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ブルームバーグ再び?

アイオワ、ニューハンプシャーと今秋の大統領選挙に向けた“実戦”が始まるという今になって、クリントンがサンダーズに初戦2つを落とす可能性が出てきたり、トランプが相変わらず首位ながら実際に集会や投票に足を運ぶ人数がおぼつかなかったりと、民主・共和両党とも不確定要素が増しています。そこにNY市長だったマイク・ブルームバーグが出馬を検討というのですからこれは前代未聞の大統領選間違いなしの状況です。

NY市民なら知っての通り、ブルームバーグはもともとは民主党でしたが2001年の市長選は共和党から立候補しました。ところが実際は実業家らしく党派関係なしで行政実務を精力的に推進し、NYを9.11の痛手から復興させました。ハイライン建設、シティバイク導入、街路を通行止めにしての公園化など健康、交通、観光行政の改善が彼の主な業績です。かくして市長三遷禁止規定を撤廃して異例の三期12年の長期市政。ビジネス重視や独断専行の批判もありましたが、悪い印象を持つ人はそう多くありませんでした。

ではブルームバーグは出馬するのか? 出馬となれば「独立系」候補ですが、彼は負け戦に出るほど愚かではありません。最も勝算のある状況は、共和党候補がトランプになり、民主党候補がサンダーズになった場合です。いずれにしても彼はトランプに忸怩たる思いを抱く共和党の穏健保守層の票をごっそりと持っていくはずです。

民主党票はどうか? 本命クリントンには今もアメリカ男性社会独特の女性嫌悪が鎌首をもたげる怖れが付きまといます。その場合、銃規制や妊娠中絶や同性婚にも賛成のブルームバーグは大いに「次の選択肢」になり得る。しかもクリントンがサンダーズに引っ張られて左派的主張を強めれば、中道民主党員や中間浮動層がブルームバーグに傾くはず。

問題は2つあります。1つは彼が米国トップクラスの大富豪であることから、反ウォール街運動のリベラルな若者票を奪えないということ。もう1つはNYでの知名度と人気が全米規模では未知数なことです。

どれだけ富豪かというと、総資産が370億ドル(4兆円)。あのドナルド・トランプのなんと10倍近くもある。しかもその資産を10億ドルほど使えば、全米規模で選挙キャンペーンを行い、短期集中的にCMを打って実績を全国に売ることも可能です。

しかし独立系として立候補するにしても3月初めまでに選挙戦を立ち上げないと50州全部での候補者登録に間に合いません。いずれにしても時間がない。

前述したように、彼にとっての最適なシナリオはアイオワ、ニューハンプシャーで共和党はトランプが勝ち、民主党はサンダーズが勝つことです。そこで両党の本流支持層が慌て出す。

なぜならトランプのような極端に物事を単純化するポピュリストや、サンダーズのような社会主義者が(民主社会主義者だとしても)アメリカ大統領になれるとは誰も思っていないからです。その間隙をついて、つまり2月半ばにブルームバーグが登場すれば、潮目は一気に変わる可能性があるからです。そこで問題はクリントンです。クリントンが十分に強い候補であるとなればブルームバーグは出ないでしょう。そこの見極めです。

さあ、初戦アイオワが目と鼻の先です。いずれにしても前代未聞の大統領選であることは間違いありません。なぜならポピュリストも社会主義者も独立系候補も女性も(そしてユダヤ系も)、誰も一度もアメリカの大統領になったことがないのですから。

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