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January 14, 2008

Bar Blanc

2008-01-11
フレンチ-アメリカン
Bar Blanc(バー・ブラン)
☆☆☆
142 W 10th St(ウエストヴィレッジ)
New York, NY
212-255-2330

ブノワで食わされたあのロースト・ポークのどうでもよさを、さらに際立たせてくれると書けばよいのかそれともそれを覆い尽くして癒してくれたと言えばよいのか、とても美味しいロースト・ポークに新年早々出遭いました。そうそう、これです、ロースト・ポークはこうでなければなりません。皮をわざと残してそこをカリカリカリッとさせ、そうして肉部分はやわらかなれど肉の食感を保ってしっとりと火が通っている。もう、こんなに穏やかに幸せな気分にさせてくれるお肉はありません。まあ、ご覧あれ。

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まず、皿に置いたお肉のたたずまいまでブノワのとは違います。これは重要。料理人が、いかに自分の作ったそれを大事に思っているか、それが表れるからです。客のためのプレゼンテーションというよりも先に、まず自分の作品にシェフ自身がどれほど傾注しているかということなのです。
ブノワのはこれです。比べてみて。

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その差は味のみならず歴然でしょ。

さて、2008年最初のレヴューはグリニッヂヴィレッジに1カ月前に開店したばかりの「バー・ブラン」です。「白いバー」という意味で、フロアを除いて内装は白で統一されています。1カ月前といっても、ここを作ったのは「Bouley」のシェフだったセザール・ラミレスと、メートルディのディディエ、セクレタリーだったピエール、そして業務法律顧問だったキウォン・スタンドンの4人です。レストランがどういうものであるかを知り尽くしている彼らのことですから、1カ月にしてすでにインスタント・トップレストランです。訪問した11日は金曜日で、いやいや、店内はじつにウエストヴィレッジらしい喧噪(私たちはバースペースのテーブル席でしたのでなおさら)に満たされ、じつにニューヨークでした。

私たちは5人でテイスティングメニューを頼みました。ですので、メニューにあるのとはポーションもアレンジメントも少し違うと思いますが、印象は掴めると思います。冒頭に紹介したのは5コースの中での最後の肉料理でしたのでそれは再度、最後に詳述するとして、まずはアミューズが2つ供されました。

ちっちゃなブリオーシュ。中にちょっとだけブリーが挟まってて、さらにトリュフオイルの香りです。こんなにちっこくて、でも口にしたとたん顔の筋肉がへなっとなります。
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これはちょっと甘酸っぱいビーツのジェリーとたおやかなクレームフレーシュのアイスクリーム。フルール・ド・セルがジェリーの上に掛かっています。なかなか洒落た陶のスプーンを見つけてきましたね。
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そうして最初の前菜が2種類のマグロの刺身と、フォワグラの蒸したのです。
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向こうっ側の2つがマグロ。手前がフォワグラ。マグロはメニューにあります。
右上のがポン酢と黒トリュフのドレッシング仕立て。これはみんなちょっと塩っぱいと言ってましたが、わたしは気にならず。
左上のは黒タマネギとイカ墨と味噌のソースに、上にゴボウのフライとマイクログリーンが載ってますね。
フォワグラは、これまた蒸してまるでアン肝のように軽く上品に仕上がっています。それを定番の果物のソース(リンゴ?)の上に置いて、さらにフルール・ド・セルでカリカリ食感を加えています。木の芽が裏返しなのはご愛嬌です。これは、ほんと、鮟肝もこうやってポン酢の代わりにべつの甘くて酸っぱい林檎やブドウで食べさせても面白いかもしれないですね。

ほんでもって、次のこれも美味しかったの。
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中央のはすごい軽い羊のリコッタチーズの上にローストしたウサギの肉をいろいろ成型してスライスしたのを敷いて、そんで上に載っているのはリ・ド・ヴォーです。茶色いソースはジュですね。右上にはウサギのレヴァーペースト(といってもものすごく滑らかでクリームたっぷりの絶品)。手前と奥のマイクログリーンに隠れているのはちっちゃなクリミニマッシュルームを甘酸っぱく漬けたもので、これがまたファッティな皿のアクセントとしてなかなか頭の良い配置です。
んで、うまいんだ、このコンビネーション。ウサギの肉のやさしさ。子牛の胸腺の火の加減。セザールって、こんなに肉料理が上手かったっけ? これはメニューでは前菜のところにSlow Roasted Rabbit and Sweetbread Saladとして表記されています。
いやいや、困ったなあ、こういう素敵なレストランがあちこちにできると、金がいくらあっても足りなくなります。

次は何? そうそう、これ。ホタテ。纏っているのはフィロ・ドー(薄いパイシートみたいなのです)、で、奥にエスカルゴが2つ隠れています。
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いやいや、こう振り返るとやっぱり美味かったんだなあ。どんどん味を思い出してしまってまた食べたくなってくる。メニューにもPan Seared Jumbo Scallopというのがありますが、これはエスカルゴも入ってるしソースも違うかもしれません。このスープっぽいソースの緑はたしかタラゴンです。エスカルゴにタラゴンが合うところからの即興かもしれません。ホタテのジュースがベースでしょうか、全体をなんとなくシトラスの風味とともにまとめあげています。

そんでもって、写真ではなんだかわからんが、低温調理のサーモンです。
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サーモンはとろとろほろほろです。その上にプレザーヴド・トマトを掛けて、そこにハーブのパスタのシートを載っけて、そこにさらに白ワインの泡のソースを覆いかぶせてるんですね。
これね、じつはわたし、いちばん面白いと思った。このジャム状にしたトマトが何とも味が濃くて、オレンジの味まで含んでいる。サーモンのオレンジソースは定番ですが、このトマトがめちゃくちゃ濃くて美味しいのです。でも、残念ながら塩っぱすぎたの。量で調節して、もっと少量にすればよかったのかもしれませんが、そのアンバランスによってトマトの濃さに占領されちゃった感。ウーム、残念。

そんで料理コースの最後は冒頭のポークです。
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メニューではMilk Fed Porceletとあります。乳飲み子の豚の仔っこ。うー、かわいそ。心して食させていただきましょう。というかほんと、こういうのを不味くするなら調理人は罪人です。
中央のがそのロースの部分ですね。脂身の部分まで付いているのが日本人の私にはうれしい。左側に、さらにその脂身を越えてカリカリの皮がちょっと剥がれているのが見えるでしょ? うひひ。
で、右奥のはバラ肉部分の角切り。その上から橋のように渡されているのはクラッカーの上にその豚の頬肉とかで作ったテリーヌをちょぼちょぼと並べているわけですね。
バラ肉部分は調理法が違うのか、もっとワイルドな味がしますが、とにかくこのロース部分が美味しい。しかも下に敷いているのが芽キャベツの賽の目切りの、なんというの? ちょっと甘酸っぱい感じのもので、これも豚肉にぴったりなんだ。ソースは2種類。肉汁にシナモンとスターアニス(八角)のと、オレンジのです。これがまた押し付けがましくなく、さりげなく肉の味を両脇から支えるのです。

というわけで、腹一杯になって、デザート。
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オヴンから出したての熱々のアーモンドケーキと、洋梨とマスカルポーネのソルベ。
そんなに甘くなくて美味しい。まあデザートメニューは驚くというのではなく、手堅くという構成です。
デザートを凝るのはやはりグランメゾンですから。ここはほんと、スペースといい造作といい、ご近所のしゃれたレストランという位置づけ。デザートで客を惹き付ける必要はないでしょう。

でも驚いたのが食事が終わって厨房に謝意を伝えに訪れた時です。(中央の笑顔の眼鏡がセザールです。あら、彼、腕にタトゥー、すごいな)
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10人以上が働いてるのです。この規模でこのクックの多さは贅沢なもんです。素晴らしい。

さて、初回の訪問はじつに満足の行くものでした。
Allen & Delancey のときにも書きましたが、ニューヨークはいま、第2次なんだか第3次なんだか、レストラン業界に新しい波が生まれています。一流どころで修行したシェフたちが続々と自分の店をオープンさせて、それがいずれもなかなかよい仕事を見せています。Allen & D はいま現在、もう予約の取れない人気店です。

そこでこのバー・ブランの参入です。
この日の料理はいずれも実に洗練されたもので、ブーレイの尾っぽをまだ引きずっているようにも感じました。というか、ブーレイがセザールの料理だったのですが。
私が今回、サーモンのトマトに惹かれたように、今後はもう少し尖る部分もあっていいのではないか。何せここはヴィレッジです。顧客層も若い。大人の味と同時に、食べると思わずニヤけてしまうような遊び心のある皿を見せても面白いと思います。

本日のテイスティング・メニュは1人90ドル。
ワインは50ドル前後でじゅうぶんに美味しいものがそろっています。
私たちはサンセール($48)から急に贅沢して2003 Chateau de Puligny Montrachet Puligny Montrachet Folatieres($148)、2002 gevrey chambertin sarl maurice chapuis($105)といただきました。

January 02, 2008

ブノワ

2007-12-15
フレンチ
Benoit(ブノワ)
☆なし
東京都渋谷区神宮前5-51-8
ラ・ポルト青山 10階
03-5468-0881

泣く子も黙るアラン・デュカスの東京ビストロ。ミシュラン東京で☆1つ獲得したそうで、この日はランチで5500円のコースを食べました。が、まったくいただけませんでした。シェフが不在だったのでしょうか、どれもとんでもなくしょっぱいのと、味がだれているというかボケているというか、ひどいもんでした。周りは女性客で溢れていましたが、こんなものを食わされてこれがフレンチ(地中海風と銘打ってはいますが)だと思わされているならかわいそうです。まあ、サービスは悪くなかったですけどね。

5500円のコースはオードブルメニューから2品、前菜から1品、メインから1皿、それにデセールですが、値づけがまず高すぎます。青山の国連大学ビルの並びなんですけど、地価でしょうか。

