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November 13, 2009

宣伝──ヘドウィグ再降臨

考えてみたら、わたし、自分の本とか講演とかあんまりほとんど宣伝したことがないんだけど、山本耕史のヘドウィグはかなりプッシュしました。

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まあ、ミュージカル(といってよいのかどうか、これはけっこう演劇とロックコンサートのコラボみたいなステージ)の翻訳はこの作品が最初だったせいもありますが、山本耕史のヘドウィグをやったのは、山本耕史という役者のすごさを知ったという点でもよかったです。この人の仕事ぶりのすごさは、テレビではなかなかわからんと思う。そこら辺のいい加減な兄ちゃんかと思ってたら大間違い。プロというのはすごいと彼と会って思ったもん。

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というわけで、山本ヘドの再々演が今月末から始まります。
お勧めします。
今までヘドを見逃してきたなら、これを見逃すでありません。
今回は短期決戦。
なんか、衣裳とか、変えるとかって言ってるだけどどうなるんだろ。
じつは私もなにも聞いてない。
それに伴ってすこし演技も変わるのかしら? ちょっとたのしみ。

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相手役のソムン・タクは、ジャニス・ジョプリンとグレース・スリックを足して2を掛けたような歌い方をします。たとえが古いといわれますが、現代の歌手でそいつらに匹敵するようなわかりやすい例は、あるんだろうか?

わたし、これを宣伝しても一銭にもなりませんが、お勧めします。

見なさい。見て、震えなされ。


詳細は以下にあります。

http://www.lovehed.jp

初めての方はぜひここでストーリーや歌詞の訳をおさらいしてから行った方がわかると思います。歌は字幕なしの英語で歌うの。


大阪はたった1回だけの公演。
前回、キャンセルになったからね。
11月27日(金)午後7時から、渾身の大阪厚生年金会館芸術ホール。

東京は12月2日(水) ~12月6日(日) ゼップ東京(お台場)
こちらは昼と夜の公演がいろいろ。

http://www.lovehed.jp/UserEvent/Detail/1

よろしく。


February 05, 2009

アルターボーイズ

このところすっかりブログを更新せずになってました。
なんというか、多忙というほどでもないんだけれど、わたわたと気ぜわしいというか、気乗りがしないというか、だいたい、これとは別の「脂肪肝」ブログもなんだかねえ、どこのレストランに行っても、なんだかみんな同じだなあって感じが付いて回ってすっかりやる気がそげている状態です。

で、じつはいま東京にいます。
オフブロードウェイの人気ポップミュージカル「アルターボーイズ」というのをわたしが翻訳し、歌詞も当てはめ、すべてを日本語の台本にして、この10日から新宿FACEというところで公演するのです。18公演あります。おかげさまでチケットはだいたいはけてしまいました。

そんでこないだからその稽古場がよいをしているのです。
というのも、全12曲ある歌の歌詞がうまくメロディーにはまっているか、セリフが噛み合っているか、いいづらくはないか、これらはやはり現場で動いている俳優たちを見ながらでないと修正できないので、それをやっているのですね。

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登場人物は5人。カソリックの教会の、神の愛を伝えるボーイバンドが日本にもやってきて、コンサート会場のファンたちの迷える魂を浄化する、という設定です。この5人がそのボーイバンドのメンバーというわけです。

不勉強にしてわたし、この5人の俳優というかダンサーというか歌手というか、知っていたのは田中ロウマくんだけでした。リーダー役のマシューには東山義久くん、マーク役に中河内雅貴くん、ルーク役に田中ロウマくん、フアン(Juan)役に植木豪くん、そしてなぜかユダヤ人のアブラハム役に良知真次くんです。

で、こんなに大量のセリフと歌と踊りがあるのに、この5人の日本の若者たちは通常の演劇の準備期間と同じ1カ月の稽古(主催のニッポン放送がタカをくくってたんでしょう)で本番に臨むという、過酷な試練に現在へろへろながらも意気軒昂です。しかしすごい子たちなんだ、これが。

一昨日、初の通し稽古2回。
2回目は衣装やマイクなどを着けての本番さながらのもの。
2回は体力的にだって相当きつい。
なのにそれからセリフと歌と仕草とダンスのダメ出しで夜は10時にもなる。

