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オバマ大勝利の影の大接戦

大接戦と言われていた割には選挙人獲得数で大差がついた「オバマ大勝利」に見えますが、得票数ではともに5000万票台でその差はたった数百万票でした。勝利演説でオバマは「私たちは赤い州、青い州の集合体ではなく、ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカなのだ」といういつもの決め台詞を入れて、彼の中でも3本の指に入る名演説をぶちましたが、アメリカが二分化しているのは確かなのです。

それでもオバマが当選したのは、1つはロムニーという候補の今ひとつ他人を魅了しない人格に助けられた点は否めません。例の「愛犬天井括り付け長時間ドライブ」「高校時代のゲイ同級生いじめ」「47%切り捨て発言」。もちろん彼がモルモン教徒であることも影響したでしょう。

「ロムニー追い上げ」「接戦」と言われてきても、それはいつも一時的な盛り上がりで終わって最終的にはハリケーン・サンディでのオバマの「大統領ぶり」でロムニー熱もまた下がったところでの投票となった。その帰結がこのオバマ再選だったのでした。

しかしこれがもしもっと人好きのする候補だったなら、そしてサンディ被災のニュージャージー州の共和党知事クリスティのオバマ賛辞がなかったなら、オバマの再選はもっと難しかっただろうと思います。ロムニーの5千数百万票は、オバマのアメリカを社会主義、反聖書主義として忌み嫌う層が確実に存在しているということを改めて思い知らせます。そして、これは言わない約束ですが、黒人が大統領をやっているということがどうにも我慢ならない層もかなりいるということも。

Foxニュースの右派コメンテイターのビル・オライリーは「もう白人のアメリカは終わった」「物を欲しがる人間が多くなった(からバラマキ社会主義のオバマが当選した)」と本音を漏らしていました。

ただし、そんなせめぎ合いの中で米国社会はオバマの掛け声であった「Forward(前へ)」へ確実に進んだのも確かです。「正当なレイプなら妊娠しない」とか「レイプで授かった子も神の思し召し」と発言した共和党の上院議員候補は2人とも落選しました。代わりに史上初のレズビアン上院議員やアジア系(日系)上院議員、身障者の下院議員が誕生しました。さらに米国史上初めて住民投票によって、メイン州やメリーランド州などの同性婚が合法化される運びになりました。これまで33回も住民投票で否決されてきた同性婚提案なのです。

「多様性を認める社会、それがアメリカの強さなのだ」とオバマが訴えたとおり、時代は確実に前へ進んでいます。次の4年で現在3人いる75歳以上の連邦最高裁判事も、オバマの選ぶリベラル派の判事に交代するでしょう。これも大きな変化になります。

もっとも、不安材料も多々あります。まずは「財政の壁」が12月末に訪れることです。下院が共和党、上院は民主党とねじれ現象が続くことになり、議会との付き合い方も難しいままです。

ただ、ブッシュ政権の後片付けに追われた1期目と異なり、次にはもう選挙の心配のないオバマは、2期目は強気の政権運営をしてでしょう。とりあえず景気浮揚、雇用回復が急務です。勝利宣言のオバマの笑顔は、困難を知る人の節度ある笑顔でした。

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