私はオードブルから牛のタルタル(左)とズワイガニのアスピック仕立てを選んだんですが、だいたい、このズワイガニの容器が口の狭いつぼ型で食べづらいことこの上ない。なんか、ジャムを入れるガラス容器の使い回しみたいな感じで、なんでこんなもんに入れて出すんでしょうか。牛のタルタルもべつに何ですかって感じで、ワインはサンセールを頼んだんですが、これを食べてワインを飲むとちょっと味が変わって面白いのはたんにウスターソースのスパイスのせいでしょう。

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前菜なるものは地野菜のブイヨン煮を選びましたが、この野菜、まったく風味も食感も死んでしまっていて、ブイヨン煮というよりもブヨブヨ煮。そこらのスーパーで買った野菜だってうまく調理したらこれより美味いはずです。コンソメブイヨンも煮詰まった感じで香りがボケていて、なおかつとてつもなく塩っぱい。まいったね、こりゃ。

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とどめはこの鹿児島産黒豚のロティ。
エシャロットのコンフィとほうれん草が添えられていますがね、このソースはシャルキュティエ(豚肉加工職人風)と呼ばれるもんなんだけど、炒めたまねぎ、ピクルス、粒マスタードが入ったソースなのにそのいずれの風味も平坦に塗り込まれた泥壁みたいに一元的で、何なんでしょう、これは。そんで、やはり塩っぱい。

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それと、ロティというのはローストってことなんですが、この豚肉、バラ肉の部分なんだよね、それを長時間の低温調理でまず下処理してから焼いてるもんだから、ローストの食感がなくてまるでシチュウ肉のように柔らかくて気持ち悪いの。ローストってさ、頼む人は低温でじっくりオヴンで焼いたり、あるいは火にかざして焼き付けるものをイメージしてオーダーするんですよね。で、柔らかくても端がかりっとしてて、ナイフ入れるとまだ食感の残る肉から透明な肉汁がしみ出してくるのを期待してオーダーしてるわけです。口の中で噛むごとに肉の味を楽しむ、みたいな。でも、これ、肉の味もしない。前述のようにソースも単調。まあね、ローストビーフでもこういうのあるけど、ビーフの場合は中がピンクでいいから。でも豚だとね、ぜんぶ火を通すというオブセッションでこんなにぶにょぶにょに処理しちゃうのかもしれないね。でも、なんか違うでしょって思っちゃう。こういう肉が食べたいならシチュウを頼むもん。そうだなあ、ああ、スペアリブでこういうふうにむやみに柔らかく処理しちゃってるのがあるなあ。あれも苦手だなあ。なんか、先に茹でてるんじゃないの、だから味がもう逃げ出ちゃってるんじゃないのってな感じの。

全般的に言って、フランスに行くと何でも味が濃いのはわかりますが、でもそれはそれで味がしっかりと主張してるもんです。でもここのブノワ東京の味は、主張なんかしてない。怠慢な印象がする。

凡庸とはこういう味をいうのでしょう。ディナー・シェフは知りませんが、すくなくとも私の食したこの日のランチは(そうして連れの頼んだ別のメニュー、リゾットやヒラメのソテーなども)、わざわざ高い金を払って食べに出向くようなもんではござんせん。
デセールもまったく面白味のないものでした。
以上。

November 07, 2007

ALLEN & DELANCEY

2007-11-02
フレンチ・アメリカン・イングリッシュ?
Allen & Delancey
☆☆☆
115 Allen St.
Manhattan, NY
Lwer East Side (at Delancey St)
212-253-5400

いま確実に、NYにレストランの第2次ルネッサンスが訪れていると思います。
おそらく30歳前後の新しいシェフたちが、続々といま独立したりスポンサーを見つけて店を出したりいます。その中で頭角を現す者たちが、5人もいればすごいことです。

彼らはいわゆるXブーレイ、Xダニエル、Xグラマシー・タバーン、Xどこそこなのです(エックス〜〜と読みます。かつての〜〜という意味で、つまりむかしどこそこで働いていたやつ、ということ。ちなみにマイ・エックス・ボーイフレンド、は私の前の彼氏、という意味です)。

NYは90年代初めからいわゆるブーレイが牽引役となってダニエルが出てきてジャン・ジョルジュが現れ、ル・ベルナルダンのトップがエリック・ルペールに代わり、グラマシー・タヴァーンのトム・コリッキオが追いかけておそらくモダーン・キュイジーヌの第一次黄金期を形成した。そこにデュカスやナパのトーマス・ケラーがやってきて、一気にテーブル単価を高めた新型のレストランビジネスも持ち込みました。

で、そういう人たちはいま50歳前後なのですね、もう。

それで、そういうところを経験した若手たちが出てきているのです。それが20代30代の若手。これはじつはこの日のアレン&デランシーにやってきたから気づいたことではなくて、その前に10月29日にチェルシーのはずれのTrestleというちっちゃい普通の街角のレストランに入って、そこが伏線になって考えたことです。そこで食ったものがとてもエスプリに溢れておいしかった。え? なに? だれなの? と思ってウェイターに聞いたら、グラマシー・タヴァーンで料理していたロルフというシェフだと言う。ふーん、グラマシー・タヴァーンは最近行ってなかったけど、90年代の後半、ブーレイが閉まっていたときに唯一通ったレストランでした。トム・コリッキオの店です。最近、シェフが代わったみたいだけど。

いや、今日はALLEN & DELANCEYの話です。

ここのシェフは、じつはすでにここで書いたことがあります。
ニール・ファーガソン。
ゴードン・ラムジー@ザ・ロンドンNY。そこのオープニングシェフで、私が食べた後であそこをやめ、それでどっか郊外に行っていて、最近1か月ちょっと前に戻ってきてこの店を開いた。

ゴードン・ラムジーには☆☆☆を付けました。再訪していないので、ニールがシェフじゃなくなってからどうなっているのかは検証の必要があります。

さて、このニール、やはり素晴らしいのです。「ゴードン・ラムジーのレシピを再現する」という宿命を与えられたレストランでも、おいしかったのはやはり彼の差配のせいだと、この日改めてわかりました。
で、調べてみたら、彼、パリのラルページュ (L'Arpege)やブルゴーニュのレスペランス(L'Esperance)で働いてたのね。ふーん。アルページュは最近あんまり評判よくないけど、両方ともミシュランの3つ☆ですもんね。

さて、店名のとおり、ここはロウワーイーストサイド、アレン・ストリートとデランシー・ストリートの北西の角にあります。店内はほとんどロウソクのみの明かりで構成されています。まずバーカウンターがあって、奥に二つのダイニングルームがあります。べつにかしこまってません。カジュアル、アンド・エレガント、って感じです。またマリアさんと行ってきました。
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オープンしてまだ1か月ちょっとなのでテイスティングメニューもワインペアリングもありません。おまけにテーブル席もなくてバーカウンターでの食事です。でも、テイスティングメニューとワインペアリングをやってくれました。いずれは必要になるんだもんね、われわれを実験台にやってみればいいのです。

ということで、メニューからの小さなポーションでの組み合わせとなりました。
しかし、ゴードン・ラムジーのときにも言いましたが、ニール・ファーガソンはブラウンソース系がうまいのです。なんといいますか、かなり男っぽい。それも、さわやか系の男、って、言ってることわからんわね。はは。

じゃ、行きますか。

Shavings of Hamachi, Pink Grapefruit Beads, Pickled Fennel Bulb
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ハマチ、好きなんだよねえ、こっちの人って。わたしはほとんど食わないです。トロだって、よほどおいしいって言われなくちゃ食べないもの。赤身は食うけど。
で、ふつうは英語でイエローテイルっていってたんだけど、最近のスシブームで、みんなハマチって呼ぶようになった。そんでそのハマチです。シェイヴしてます。つまり削ぎ切りです。でね、そのリッチな脂っぽさを、グレープフルーツの酸味で中和します。ピンクのグレープフルーツなのは、味というよりも色合いの美しさでの選択です。そこにやはり甘酸っぱく漬けたフェンネルが散らしてあります。それとイエローベルペッパーのみじん切りも。
グレープフルーツは、ハマチに合います。はは。おいしいの。情けない、かんたんに宗旨替え。

Caramelized Bone Marrow, Caviar, Shallot Puree
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でね、これ、ヒットです。骨髄です。それをきっとオヴンで焼いてずるっと出したのをまたそのまま焼くのかな、ソテーするのかな、ソテーしたら溶けちゃいそうだな、どうするんだろ、とにかくキャラメライズします。そんでね、そこになんと、キャヴィアを載せちゃうのよ。キャヴィアみたいな高価なモノを、ってんで驚いてるんじゃないのよ。なんと、ってのは、どういう組み合わせですか?っていう驚きです。それが、合うのよ、あなた。このキャヴィア、でも、チョウザメのキャヴィアかなあ。なんか、もっとあっさりしてたような気がします。この濃厚な塩味が、骨髄の濃厚さに別の角度の濃厚さを加えて、うまいんだ。驚いたね。
下に敷いてあるのはエシャロットのピュレです。それと茶色いジュは子牛とかのジュですよね。中に何が混じっているのか、何となくナッツのような気もしたんですけど、ナッツは入れてないと言います。しかし、これは何ともじんわりとおいしかった。すばらしい。あ、そうよ、ニール・ファーガソンはこういう茶色いソースが上手なのよ、そうだったそうだった。
奥に写っているのはいっしょにどうぞっていう付け合わせのトーストしたブリオーシュです。

Sea Scallops, Celery Root Cream, Braised Cippolini Onions, Verjus
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ほら、ホタテもこういう茶色いソースです。というか、ヴェルジュという、未熟なグレープの果汁と熟したグレープの実と、梨かなあ、この四角いの。それと丸い茶色のは小タマネギのカラメライズしたやつですね。ピュレはセロリの根です。これもさりげなくおいしい。おほほほほ、って感じです。
そうねえ、味のメリハリなのかなあ。