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2回目の通しで、アブちゃん役の良知真次くんは最後に涙を流しながらセリフを言い、そのセリフを書いた私を泣かせました。うーん、物書き冥利に尽きる。
良知くんっていったい何者? と思ってグーグルしたら、いろいろホームページとかあるんですね。でも、この子は写真に写っている姿形より実物が100倍いい。オンラインにある写真の彼とはぜんぜん違う。その実物のよさをアピールできたら、彼は今後どんどん人気が出て来るんじゃないだろうかって思います。

マーク役の中河内くんはこれまたじつに面白い役者です。ちょいと訳ありな役どころなんですが、きちんと自分の個性の上にその役を載せようとしている。いまどきの男の子の、その「いまどき」な感じが、ステレオタイプに陥っているNY版のマークよりずっといい。キャラが立ってるっていうのですかね。なにより歌も踊りもすごく頑張っているのが、「いまどき」感とのギャップになってじつに興味深いのです。

フアン役の植木豪くんは、見事としか言いようのない体の動きでステージを支えています。演技はもちろんうまいし。5人の中でいちばん年上だというんですが、ときどき10代の男の子に見えたりする不思議な淡さがあるんですね。きっと性格がいいんだろうな。目が合うとニコッとして、おじさんはそういうのにも感動しています。しかし、あんなすごいダンスで、ケガしないかとわたしは気が気じゃありません。本人はいたって平常心なんですが。

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田中ロウマくんは「レント」に続いての(ほぼ休みなしでの)ミュージカルで、さすがな歌を披露してくれます。というか、ソロの部分はもちろん、バックコーラスが彼の存在によって堅固になっている。ありがたいことです。「レント」の時にも指摘したんだけれど、セリフ回しに彼の素の部分が入ってきて、それはアマチュアリスティックな要素ではあるんだけど、彼の場合はなにかそれがとてもいいんだね。これも植木くんと同じく彼自身の性格の素直さなんだと思う。

東山義久くんはこのボーイズバンドのリーダー役です。じっさい、稽古でもみんなにリーダーと呼ばれていて、現実に歌よし踊りよしのオールマイティなプレイヤー。グループのみんなに代わって演出や制作にいろいろ逆提案したりして、それもこれも彼のこれまでの経験がきちんと血肉となっているからなんでしょう。植木くんとはまたひとあじ違うとてもキレの良い踊りと、このミュージカルで最もセリフが多く最も重要な舞台回しを、しっかりとこなしています。プロだねえ。NY版のマシューより色気もあって、彼が日本版のアルターボーイズ全体の日本らしさを支えています。

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この5人、そしてなにより仲が良い。東山くんはみんなへのダメ出し役も買って出ているが、ほかの4人はそれを真剣に聞いているし、そうじゃないときはみんなでじゃれ合ってて、稽古場の雰囲気がすごくいいですね。

さあ、昨日からはバンドが入っての実際の音合わせに移りました。
こまかい遊びやおかずがこれから付け加えられていく。
本番まで、もうあまり時間がなくて、5人の疲労もピークだろうけど、これはなかなかいいステージになりそうです。


April 12, 2007

合掌 カート・ヴォネガット

ヴォネガットが亡くなった。84歳。
数週間前に転んで頭をケガしたらしい。痛ましいなあ。
でもなんだか、ヴォネガット的でもある。

若かったころ、何度となく彼の語る暗く乾いたユーモアに救われた。
ほんとうに辛く悲しいことは、こうやって笑いをともなって考えるものなのだ。

こないだから、じつは彼の書いていた言葉を思い出していた。
たしか「ジェイルバード」の中の逸話。
彼が講演会だかブックサイニングだかに出席したときの話だ。
たぶん十代初めの少年が彼の本を持ちながら彼に近づいてきて、こう言った。
「ヴォネガットさん、そうやってたくさん本を書いてきてあなたが言いたいことは、とどのつまり、愛は負けるが親切は勝つということですよね」

愛は負けるが親切は勝つ。
名言。
私は以来それをモットーにしてやってきた。

これはきっと彼が1965年に書いた「God Bless You, Mr. Rosewater」(ローズウォーターさんに、神のご加護を)の中で言っていたことを再掲したんだと思う。

「やあ、赤ちゃんたち、ようこそ地球へ。ここは夏は暑くて冬は寒いよ。ここは丸いし湿ってるし込み合ってもいる。それから、赤ちゃんたちよ、きみたちがここで手にするのはせいぜい100年ってなもんだ。わたしの知る限りそしてここでのルールはたった1つしかない、赤ちゃんたち──『てやんでえ、てめえら、やさしくなくちゃだめだぜ』」

