ出すことです。実務型の、堅実でまじめな副大統領候補。ヒラリー=ブルームバーグあるいはオバマ=ブルームバーグのチケットです。これは魅力的だ。マケイン=ジュリアーニに対抗するにはこれしかない。

しかし、ここには1つ落とし穴もあります。ブルームバーグは共和党を抜けていまは独立系の政治家。ですのでマケインがジュリアーニではなく、同じようにブルームバーグにアプローチしてくるかもしれないということです。これもあり得ない話ではありません。そうなると民主党が勝つ道はきっとなくなる。

しかしちょっと待ってほしい。それだとブッシュを2回も勝たせた3千万人キリスト教右派が取り残されることになります。中道と左派の戦いで、あと3分の1を占めるこの国の右派保守層の出番がない。

そう、共和党が本当に勝ちに出るなら、マケイン=ジュリアーニ/ブルームバーグではない。
その右派層をごっそりマケインに引き止めるには、マケインはバプティスト牧師のハッカビーを副大統領に指名することもあり得ます。
ただし、それではあまりにも政権に整合性がなさすぎ。ブッシュ父のときのクエイルみたいなバカだったらお飾りでよいでしょうが、ハッカビーはそうでもなさそうですしね。

ところでさっきハッカビーがCNNに出ていて、ラッシュリンボーやアン・クルターといった頭のおかしい右翼たちが「マケインが候補になるくらいならヒラリーに投票する」なんて言ってるのを「そういうことを言うのは本物の保守主義者ではない」と牽制してましてね、「私は同じ共和党としてマケインに投票する」と明言した。

じつはこうやって、現役の候補が、まだ自分が降りてもいないのに仮定の話としてもこうして他候補に「投票する」と言うのは珍しいことなんですね。これはこの時期、「おや、副大統領への布石かね?」とも勘ぐられる発言で……。

うーん、ポスト・ブッシュはもっと単純に民主党政権だと思っていた数年前が懐かしい。新たに副大統領候補という要素がカギになって、読みがじつに面倒になってきたわ。


ところでスーパーチューズデイに霞んでますが、南部、ものすごい竜巻が数十個も襲って現時点で45人も死んでいます。家からなにから根こそぎ持ってかれてます。
選挙のことは今日中にもこの竜巻のニュースに変わっていくでしょう。

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