Braised Fluke Fillet, Cauliflower Cream, Parsley Root, Trompettes
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でね、お魚もうめえのよ。これね、ヒラメ。それをブレイズってのは油でいためてそれからちょっとの汁を使って蒸し煮にするという感じなんだけど、もうこの塩焼きっぽい感じに、下に、なんだったっけなあこの野菜。白いのはカリフラワークリームだって。で、隠れてるけど、パセリの細い根っこがグリルされて敷いてあるの。パセリの根っこなんて、初めて食ったわ。そんでほんとにパセリの根っこの味がするのです。はは。
で、このお皿、全体としてとっても清楚なうれしい味がしました。うひー。

Slow Roasted Porkbelly, Pickled Pear, Parsnips, Fenugreek Syrup
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お肉はこれです。斜めになっててわかりづらいけど勘弁。豚バラ。これをゆっくりロースト。それで、手前はエリンギです。ちゃんと隠し包丁が入ってるよ。左のごろんとしたのはパースニップ。緑のはサヴォイキャベツ。手前の紫はワインに漬けたんだろう梨です。泡は忘れた。ぽつぽつ落ちているのがフェニュグリークのシロップなんだろうなあ。ワインペアリングやってたんで、この辺から記憶が雑になるわ。
でも、しっかりとおいしうござんした。

American Cheeses from Saxelby’s
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アメリカのチーズの取り合わせも出してくれました、梨とイチジクが添えられています。
そうね、梨がこんなに出てくるから、ホタテに付いてきた四角いのは梨じゃなかったかも。すんません。

で、デザートです。
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はーい、楽しうございました。

コースはぜんぶで75ドル。
ワインペアリングは45ドルでした。
普通にアラカルトで頼むとアペタイザーが15ドル前後、アントレが25ドル前後です。つまり40ドル+ワイン+デザートで食べられちゃう。
今回のこのコースとワインも、すんごいお得感いっぱい!

ところでわたし、いっつもめんどくさくてワインのメモはしないんだけど、ほんとはこういうブログではワインのこと知りたい人も多いんだろうなあ。こんどからメモすることにしましょうか。でも、そうすると料理が楽しめないんだよね、せわしなくて。ウーム、悩む。

で、帰り際、地下の厨房にシェフに表敬訪問。金曜の夜ということもあってすんごく込んでいました。
お忙しいところ、ありがとうね、ニールさん!
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満足して帰りました。
ごっつぁんっす!

June 04, 2007

ラルテミス・ペティアント

2007-06-03
フレンチ
ラルテミス・ペティアント(L'ARTEMIS PETILLANTE)
☆☆
東京都渋谷区神宮前2-31-7 ビラ・グロリア1F
03-5786-0220

May 14, 2007

Upstairs

2007-05-12
懐石・鮨・フレンチ
Upstairs at Bouley(ブーレイ・アップステアーズ)
☆☆☆
130 West Broadway
(corner of Duanes St.)
NY., NY.
212-219-1011

しかし、名だたる菊乃井やおけいすしやゴードン・ラムジーやらに同じ3つ☆を付けてるんだけど、どう考えてもここはまったく「格」ははるか下です。だって割烹においてはカウンター席というのは上席なんですが、ここはアメリカ。カウンター席はファストフード用と受け取られている席扱い。しかもその席はL字型で6席しかなくて、その向こうの調理スペースは1畳分もないようなところに2人の板前さんが入っているのです。

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(こうです。向うが三上さん、右側が山田さん)

おまけにここのウエイターたるやサービスは最低、さらにひどいことにじつにひんぱんに勘定書を間違える。百歩譲ってアメリカ人だから日本料理のことが分からないというのはしょうがないかもしれないが、頼んでもないものがついていたり、2人なのに3人の計算になっていたりは日常茶飯事。ですんで、ここで飲み食いする時は、最後に必ずきちんとビルを見てチェックアウトしなければ後から何でかなあといやな思い出し方をすることになります。ですんで必ずチェックアウトです。まるで満員電車から降りるたびにスリに遭わなかったかとポケットを確かめる癖がついてしまうようなもんです。

なのになんで☆3つを付けるのかは、ひとえにただただ、うまいからです。確かにここは美味しい。
そうじゃなきゃとうに来るのを辞めている。いやな思いをしても食べたくなる。困ったもんです。
前にも書いたが、☆の数はかなり客観的に料理の質です。もっといえば味だけの点数です。

さてこの日のアップステアーズは初夏のメニューに変わったということでのレビューです。

日本の食堂には大きく分けて割烹と料亭があります。もっとも、東京では料亭というのは政治家や経済界の重鎮たちが密談を兼ねて会食をするところ、みたいなイメージがありますんで、30代半ばで東京を離れた私なんぞには、しかも新聞社では社会部だったこともあって、世に言うバブル期ではあったもののそんな大層なところに行く機会なんぞそうそうあるはずもありませんでした。でも、京都の料亭というのは違うようですね。嵐山の吉兆はお昼でも3万円以上しますが、座敷に上がって上げ膳据え膳ですからその値付けもむべなるかな。でも菊乃井なんかはもっと安い。これに瓢亭を加えて3大料亭でしょうか。これはいわばフレンチでいえばグランメゾンです。客の要望に従ってきちっと台本を組み、多少の遊びはあろうものの寸分の隙もなく大団円までを演じ切る。交響曲を最終楽章まで奏でるようなもんです。

一方の割烹は即興が命のジャズライヴみたいなもん。レパートリーは用意してあるがその日そのときの客の反応で思いつくまま自分の抽き出しを開けて変奏してみる。このアップステアーズは、形式はファストフード・カウンターの扱いですが、心意気は割烹です。当意即妙、臨機応変。メニューどおりには事は運ばない。まあ、でもこの狭さでメニューにある料理も、つまりは店内のテーブル席から来る鮨の注文や一品料理の注文もさばかねばならないので大変でしょうがね。

先日来、デギュスタシオン、そして饗屋と出かけましたが、この2店、じつによいながらもメニューのバラエティがそう豊富というわけではないので、さてその辺のメニュー以外の守備範囲がどこまで広いのか、次の来店あたりから確かめてみたい気もします。

この日の一品目はシェフ三上さんの漬けた海鞘(ほや)に生雲丹を載せてアラレを散らしたもの。
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漬けたばかりの海鞘のその漬かりが浅くて、まだ生の海鞘の磯の香りが立ちのぼります。それをいいあんばいの塩が表層部分でくいっと押さえ込む。まさに海のミネラルの甘みと塩み。そこに雲丹の脂分の甘みが覆いかぶさる。絶妙です。海鞘はこのくらい漬かりが浅いうちのほうがいいかもしれません。いや、わからん。漬かり込んだら漬かり込んだでまた美味くなるかもしれない。そのほんの微妙な違いを知りたくなる、そんなミニマリズムの結晶です。

2品目は山田さんの作り立てのごま豆腐です。
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これは見事です。じつにクリーミーでごまの風味がぱあっと口の中に行き渡るのに、どこにも味の力みがない、じつに穏やかな、悟ったようなごま豆腐です。しかもこの日は出汁つゆでまっすぐ勝負です。かつ節がすごく利いているのに、そのうまみをすべて抱き込んでしまうような、やさしく、たおやかなごま豆腐。色気すら感じるわ。
すごいねえ、と言ったら、これ、山田さんが吉兆時代に学んだ作り方なんですって。そんで、吉兆はあの、精進料理の神さま、じゃねえか、仏さまか、といわれる尼さんで有名な大津の月心寺のごま豆腐の作り方を伝授してもらっているんですって。なるほどねえ。すごいもんだなあ。

そうしたらこんどは三上さんから、卵豆腐です。
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卵豆腐とはいえ、ひとくち口に含んで、やられました。フォワグラの脂を使ってる。三上さん、「これは月心寺ではなくて、うちの近所の◎×寺に伝わるもんです」なんて軽口を叩いていましたが、じつはこの日来る前に電話で冷たい茶碗蒸しとか食べたくなるんですよねと言ったら、これを作っていてくれてたというわけ。なかにはロブスターの身と海老の身とハートオブパームとそして百合の根が入ってました。うめえったらありゃしません。

次は焼き物です。
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これもすごかった。右側が鱧(はも)。どういう発想か、ヤングコーンを巻き込んで蒸して焼いてある。このヤングコーンが食感といい、不思議にアクセントとなって鱧のうまさを引き立てています。わさびもいい。
左側は太刀魚。これ、なんかの漬け焼きだなあ。ちょいと干してもあるんだろうか、素晴らしい旨味。おまけにアワビの出汁の入った鼈甲餡がかかっているのです。
ピンクのはギョウジャニンニクの茎の部分の甘酢漬けです。

ほんでもってお次はお肉と来ました。
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ラムです。うみゃー。
ちゃんと日本食になってるの。このラム、ブーレイの食材をかっぱらってきたっていってましたが、まあ、確かにものすごく質のいい、臭みのまったくないおいしい肉であるのでしょう。三上さんはそこにポケットを作って里芋のつぶしたのを忍び込ませ、そんで、どうやって味付けしたのかなあ、ひょっとしたら醤油と味醂と酒だけかもしれない、クセのある羊肉をとても素直な、おとなしいよい日本の子にしてくれました。添えの野菜の相性の良さはいうまでもありません。ラムの餡ときちんと通底しているのは野菜のすべてが出汁に浸されていたからです。

んで、次のこの穴子の煮こごりで私はぶっ飛びました。
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口に入れるや否や、イノシン酸もグルタミン酸もグアニル酸も、炸裂です。なんじゃ、これは、という感じ。
参りました。おまけに雲丹も入ってるし。
で、この煮こごり、その「こごり」方がふるふるなの。もう、固まるか固まらないかのそのちょうど境界線上で綱渡りしているような危うさ、淡さ。パン、と手を叩けばそれだけでタラタラと液体になってしまうような、そんな感じ。あの栗原はるみの危ういゼラチン菓子よりもさらに儚い陽炎のような。あはは。でね、じつはこの煮こごり、かなり黒七味が利いてるのです。それがでも逆に味の深みを教えてくれるのさ。ちょうど、海底に射し込む一条の夏の陽光が遠い海面までの距離を教えてくれるように。
ほんと、これ食ってて、途中、涙出るかと思ったくらい。
旨かった。