でも、いまの前の恋人には、その親切も裏切られた。
愛は負け、親切も負けて、おれは空っぽになって、おれを負けさせてどうするんだって思った。

でも、いま、やっと、あれは例外だって思えるようになりつつある。
親切が負けたのは、あれはたまたま、人生で唯一の例外だったんだ。

それでまた、愛は負けるが親切は勝つ、と、頭の中で念仏みたいにこのフレーズが繰り返されていたここ50日ほど。

ヴォネガットの百万の嘘の中に真実がある。
若い人たち、いまひとたび、彼を読みなさい。
どの文庫も恐ろしく可笑しい警句に満ちている。
人生の神髄は、彼のアフォリズムの総体でしかない。
てやんでえ、てめえら、やさしくなくちゃだめなんだ

NY Times の訃報の最後は、ヴォネガットの2005年の最後のエッセイ集「A Man Without a Country」にある詩の一節で終わっている。

When the last living thing
最後の生き物が
has died on account of us,
わたしたちのせいで死んでしまったとき
how poetical it would be
思えばなんと詩的だろうか
if Earth could say,
仮に地球がこう言えるとしたら
in a voice floating up
湧きあがる声で
perhaps
そうたぶん
from the floor
あの
of the Grand Canyon,
グランドキャニオンの谷底から立ちのぼる声で
“It is done.”
「さあ、終わった」
People did not like it here.
人間はここが’好きじゃなかったんだ。

──合掌。
God Bless You, Mr. Vonnegut.
And thank you very much, Mr. Vonnegut.

December 25, 2006

12月の俳句

このところ、CSI というこちらの犯罪ドラマにはまってまして、Crime Scene Investigation というもともとはCBSの番組なんですが、ラスヴェガスを舞台にした科学捜査班の物語、これが面白いんだなあ。で、数週間前からじつは午後6時から10時まで、Spike TVという別チャンネルでこの再放送を毎日やってるのに気づいて、それを見だしたら、毎日この時間帯、4時間も、テレビを見るだけで他になにもできない状態。

本日はクリスマスイヴ。うちで少人数で鍋でもしようということで、これから食材の買い出しに行ってきます。

**

セーターのほつれ止まらぬ夜の望郷
(せーたーのほつれとまらぬよのぼうきょう)

蓋のなか闇ふつふつと蕪煮ゆ
(ふたのなかやみふつふつとかぶらにゆ)

日めくりの明日はや透けて今朝の冬
(ひめくりのあすはやすけてけさのふゆ)

赤値札この冬牡蠣の堅き口
(あかねふだこのふゆがきのかたきくち)

数多なる可能剥ぎ終え暦果つ
(あまたなるかのうはぎおえこよみはつ)

乳見せて眠る雌猫レノンの忌
(ちちみせてねむるめすねこれのんのき)

わが嘘の語尾弱まりてマリア像
(わがうそのごびよわまりてまりあぞう)

売れ残る聖樹寄り添ひ街眠る
(うれのこるせいじゅよりそいまちねむる)

赦すことなほできぬまま聖夜かな
(ゆるすことなおできぬまませいやかな)

May 31, 2006

うちの義経

ちょっと触れてもいましたが、13年間連れ添った我が家の猫の義経くんの、右腕の上腕部に腺癌による腫れが見つかりました。で、これはおそらく、肺に出来た腺癌からの転移であろうという可能性が最も高いようです。

その場合、余命4カ月足らず、だそう。

でね、両方とも切除してしまうのがよいと、NYで最も大きな動物病院であるアニマル・メディカル・センターの担当医に告げられました。

重要なのは、とにかくなるべく最後まで楽に生きていられることですわね。手術しないと腕はどんどん腫れ上がり痛くなり、肺からがんがリンパ腺や他の部位に転移したり、肺自体も呼吸困難になって食欲も落ちるだろうとのこと。そりゃかわいそうだ。でも最期はどっちの道でも同じなんでしょうけど、そこにいたるまでを楽に過ごさせてやりたいわけで。

で、手術からは2〜4週間で回復する見込み(合併症とかが起きなければ)。で、残る3カ月近くがそれで楽になるなら、と思うのです。3カ月というのもわからんのだけどね。肺がんになった猫は、平均で約115日しか生きられないんだそうです。なんかすごく具体的ですよね、数字が。