なんだか元気になって、まだ食える、って言ったら出てきたのがこれ。
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コウベビーフの切れ端(笑)をマグロに見立てて、ヅケにして焼いたものの上にとろろならぬ、長芋素麺を短く叩いたものを載せたもの。マグロの山かけの変形ですわね。でも、マグロとは違う牛肉のグレイン(筋め)の質感には、すりおろした芋ではなくてこうしてみじん切りのようにした長芋のほうがちょうど同じような食感、質感になって、それらが呼応し合って面白い効果を出しているのでした。こういうのを瞬間的に判断するというのか、それともそこまで理として考えているのではなく直観的にわかってしまうのか、その辺が三上さんのすごいところです。

いやいや、堪能しました。
このあとは鮨に移り、カニのミソ和え、鯛と千枚漬け、〆鯖、白ミル貝、大トロ、マグロ赤身漬け、ホタテ、いか、鯵叩き、と握りでいただきました。
腹いっぱい。大満足。
しっかし、この2人にちゃんとした場所とちゃんとした器を与えて、ちゃんとしたウェイティングスタッフで仕事をさせてあげたいものです。いや、言い方が違った。仕事をしていただいたら、客としてそんな幸福はありません。

で、しっかり、メートルディの持ってきたお勘定はこの日も2人で100ドル余計についておりました(笑)。
って、笑いごとじゃないわな。
いったい、どうしてこんな間違いをするんでしょうかね。困ったもんです。

May 08, 2007

Degustation

2007-05-04
フレンチ・タパス(スペインの小皿料理)?
Degustation(デギュスタシオン)

239 E. 5th St. (bet. 2nd & 3rd Aves.)
NY., NY., 10003
TEL 212-979-1012

去年の10月以来の再訪です。やっぱりここは面白いし美味しいし、はてさて、☆ではありながら、この直前のエントリーである☆☆のジャン・ジョルジュよりも褒めた書き方になるのはどうしてでしょうかね。まあ、判官贔屓かしら?

だって、見てください、このキャパですよ。厨房もなにも、オープンキッチンはコの字型のカウンター19席に囲まれたこのスペースだけ。逃げも隠れも出来ません。そこで仕込みをして調理してアセンブリしてプレゼンテーションもなかなか考えてあって、はいどーぞとなれば、そりゃあなた、感激します。
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前回はおとなりのジュエルバコのテーブルに座ってこちらから皿を持ってきてもらったのでよくわからなかったのですが、今回は目の前で展開する調理の仕組みがわかりました。やっぱり限度はあります。メニューは前菜っぽい小皿が5ドルとか6ドル、そして10ドル前後のラインがあって、メインとしても食べられるヴォリュームのある肉や魚介ものが20ドル前後です。値付けはものすごく良心的。ワインも35ドルくらいからと、とても安心して飲み食いできます。ここはなんといってもイーストヴィレッジ。その雰囲気を忘れないぞという気概さえ感じます。ただ、メニューの数は20種類くらいと限られる。おまけにいつも忙しそうで、カウンターながらいわゆる日本の割烹のようなインプロヴィゼーション、アドリブ、即興の妙みたいなものは難しいかもしれません。いや、どうかしら、もうすこし通って常連になったら試してみられるかもしれないけれど。

で、この日はアップステアーズの常連ですっかり仲好しになったマリアさんのお友達、テキサス・オースチンのスーザンさんが60歳の誕生日ウイークだということでNYに遊びにやってきて、それで3人でここでの会食となったわけです。この日は5コース50ドルというシェフズ・メニューを頼みました。で、そのほかにメニューの中から気になるものをピックアップして、追加注文という形。

一品目はその追加注文のトルティーヤラップです。なかにはお豆かしら? ウズラの卵も入っていて、上に載ってるのはハラピーニョの輪切りですね。一口料理です。いい感じです。
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それからコースに入りました。
最初はグリーンアスパラのグリル。周りにはアラレが付いています。カリカリパリパリ弾けます。で、下にたまっているのがチーズの泡ソースと、その中にポトンとポーチドエッグが落としてあります。で、スペインの生ハムであるセラノが切って添えてあります。それをグチャグチャと混ぜ合わせてアスパラをディップして食す。うまいっす。食感もいい。この卵とセラノの組み合わせは、ブーレイのコースでも出てきたことのある定番。こちらはアスパラ・ベーコンからの連想でもあるでしょう。
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こないだのジャンジョルジュ、さらにはじつはこの2日前の5月2日にはアップステアーズでもフレンチのほうから白アスパラガスのグリルを食べまして、アスパラ3連チャン。で、どこがいちばん美味かったかというと、写真撮ってませんが(ここにリポートもしてませんけど)アップステアーズの白アスパラが一等うまかったです。キャラメライズして、チーズがかかっていて、しかもソースが甘酸っぱくて、これはさすが素晴らしい料理でした。次がこのデギュスタシオンです。これは食感とソースのアイディアが上等です。この2つに比してジャンジョルジュはモレールマッシュルームを使っていて値段的にはいちばん高いでしょうけど、ちょっと凡庸な味だったですね。

次はコースから外れてコロッケ、クロケットですね、を食べました。中は戻した干しダラだったかなあ。下の緑はパセリのピュレーだそうです。まあまあかな、これは。
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次のこれは、思わず踊りだしてしまうほど美味かったわ。
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大中小と3種の海老のグリルですわね。どれがいちばん美味いかというと、じつはちっこいのです。もう海老の味がぎゅっと凝縮されていて、頭の部分なんか、丸ごと食したら涙が出てくるほどうまい。真ん中の大海老はモロッコ海老だったか名前を忘れましたが、肉がしっかりしていて味は穏やかで、これも違いがわかってうれしいものです。大きなのは手長海老ですね、スキャンピというやつ。これは身がほろほろです。ミソも甘い。しゃぶりつきました。ただグリルしてオイルと塩を振っただけなんですけど、参りました。料理って何なんだろうと、こういうのを食うと考え込んでしまいます。ってか、それは後の話で、食った時は昇天ですけどね。

んでもって次にでてきたのはホタテ貝。
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なんだっけ、この緑の野菜。なんかのササゲの一種みたいな食感でしたが、こんな海藻ってあったっけ? あ、思い出した、これ、samphire サンファイアというセリ科の多肉草。うーん、英語でなんとかグリーンとかいったんだけど、それを思い出せない。それにグレープトマトに火を通したのとブドウの輪切りとを加えた淡く甘いソースです。つまりトマトウォーターベースなのかな? これはちょっと甘さが一面的でまあまあだったかな。こう考えると、ホタテってかなり料理が難しいかも。東京の「カンテサンス」でもホタテは首を傾げたし。ホタテ自体が甘いから、ソースはそれと別の方角から切り込まねばならない。青みとか酸みとか。そういう意味ではこれまたブーレイのパセリのオーシャンブロスは凄いんだなあ。

そんでお肉に入ります。別注文のウズラが次に来ました。
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マリネされていてウズラの臭みが消えていて、これもなかなかよいものです。醤油とバルサミコに漬けたみたいな味です。よく見ると胡麻もくっついてるね。フェンネルのサラダも合っています。

そして料理のコースの最後4品目はロースト・リブアイの薄切りをブリオーシュのトーストの上に載せ、ホワイトチーズのソースを垂らしたもの。リブアイというのはリブロース、肩に近いロースの芯の部分。「目 eye」に似てまん丸だからこう呼びます。リブロースはいちばん肉の旨味を感じられる部位ですね。わたしはこのリブロースの芯の下の部分、ちょうどホタテの貝柱と足の関係でいうと、貝柱をアイとして、足の部分に相当する部分、なんていうんだっけ? あそこが大好き。脂が指して肉質はホロホロで。でもアイの部分もこうして食べるとじっさいジューシーで美味いっすよ、これ。うふふ。
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おまけはラム。これもうまい具合に焼けてるでしょ? キャラメリゼでっせ、この色が、はい。左のはハッシュドポテト(ジャガイモの千切りのパンケーキ焼きみたいなもん)。上にはサワークリームですね。下のソースは刷毛で塗った赤ワインのリダクションのソースです。もう腹一杯です。
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そして最後にデザート。この日はベリーのミルフィーユ仕立て。
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そんでもって、シェフがこんなにadorableなら、もう言うことはないじゃないですか。
名前はウェスリー・ジェノヴァート。じゃっかん28歳です。
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週末はいつも満杯です。平日の夜が予約を取りやすいでしょう。
さて、ウェスリー君、このカウンター席という形式がおのずから要求するであろうアドリブが可能なのかどうか、それが次の注目点ですね。

**
追記)翌週に再訪問しました。ウェスリー君、先週来たと知っているのに、シェフズ・メニューは同じ内容で出してきました。ちょっとがっかり。つまりメニュー以外にアレンジするというシステムはアメリカにはあまりないのかもしれません。これでは何度も来るわけにいきません。間口はあれど、奥がない、ということです。残念。

May 04, 2007

Jean Georges

07-05-03
フレンチ
ジャン・ジョルジュ(Jean Georges)
☆☆
1 Central Park W.
(bet. 60th & 61st Sts.)
Manhattan, NY
212-299-3900

ずいぶん久しぶりのジャン・ジョルジュです。何年ぶりかなあ。5、6年かなあ。
そんなにご無沙汰だったのにはもちろんわけがあります。
おいしいと思ったことがないから。はは。ミシュラン3つ星に向かって何というだいそれたことを!
でも、ここがニューヨークで4つある「三ツ星レストラン」の1つだと知って、ミシュランというのは、あ、そういうものなんだあ、とすこし得心したところもありました。

で、3つ星獲得後初めての再訪です。
この日は、ブーレイで働いていたタマちゃんがもう6年になるんでそろそろ他のところも知りたいと言ってブーレイを辞めて、次はマリオ・バターリのデル・ポストに移るというのが決まったので、そのお祝いも兼ねてランチに行ったわけです。ものすごく清々しい春の日で、2時の予約の30分前にコロンバスサークルで待ち合わせしてセントラルパークをちょっと散歩しました。ニューヨークはこの季節がいちばんいいね。

さて2時に入ったらまだ満席です。バーカウンターのあるカジュアルダイニングの席もいっぱい。で、キッチンを見たらジャン・ジョルジュがいたんで軽く会釈したら出てきて挨拶してくれました。こないだ、アップステアーズで彼がデイヴィッド・ブーレイといっしょにいるときに私が現れたら紹介されたんで向うもなんとなく憶えててくれたんでしょう。で、テーブルが空いたらウェイターが来て「シェフがお造りしますがお任せメニューでよろしいですか」となりました。こういうの、楽でいいわあ。日本人だなあ。


(クリックすると大きくなります)

ジャン・ジョルジュがおいしいと思ったことがない、のは、どうもそのスパイスの使い方にもあります。ここが最初にオープンしたのは10年ほど前。そのまえに彼はマンハッタンでビストロ形式とタイ風フレンチのレストランを持っていました。かなりアジアのスパイスを多用する、エキゾティックな味わいを自分のオリジナリティにするべく意識していたんですね、きっと。

でも、それが私のような日本人には付け刃というか、とがり過ぎというか、はっきりいって素材と味付けをどうしてこんな組み合わせをするのかわけわかんない状態だったわけです。味がバラバラ、あっちに飛び、こっちに外れ、そっちにズドン、ってな感じ。んー、もっとわかりやすくいうと、うどんの汁にバニラとシナモンを混ぜてブルーチーズ塗った刺身を食べさせる、みたいな(うへー、わかりやすい)。

さて、突き出しに出てきたのはこの店の有名なエッグカスタードにクレームフレーシュのホイップを載せてキャビアを食べさせるもの。
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これはまあ、そのままの味です。塩加減がちょうどよろしい。でも、カスタードがちょっと熱を通し過ぎでややダマになってます。もうすこし口溶けのよい、滑らかなものに仕上げなければいけません。

続いて出てきた前菜がこれ。
何だと思います?
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ハマチの刺身と日本のキュウリの漬け物ですわ。それで目の前でこのポン酢を注ぎ入れてくれるところがフレンチなんでしょうね。はは。で、上には七味みたいなスパイスが軽く振ってあって、ポン酢もこれ、カボスかな? これはわれわれが日本人だからという配慮かしら? ハマチもこうやってキュウリと同じく筒状に切るおフレンチな発想。面白いね。で、味は、まあ、おいしいけど、なんか、微笑ましい、という言葉が思いついてしまうという印象。お家で作れますよ。キュウリの漬け物、ほんとにキュウリの漬け物だから。浅漬けの素つかったみたいな。

次のアスパラガスはおいしかったです。アスパラがおいしい。
それにモレル(網傘茸)のシャロンソースなるものがやはりこれも目の前で載せられます。
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シャロン・ソースって何?って訊いたら、シャトー・シャロンとかいうフランスのワイナリーのことを説明してたから白ワインのブール・ブランみたいなもんでしょね。モレルもちょうどいい火の通り。白ワインと言いましたが、ソースはなぜかアルコールがまだかなり残っているふうで、ブランデーの味がしました。それが狙い目なのかどうかは訊きませんでしたが、春のアスパラはとくに茎の太い部分がやさしく甘くすべてを赦すような幸せな味がしました。

次がジャン・ジョルジュらしいエビと冬茹(どんこ)シイタケの柚子フォーム仕立て
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ドンコとはいっても、なんとなく普通のシイタケでしたが、エビと一緒にグリルしてあって、この柚子の泡のソースの下に眠っています。けっこう柚子、ぐいっと迫ってきます。逆にエビは叩いてあるのか、とてもほんのりほわほわ風味でした。で、その下にさらにマヨネーズが敷いてあって、そのマヨネーズがぴりりと辛いのは青唐辛子でしょう。ってことは柚子胡椒を混ぜ入れたのかもしれないね。ジャン・ジョルジュらしいというのは、この感じ。この組み合わせ、けっこう力技。面白かったです。

そして魚になります。
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シーバス(すずき)がきれいなプチトマトのマッシュルームブロスの上に載っています。きれいな一皿です。
で、このマッシュルームブロス、甘酸っぱくておいしい。それだけでなく焦がしバターを混ぜ込んでいます。つまりブール・ノワール(黒)、もしくはノワゼット(焦げ茶)ていどにしたバターの風味がトップノートなのね。で、酸味はトマトウォーターか、あるいはそれにもちろんレモンか。甘みは砂糖でしょうかね。そんでもってふとカレーっぽい香りがかすめるのはきっとコリアンダーシードあるいはカルダモンが入ってるんだと思う。すずきが皮目に纏っているのはおそらくマッシュルームパウダーだと思われます。
おいしかったです。
でも、これ、自分でも作れそうです。今度のパーティーで作ってみましょ。

最後のお肉は、これは自分では作れません。素晴らしいスクワブ(雛鳩)でした。
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スクワブはスモークされていました。これでスクワブのあの血臭さというかレバー風味というか、そういう野趣が野趣のままぐいっと私たちの手元に入ってきてくれます。スモークというのは偉大な調理法です。焼き加減はいうまでもなく、おそらくいままで食ったスクワブの中でトップクラスに入る料理でした。ソースはスクワブのジュにマーマレードっぽく詰めたオレンジ。そこにミントがかぶさっています。ショウガもほんの少し? 白いのはアジアン・ペアつまり丸い形をした日本の梨です。これはただ甘いだけで不要でした。シャリシャリ感はいいのですが、甘くてスクワブの味をぼやけさせるだけです。レモンかオレンジのジュースに漬けてから添えるとかしたらワザありだったと思います。スクワブの上には細かく3切れほどキャンディー(砂糖漬けコート)したドライフルーツが載ってました。梨だったのかなあ?

そこでデザートとプチフールになりました。
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ランチというせいか、あるいは三ツ星を取ったせいか、あるいは春のせいか、今回のジャン・ジョルジュは味の整え方がすこし落ち着いた感じがしました。で、おいしくなったか、というと、うーん、スクワブは見事だったけど、ほかのは私の中ではやはり☆☆かなあ。なんでだろう? 何が違うんだろう? いや、けっしてまずくはないんですよ。

同じ☆2つでも、ここのレヴューに書いてあるレストランで、書き方が違って絶賛しているところもありますが、それは期待値に対してのその期待のプラス方向での裏切られ方、あるいは頑張り方、が私を感動させるのです。ただ、こうやって振り返って見ると、☆の付け方はけっこう絶対値です。☆☆のレストランはいまいくつあるんだろう、でも、振り返って思い出してみても、この☆☆のレストランたちは私にとってはジャンルは違えど、みな同じレヴェルの味がするのです。それは「とてもおいしい」ということなんだけどね。でも、じゃあどうしてジャン・ジョルジュには「とてもおいしい」と、そういうふうな書き方にならないのか?

わっかりませ〜ん。

つまり、☆の数はかなり客観的な満足度の評価、書き方は、ずいぶんと主観的なあれやこれやの思い、ということですわ、いずれにしても。
だもんでそのつもりで読んで下されまし。わたしも自分が主役な人間なのですわ。はは。

ちなみに、この日のランチは、予約時間どおりにテーブルが空かなかったせいか、バーカウンターで頼んだカクテル計2杯(計30ドル相当)とかデザートに付けた紅茶とか、ぜんぜんビルに付いてませんでした。ジャン・ジョルジュお知り合い値段ってことか。したがってお値段は2人で料理各55ドル、白ワイン(nigl=ニーグルと読むオーストリアのワイン。安くてうまいの)55ドル、それに発泡水代と税金とチップ合わせて213ドル払いました。ランチはお得っていうけど、料理の55ドルだってキャビア出してこれはないわね。ぜったい1皿分くらいおまけしてくれてるね。

というわけで、かなり満腹・満足で出てきてもまだ空は4時45分の春の明るさでした。

March 02, 2007

カンテサンス

07-02-26
フレンチ(キュイジーヌ・コンテンポレーヌというらしい)
Quintessence

東京都港区白金台5-4-7
03-5791-3715

Danchu の小山薫堂さんというひとや日本のいあゆるグルメライターたちが絶賛しているので、そういうひとたちの「!」という表記がどういうものなのかを知りたくてお料理上手な鉄人主婦のみっちゃんとデートを兼ねて伺ってきました。白金台のプラチナ通りからちょっと斜めに入ったビルの1階にあります。スタッフは笑顔でとても感じがよく、店もゆったりと35席ほどしかないんでしょうか、ずいぶんと贅沢な気分にさせてくれます。

さて料理はお任せで15750円のコース(といってもメニューは白紙で、何が出てくるのかわからないという演出を施されています)。ワインペアリングで12000円。サービス料やコーヒー、水代を入れて2人で63000円もかかってしまいました。で、結論を先に言うと、33歳の岸田周三シェフは才気にあふれていて、さまざまな素材をさまざまに工夫して出してくれます。ただし、それらはどうもまだ「料理」になっていない。一皿一皿が「料理」のコンポーネント、エレメント、要素、部品、という感じで供されて、一皿としての全体像というか統合感とかいうところにまで行っていないのですね。

うーん、難しいな。どういえばわかってもらえるか。例えば、これはわたしも美味しいなあと思った「山羊のミルクのババロワに削ったアーモンドと百合根を載せ、フルール・ド・セルをぱらぱらして、そこにものすごくグリーニーなEVOOを垂らす」、という一品があって、これはまあそのオリーブオイルを味合わせるには最高なんだろうけど、でも料理かというとなんか違うような気がする。これはお料理の途中で「ほら、これ!」といわれてひょいとスプーンで味見をする、そんな途中経過みたいな、楽屋話みたいな、そんな感じが否めないのです。