でも一方で、手術して、そんで予後が悪くて、というか手術が負担でなおさら具合が悪くなって、そんでフルに回復しないままどんどん苦しくなっちゃったらもっとかわいそうだよなあ、なんて、心は揺れ動く。

キモとかはあまり効果はないようで、手術が最善のオプションだといわれました。

手術からは、2〜3日後に退院できるそうです。

手術させようっと。
またオシッコ臭くなって帰ってくるの、かわいそうだけど。
なんか、腕取っちゃったら治るんじゃないかって、バカなこと考えてるんですけど。そんなこと、ないですよね。ふーむ。

***

これを読んだお仕事関係の方、どーか、お仕事くださ〜い。
マジでお金かかるんで〜す。

***
すり寄りて舐めくる舌のあたたかく違うよ慰めらるべきはきみ

ひくついて夢見てるんだ春日向きみも生き物ぼくも生き物

どこにでもついてくる癖びっこひいて来なくていいよトイレに行くだけ

首を上げ上目遣いで仰ぐきみよごめんなぼくは神ではないんだ

陽溜まりや青葉薫風いのちに溢れ五月はいつもなにかを喪う

(俳句にはできなんだ。三十一文字だと、なんだかぜんぶ、口からついて出てきた)

December 17, 2004

年末年の瀬年の暮れ

年末年始の原稿の締め切りに追われて、といってもそのおかげで年末年始は原稿を書かなくてもいいんですけど、しかしいずれも締め切り間際までぜんぜん書くモードに入れず、書いては休み書いては眠り書いては飲んで、なんかちんたらちんたら引きこもりでうちから一歩も外に出ない日が続きます。どうせ外は寒いからね、とか言っても、じっさいは冷凛たる外気に当たればそれはそれでしゃきっとして、じじつ今週初めにタイムズスクエアに出たときなんか気持ちよかったなあ。北海道で生まれ育ったから、きんきんに冷えるとぷはーってはじけたくなるんですわ。外に出ないとなあ。

9月以来の鬱屈した精神状態もどうにか時間とともに風化してくるような感じがして、そうね、ここは年内でどうにか浮き上がって、来年はきれいに息をしたいなあと思ってます。

英語で好きな言い回しにね
Today is the first day of the rest of your life.
ってのがあってね、そうだよなあ、って思いませんか。
きょうは、残りのじぶんの人生の、最初の日。

好きつながりでかっこいいと思ってる英語の格言に
The noblest vengeance is to forgive.
ってのもあります。
最も崇高な復讐は、ゆるすことである。
涙が出るね。

そんでもって最近ずっとiTunesが奏でているのがJay-Jay Johansonっていう歌手の声です。先月はずっとクラシックだったけど、この2週間は一転こんなメローさ。このひと、Queer as Folk の第2シリーズだったかなあ、たしか最後のシーンで流れたんですよね、Suffering っていう曲。歌詞がね、いいんだ。どこの国のひとなんだろ。英語がすごく聞き取りやすいんで、アメリカ人じゃないんだろうな。

そうそう、例のジャーナリストネットの方達とも、東京関係は私の今回の一時帰国(渡米12年目にして初めて日本で年越しをします)のさいに声をかけてお会いできる方にはお会いしたいなと思います。明日の夜もじつはニューヨークで声をかけてくれた写真をやっている方とお会いして食事がてら話をしてくる予定です。おお、外に出るじゃないか。

なんか、ずいぶん久しぶりの近況報告モード……。
もともとこのブロッグは「ブルシット」といって、たわけなヨタ話=「たわごと(bullshit)」を余所さま構わずに書き殴る、あるいはたわけな余所さまの話を「bullshit!!」と罵倒する、という趣旨で始めたんだけど、とちゅうからけっこうひとが読んでるということがわかって、けっこう大人しくなっちまいました。小心者です。

いつからを晩年と呼ぶや冬銀河 (母親の俳句を盗用改作)

March 19, 2004

俳句でもひねるか

ほのあまき春甘藍の葉は透けて

山焼きの天を濁音で行く軍機

ねこに恋われも狂気を持て余す

リラ冷えや終日解けぬ謎ひとつ

ちちの忌の母に七度の山笑ふ

きみの小言何だったっけ春うらら

苦きこともちぎって春のサラダ喰ふ

春愁ふ惰眠のねこを呼び捨てに

春雨じゃショパンの雨じゃ濡れてこか

草の芽は精霊のごと地に満ちて