いつもブーレイとの比較で申し訳ないけど、この山羊ミルクのババロワは、ブーレイではきっとアミューズのグラスになんかいろいろ組み合わせたもののうえにほわっと載っているもの、でしかない。そこから始まってスプーンで下に行くとまた別の何かが控えている、そういう料理になるんだ。

つまり、一皿に8手も9手もかかっていてそれの全体が統合された宇宙を提示する。複雑でいて、かつ素材のシンプルネスがバッティングすることなく共存している。したがって、客である私は食べ終わるまでその全体像を把握できない。
でも、ここカンテサンスではこれは3手で終わりなんです。わかっちゃうんだ。で、コストパフォーマンスとして、この日はデザート4皿を含めて13皿が出たんですけど、なんだか実際にはあれとこれを一つに盛り合わせれば料理3皿とデザート1皿、って感じなんですね。印象として。いや、量が少ないとかという話じゃないんです。なんちゅうか、皿の上に宇宙がない。皿の上に物語がない。皿の上に、ただ若くて痩せたメッッセージだけが載っている。

それが、素材をシンプルに、という哲学ならば、それはその好き嫌いの話になります。

では一品一品を取り上げましょうか。

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最初のアミューズとして茸のビスケットなるものが出てきます。薄切りした椎茸でしょうか、それをフリーズドドライめいた食感に乾燥させ、ポルチーニパウダーでまぶしてあるのかな。下にはほかの茸をクリーム状にしてビスキュイと挟んでいる。指でつまんで口に入れるとポルチーニの香りが広がって、アミューズとしてなかなかよい出だしです。もっとも、どうして2月後半に茸なのか、という疑問は残りますけどね。

次は人参の冷たいスープです
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これも人参の風味がとてもよく、さわやかです。この倍の分量があってもうれしいな、といううまさです。

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ここで山羊乳のババロワが出てきます。すばらしいEVOOです。訊けば岸田さんが修業していたパリの「アストランス」で使っていたオイルだそうです。これをいかに味わわせるか、その結論がババロワだったんでしょうね。わたしも自宅では、リコッタチーズに美味しいオリーブオイルをぶっかけてフルール・ド・セルとクラックした黒胡椒を散らして夜食にしたりしている。ま、同じ発想です。日本じゃリコッタが高いから、カッテージチーズに上等なオリーブオイルをかけても同じ感じになります。ただ、これはEVOOを味わうためのものだけど、じつは上に載っていた百合根がうまかった!(これは「!」が付きます) 百合根って、そうね、卵とかにも合うんだから、クリームにも合うはずだわ。

次はフォワグラと赤ビーツのミルフィーユ?
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添えはフェンネルの薄切りです。長ひょろいのはリンゴ。まだ冷たい前菜です。これはそんなにうまくなかった。フォワグラのパテがちょっと生臭い。もっとビーツを増やすかフェンネルを柑橘系で酸っぱくして添えたほうがよいでしょう。

温かい皿の1つ目がホタテと蕎麦の実の料理。
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これね、もっとうまくなるはずです。左のがホタテの貝柱に砕いた蕎麦の実をくっつけて焼いたもの。そばがカリカリに香ばしく、ホタテは限りなく甘い。でも、その甘さをカットするものがないから、一口目で食い飽きる。だらっとした甘さだけが残る料理になってしまう。酸味、あるいは辛味、なにか、もう1次元ほしい。甘さには普通は酸味ですけどね。
となりのは蕎麦の実のリゾットなんだけど、これもだらっとしている。ごっそり黒こしょうを入れてカルボナーラ風にするとか、青ネギを刻んで混ぜ込むとかしないと、うまさが立ち上がりません。

次はアンディーブのグリエかブレゼか、それに唐墨を削ったんですね。
うーむ、これ、付け合わせでしかないような気がします。唐墨の意味が判りません。アンディーブの苦さに、唐墨のほのかな苦さを重ねてみたのかなあ? これをするなら、アンディーブじゃなくて大根にしたらどうだろう。唐墨大根ってのが日本にあるんだから、その生の大根を焼いてみる、とか。
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次は的鯛(マトウダイ)。
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向こう側は法蓮草のピュレ。
手前はインゲン(フレンチビーンズ)の上に春菊の泡のソース。
世のグルメ評論家はここの魚の焼き方を「断面に目が釘づけになりました! なんと! 虹色に光輝いているのです! 火を入れていると、ほんの一瞬だけ虹色に光を放つ瞬間があるらしいのですが、それを当たり前の如くやってのけるシェフの腕には感心させられますね。」と書いてるひともいます。でも、どうなんでしょう。もっと低温で柔らかく焼けるはずです。日本では刺身を食べるくせに、焼き魚はかなり火を通してしまう傾向があります。もっとも、これはソースではなく塩(フルール・ド・セル)で食べさせるので、どうしても日本の焼き魚に近くなってしまうのかもしれない。惜しいです。

次は鴨。
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一羽丸まんまをローストして切り分けていて、中まで均一にきちんと焼けています、とメートルディが説明してくれました。向こう側はポロネギ。ソースは赤ワインとチョコレート。うーん、ゴードン・ラムジーのチョコレートソースが秀逸だっただけに、なんだか中途半端なソースでした。一般的に、ソース、弱いかもなあ、ここ。

で、料理の最後はデザートへのつなぎとしてモレーユ・マッシュルームのソテーにヴァン・ジョーヌ(黄色いワインという意味の強精ワイン)風味のチーズのコンテ。写真撮るの忘れて食べた途中のものです。ま、ふつうですね、これ。
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デザートはマールのソルベにイチゴのタルトのデコンストラクシオン、そしてキャラメルのマシュマロでした。イチゴのタルトの茶色いのが、生地部分を液体状にしたもの。青い葉っぱはマージョラムでした。キャラメルのマシュマロにはバラの花びらの味のシロップが添えてあった。
マールのソルベ.JPG
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キャラメルのマシュマロ.JPG

で、最後に出てきたのがメレンゲのソルベです。これ、うまかったなあ。メレンゲを作ってそれを砕いてソルベにした。ピンクのはルバーブです。アメリカではよくパイにする酸っぱい茎野菜。
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というわけで、☆は一つです。
今後は、ここから物語を組み立てていくことを期待します。
ウェイティングはにこやかで好感でした。客リストをつくっていて、同じ客に同じものを出さないようにしているそうです。

January 17, 2007

Gordon Ramsey at the London

2007-01-16
フレンチ
ゴードン・ラムゼイ(ザ・ロンドン・ホテルNY)
☆☆☆
151 W. 54th St. (btwn/5th & 6th Ave.)
Manhattan, New York
TEL ; 212-468-8888

ロンドンの三ツ星レストランが昨年11月にその名も「ザ・ロンドン」というニューヨークのホテルにやってきました。ここは以前、リーガ・ロイヤルというホテルだったのを改装改名したものです。ホテルを入ると右側にバーがあって、そこからさらに左奥にダイニングルームが扉を隔てて設けられています。ダイニングスペース自体はかなりこじんまりとしています。40席ちょっとでしょうか。四角く窓もなく、でもテーブルもゆったりと置いてあるし天井も高いのでなんとなくコージーな感じで悪くありません。壁の仕掛けもちょっと面白いです。パネルがね、羽根板のようにくるっと回転して、昼と夜とで雰囲気をがらっと変えられるんですって。有名なデザイナー、David Collins のデザインですって。

ひょんなことから友達のダニエルちゃんの予約に充当される形で2人でお食事です。この日はマンハッタン、この冬初めて零下で、ちゃんと冬でした。

それはさておき、席に着いて最初に「カナッペ」と称してトーストしたフレンチブレッドにクリームチーズに黒トリュフのピュレを混ぜたムース、それとおなじく手前のがなんか緑色してるけど何のムースだったっけ、これはたいして印象に残りませんでした。クリームチーズにトリュフはうちのパーティーでも今度作ろうっと。
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メニューは「プレステージ」という7皿のコース料理の他は、ヴェジタリアン用の「プレステージ」、そしてあとはアラカルトしかありません。プレステージは110ドルです。アラカルトも前菜とメインが1ページずつです。そんなに品数は多くありません。どうしようか迷って、でも最初だからふたりともコース料理にしました。

アミューズは「BLT」ですって置かれたのが、トマトウォーターのジェリーの上にレタスのフォームを載せ、その上にベーコンチップやキャラメライズド・オニオンを載っけたものです。いわゆるデコンストラクシオン(脱構築)ですね。

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まあ、こんなものかなと思ったのですが、次に出てきたもので、あ、おいしいな、って思い始めました。
それがこれです。

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フォワグラと鴨肉のテリーヌです。周りの野菜がピクルしてあります。これが野菜の味がしっかりとしてておいしいの。もちろんフォワグラもそれを固めているジェリーがいい感じなのです。野菜は人参でしょ、フレンチストリングビーンでしょ、カリフラワー、そしてオニオンクリーム。そこに茶色いのはポルトのソース。このピクルドの野菜はパリのル・サンクで食べたのに似ています。しっかりしてて、でも野菜、って感じ。それがフォワグラと鴨肉の重さに果敢に切り込んで(とはいっても量がちょっとだからそんな大げさなもんじゃなくて、舌の上での小さな戦い、って感じで微笑ましい)いくのですね。それに、この盛りつけ、かわいくない?

次はね、ロブスター・ラヴィオリにセロリルートのクリーム、貝のヴィネグレットソース、それで下にはサヴォイかしら、緑色のキャベツが敷いてありました。
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これもこのキャベツがしっかりキャベツの味がしておいしいの。で、ラヴィオリはロブスターだけじゃなくて、聞いたらサーモンと手長エビも入ってると。そしてこれをイタリアンでも中華でもないものにしてるのが、ハーブとしてチャービルを入れてるところでした。なるほどね、いいね、この「はは〜あ」感。

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次はブラックシーバスだから黒鱸?。んで、写真はソースのアーティチョークのヴルーテをかけてるところですね。緑色はジュリエンヌしたバジルです。写真ではアーティチョークのダイスも見えますね。赤いのはローストしたレッドベルペッパーだと思う。そんで、ここにもベーコンのビッツがちょっと混じってて、いい感じのコクを与えています。で、うまいの。ほんと。味も、濃いというのとはちょっと違って、なんていうのかなあ、アグレッシブなんだけど、オフェンシブではない? 積極的だけど攻撃してくるようではない。なんか不思議です。これがきっとゴードン・ラムゼイの特徴なんじゃないでしょうか? イギリス人ですよ、フランス人ではないイギリス人としてのフランス料理。なんか、きっと葛藤の末に見つけた道、みたいな感じがします。

ここで肉料理に移ります。ダニエルちゃんはヴェニスン(鹿肉)を頼み、わたしはでは、ということで残ったチョイスのラムを頼みました。

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ダニエルの鹿肉は、これは定番でもありますがチョコレートのソースでした。味見させてもらいました。あ、これ、ブーレイでも昔々、食べたことがあるって感じた。すっごく似ている。でもチョコレートの味がこっちの方が濃くて、こっちのほうがひょっとしたらおいしいかも。で、お肉の下にはビーツとセップ茸(ポルチーニ)が敷いてあった。このビーツもおいしい。ソースをかけたら周りのポテトピュレかな、花びらみたいできれいです。

わたしのラムローストは、これがマージョラム風味のジュ(肉汁ソース)でした。

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いや、うまいんだ、これが。
ラムって、ふつうはミントとかローズマリーとかあとは中東って感じのクミンとかがお決まりのハーブ及びスパイスですが、マージョラムです。マージョラムって、オレガノの親戚だけど、ドイツのソーセージとかに入れるハーブね。ミント系の香草だけどオレガノよりもなんか、もっと抹香臭いっていうか、もうちょっとお線香みたいな(あまり食欲をそそらないけど)、そういう珍しい味がしました、このソース。で、まさにさっきも触れた、果敢に迫ってくるけど攻撃的ではない、という感じの肉料理なのです。下にはタマネギのピュレだな。真ん中はロマーノレタスみたいなパクチョイみたいな。左の赤いのはトマトコンフィ、その下にはラムのコンフィ。向う側はクミン風味のなすび。

わたし、ふつう、肉料理にはそんなに感心したことがないのですが、ここは肉もとてもうまいというか、感心させてくれます。また来たいなあ、ほんと。でも、メニューが少ないから、来週また、ってなったら同じコースを食べることになるんだろうか? その日その日のシェフズメニューもないし。

きっと、まだ2カ月ほどのこのレストラン、シェフ・ラムゼイの準備したレシピどおりにやっているんだと思います。ちなみにここのエグゼキュテヴ・シェフはニール・ファーガソンという、30くらいかなあ、若いシェフです。(食事終わってから厨房に通してくれました)。東京のウェブサイトを覗いてみたらおなじようなメニューもあったんで、やはりレシピどおりでやってるんだろうね。
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で、食後はチーズと口直しデザートのチョイスがあります。
これは見ても分るとおり、チーズのほうがずっとお得(笑)。ともするとおまけして大盛りにしてくれたのかもしれないけど。
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口直しはローストしたパイナップルに砂糖コートしたシラントロ(香菜)。これはよくある組み合わせです。

で、本番デザートはアプリコットのスフレ。アマレットアイスクリーム添え。アイスだけじゃなくスフレのほうもアマレットというかアーモンドエクストラクトの香りにあふれておりました。

この日はそんなに込んでいなかったせいかウェイティングスタッフもとてもフレンドリーで、じつに満足できた夜でした。
ゴードン・ラムゼイ(ニューヨークではゴーゾン・ラムズィーと発音するけど)、わたしにイギリス人の料理を見直させました。また来たいです。そのときにニール・ファーガソンがどれだけレパートリーの中で遊んでくれるか。そしてそれがいかほどのものか(シェフとスーシェフって、じつは雲泥の差があるんですよね)。

メニューがもっと充実したら、ここはトップレストランの1つになるでしょう。
こりゃ、ロンドンに行ってみないとだめかしら。

ワインはニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン(50ドル)と、スペインのリョハでプロピエダード・レモンド2003年(75ドル)。この赤が美味かった。
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税金とチップを含めて、1人210ドルくらいでした。大満足。

January 03, 2007

Danube

2006-12-27
フレンチ-オーストリア料理
ダヌーブ
☆☆
30 Hudson St. (TriBeCa)
Manhattan, NY.
TEL ; 212-791-3771

「ダヌーブ」もしくは「ダニューブ」と発音します。オーストラリアを流れるドナウ川の英語読みです。1999年、デイヴィッド・ブーレイがオーストリア料理の潜在的な可能性(というか、まあ、NYに新しいものを紹介したいという彼の志向の一環でしょうが)を引き出そうと、当時弱冠26歳だったマリオ・ロニンガーというなかなかのシェフを連れてきて出した店です。開店当時はこのマリオの才気がブーレイを彩ってとてもおいしかった。ところがこのマリオが2003年に辞めてオーストリアに帰ってしまう。それからダヌーブはシェフがいないという困ったことになりました。裏話をすると、厨房ではマリオとブーレイがその前年に出版した"East of Paris"という料理本を参考書にしてその日その日の料理をつくっていたわけです。

で、このときにダヌーブの味はどんどん落ちていきました。味は濃くなるし、バリエーションはなくなる。何年かぶりに訪れても同じものしか出していない。しかし2005年のミシュランNYはそんなダヌーブに2つ星を与えるのです。ミシュランは、どちらかというと味よりも格式みたいなものを重んじる傾向があるんじゃないかと思います。その点では、ダヌーブはサービスはフレンドリーながら内装もオーストリアの画家クリムトをテーマに黄金色を多用した立派なものですし、建物もしっかりしている。きっとそういうことで2つ星だったのでしょう。

ところで、そのときの暫定シェフが昨年春にとつぜん辞めました。で、次のシェフに抜擢されたのがクリス・ラモンというNY出身の20代の若者でした。そのクリスが、ぜひきちんと食べにきてくれと言うので、この日の夜に行ってみたのが今回の食事でした。

もちろん、これはダヌーブでいつも出される料理とは少し違うでしょう。私たちが4人で食べたこの日の皿はなによりオーストリアの感じがあまりしません。しかもシェフが頑張って作った特別料理です。ですのでふつうにここに食べにいくのにあまり参考にならないかもしれません。しかし、いえることは、料理の基調音というのでしょうか、いちばん基本として流れている土台みたいなものの和音が、とてもおいしくやさしい、ということです。もっと簡単にいうと、まあ、塩味なんですけどね、これがとてもいいので料理が、どんなアクセントをつけようと、あるいは肉料理の強いソースでも、そんなに押し付けがましくならないのです。

きっとこれは彼の作るどの料理でも同じように流れているハーモニーだと思います。ですので、ここはお薦めです。ダイニングスペースはそんなに大きくないしゆったりとしたテーブルは位置ですので、クリスが差配するのに無理は生じないはずです。わたしはここで☆2つとしましたが、これはあくまで控えめな評価です。鮨屋と同じでなじみになれば出てくるものは違う。これは本来は料理店としてはいけないのでしょうが、近所の小料理屋だと思えば赦せるし、その方がうれしい。つまり身内評価と思われるかもしれない☆☆☆をぐっと我慢して、敢えての☆☆。これならだれが行っても文句はいわないだろうとの読みです。

最初のアミューズとして出てきたのは、ちょっと聞きそびれたのですが、砂肝みたいなエスカルゴみたいなそんな食感の何かの上にウニのソースが載っていたもの。下にはオランデーズみたいな柔らかなソースが敷いてありました。とてもやさしい幕開けです。

これはほんのちょっぴりですが、ローステッドダックのスープ。5種類の冬のスパイス入り、だそう。泡のスープで、真ん中にそのローストした鴨のレアな肉がひとすじ置いてあります。スパイスは種子系です。スターアニスとかクローブとかコリアンダーとかでしょう。でもぜんぜん重くならないの。おいしいです。うれしくなります。

これはスズキの、きっとポーチでしょうか。ほわほわです。下に、セロリルーツのピュレとソテーしたリーク(ポロ葱)が敷いてあって、ソースはいまの季節に出回っているタンジェリン(みかんですね)。この絶妙な酸味と甘味がクリームのようにとろとろに調和しています。どこがオーストリアなのでしょう、という突っ込みはナシです。うまいんだから。

ロブスターにはリンゴの角切りを合わせてきました。ロブスター・ビスクのソースです。下のピュレは何のピュレだったかなあ。これもフルーツの酸味で重くない。この辺はブーレイの影響でしょう。爪を立てたプレゼンテーションも考えてますわな。(写真撮ってるって聞いたからと、あとで言ってきました)


肉料理に行く前に赤ビーツのラビオリです。中にはカボチャとオーストリアの濃厚なチーズが入っていました。赤キャベツのソースだとか言っていたかなあ。真ん中の緑は何だったっけ? おいしくて忘れた。ほんと、見た目のどぎつさとは裏腹に、すごくよくまとまっている完成品の印象があります。これはきっとダヌーブのこの冬の定番料理だと思います。こういうラビオリを前にも食べたことがありますから。そのときは香ばしいカボチャのタネのオイルのソースでした。それもおいしかったです。

肉の一品目はコロラド産のラムでした。白と黒の胡麻をまぶしてソテーおよびロースト、それで切り分けた。この胡麻の香ばしいこと。それがラムの香味として合うんだなあ。こんなバランスの取り方があるとは知りませんでした。下には茸のソテーが敷いてあります。

で、お次はワイルドグース。野生の雁です。ジビエです。これをスロークックした。で、ブラックカラントみたいなベリーのコンディメントと肉のソースで食わせる。定番ですが、そこに緑の枝豆の煮たのを添えて、シェフは日本人の私たちに表敬をしたわけだと受け取りました。うれしいねえ。しかもこの枝豆が肉の重さのバッファとなって、いわゆる箸休めね、そういう役目を果たしてくれて、単なる飾りではないところがいい。

ほんとは上記の野生の雁で終わりだったそうなんですが、どうせならこれも食ってよと出してきたのが鹿肉とフォワグラです。しかもけっこう量があるの。しかもパスタ添え。何のヌードルだったか……いや参りました。まずいはずがないが、これで腹はち切れそう。ひー。

お口直しのオレンジとヨーグルトのソルベ。ベリーのソース。


デザートの最初はバニラのアイスクリームにメレンゲのなんか。忘れた。
しかも、写真撮るの忘れたけど、このあとに焼き菓子であるチョコレートのケーキとかスフレも出たわけで。

はい、大変満足致しました。
ワインも、しこたま飲みました。
驚くくらいおいしかったのは
カリフォルニアのサンタ・ルチアのピノノワール。
ワイナリーとヴィンテージ、忘れてます。
後ほど確認の上。

September 13, 2006

ランファン・キ・レーヴ

2006-9-6
ランファン・キ・レーヴ
☆なし
〒007-0880 札幌市東区丘珠町604-1
モエレ沼公園ガラスのピラミッド内
TEL 011-791-3255

L'enfant qui reve、つまり英語では The child who dreams「夢見るあの子」って感じの意味ですね。le (the) と定冠詞なのが訳しづらいところ。そういう謂いがフランスにはあるのかしら?

ここは札幌から20分、な〜んにもないところに出現したイサム・ノグチのデザインとなる公園のなかにあるしゃれたレストランです。いろんな人から勧められて、ランチに母親、叔父夫婦を連れて行ってまいりました。

アミューズはどういう順番で食べればいいのか、コーンポタージュでしょ、キッシュでしょ、さんまのマリネでしょ、それで、もう一品、忘れた。ちっちゃな皿やグラスに盛られて、4人分をポンと出してきて、みんなで取って食す。

で、前菜に入ると、スモークサーモン、北海道の何とかカボチャでしょ、ポロネギの茹でてアスパラみたいな味と食感になったやつでしょ、エビをズッキーニで巻いたやつでしょ、あと、なんかの天ぷら(これも忘れた)。

次は海のものね。これはホッキ貝のソテー。とてもよい焼き具合。それに野菜のグリエ。


次はスープと来ました。前日のテルツィーナでも食した柳の舞っていう名前の白身魚のグリエしたのを沈めて、上に舞茸を載せ、そんで魚のフュメを注ぐという趣向。

主菜は鴨でした。山わさびのソースというかコンディメントをかけて、下には焼き葱という定番。

そんで、デセール。白ぶどうの実とジェルの上に赤ぶどうのソルベを載せたもので、じつはこれがいちばんうまかったです。

っていう書き方でわかると思いますが、料理は可もなく不可もなく、予想した味が予想したとおりに舌に載る、というふうで、安心して食べられます。フレンチというより、料理としてはもっと素朴なイタリアンのアプローチに近いかな。まあ、雰囲気もあわせるとこれで上々というべきでしょうね。

しかしダメなのです、この店。何がダメかって、ここのウェイティングスタッフです。

ちっとも微笑まない。料理の描写がぞんざい。なんだかすごく無愛想で、わざとじゃないんだけど、木で鼻をくくったような、というか、というより力量、器量の問題なんだろうなあ、アルバイトなんだ。応対が、プロじゃないのです。

料理がこのレベルだったら言葉一つで客を上機嫌にもできるはず。そんで笑顔一つで☆半分追加ですよ。ちょうど、そうやって言葉で飾ってやれば☆1つ、言葉がなければ☆なし、というそんな境界線上にある料理なのです。大きな窓の向こうには広大な自然が広がり、青空には雲までもが力を持って描かれている。そういう最高のロケーションおよびシチュエーションで、この客対応はないよなあ。

それともうひとつ。あの、くだらないフラットウエアはやめるべきです。見た目はかっこいいけど、柄も刃も細すぎて使っていて手の中でくるくる回っちゃう。バカげたデザインのナイフとフォーク。大量に揃えて買っちゃったからしょうがなく使ってるんでしょうがねえ。


ということで今回の訪問を基にした判断では、結果的にはちっとも面白くない、スタイルだけがおしゃれなレストランでした。
行きたい人は行って、という感じです。
じつにもったいない。
夜はもっとプロが応対してくれるのかしら?

August 27, 2006

Le Cinq(ル・サンク)

2006-8-26
Le Cinq(ル・サンク)
☆☆☆

31, avenue George V,
75008 Paris,
France
TEL 33 (0) 1 49 52 70 00

泣く子も黙るル・サンクに、8月の夏休みでどこも開いてなくてやっと予約が取れたランチで行ってきました。ご存じミシュランの3ツ星レストランです。ここに来ると、ミシュラン3ツ星というものの持つ意味がよくわかります。味やサービスは当たり前ですが、レストランそのものの持つ格調というのか、面構え、佇まいが違う。凛としていて、従業員みんながどうにかここを一生懸命素晴らしい店にしようと努力しているのが伝わってくる。その意気と格調がDNAの二重らせんみたいになってるんだなあ(ってわかるかね、この比喩?)

でね、素晴らしい応対というのがどういうものかを教えてくれるの。
ここのウェイティングスタッフと話をしていると、客との間合いの取り方がなんともいえず絶妙なんですね。上質な人間が、上質な教育を受けて、気取られないように客の顔を読んでいる。みごとなもんですわ。まあ、それだけのことをするプロとしての金を貰っているという矜持もあるんでしょう。

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テーブルセッティング。バターは有塩と無塩で、もっちりと粘質。オリーブオイルは2006年産の新物。スパイシーでグリーニー(青臭い)でおいしいでした。

さて料理はじつに堅実なものです。ホテルのレストランという性格でもあるんでしょうが、絶対に文句は出ない、出させない、という作り方をしている。これも客への応対と似ていて、とにかく減点される要素を徹底的に排除するという手法なんですね。その意味では面白さに欠けるともいえるけれど、ここの常連には面白さよりもこの(特級の)確実さ、(特級の)安心さ、(特級の)日常さ、を求めるともなく求めているひとが多いのでしょう。面白いものを求めるひとはもちろんここには来ないのかもね。もっと尖ったところに行く。ガニエールとかね。

この日のムニュは、それぞれにグラスのワインを合わせてもらいました。

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アミューズはトマトのコンフィテュール(タマネギとバジルをアクセントにしてとろとろに煮込んだもの)を添えたツナとオリーブのケーキ。ケーキといっても薄くて小さなスライスが2枚、これ、もすこし粉が少なければキシュになるくらいに卵の香りが高くて、ツナとオリーブがなんだか田舎っぽい懐かしい味で和ませてくれるって趣向っすね。しかし、この卵自体、そのままですっげえうまいやつなんだろーなあ。

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1皿目はタイのカルパッチョと称していたけど、出てきたのはソールでした。それがね、フグの薄造りみたいにして、きっと叩いて薄く伸して丸く切り取ったんだろうね、その下には皿の絵柄じゃなくて、オゼイユ(日本でいうスカンポの葉っぱです)とかセルフィーユとかの緑のものを散らしてそれが透けるようにしてあるの。魚は変わるけどル・サンクの定番です。日本料理だねえ。で、うえに一直線にクレームフレッシュと野菜のエスカベーシュ(なんてあるのかしら? そう説明されたけど)を引いて、レモンゼストもちょっと散らしてきれいですわー。そんでもってフルール・ド・セルをぱらぱらとやってカリカリと歯を楽しませる仕組み。完成品です。これ以上どうにもならない。

これにはブラン・ド・ブランのドミセックを。

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2品目はラビオリっていうんだけど、これも手が込んでる。うーん、スクィッド(小さなヤリイカ)のフリカッセとタジーヌの野菜をベッドにして、そのうえにラングスティーン(手長エビ)のラザーニアがのっかる。で、ソースはやはりラングスティーンのだしのリダクション。それをシトラスやコリアンダーでカットして注ぎ、さらに最後にアリサ・ソースをのっけてた。これ、Harissaというチュニジアあたりのピリッと辛いソースってか調味料のことです。

これにはオーストラリア・マーガレットリバーのセミヨンとソーヴィニヨン・ブランのブレンドでCullenっていう白。木の香りのするいいワインでした。

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3皿目はほわほわのタラのロースト。泡のフュメ(だし)のソースなんだけど、生のアーティチョークが薄切りになって付いてくるの。生のアーティチョークは初めて。漬け水のレモンの香りが残っていて、その酸味もうまい具合にソースに移って、おいしうございました。

これにはブルゴーニュのムルソー。Cote de Beaune 2003. J.M. Boillot, Eau Marc. いっしょに行ったワイン通のパトリスは2002年のほうがベターだと言っておりました。つまり、2003年は比してミネラル感が多すぎるのかな? でもムルソーはうまいわね、いつも。

お肉は、わたしとパトちゃんは子牛を頼みました。
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パトリスの嫁さんのマナエちゃんはラムです。
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お肉のナイフ、切れませんでした。これだけがこの日の減点。へへ、めっけ。
そんで、ラムの付け合わせの野菜の酢漬けがうまいのなんのって。子牛のほうも付け合わせの野菜が抜群にうまい。フランスって、すごい国だわ。
で、ウェイターにそう感動を伝えると、「日本の方はみなさんポテトピュレのほうに感心なさいますが、そちらはいかがですか?」っていわれました。うん、もちろんポテトピュレおいしいんだけど、これ、わたし、ブーレイで14年前から喰ってるんです。そういや14年前は顎が落ちるくらいびっくりしたもんなあ、たしかに。

これにはClos du Marqui 1999, St. Julienですね。

いやいや、上質で素敵なランチでした。デセールにはお茶のマスターがいてね、ワゴンでサービスしてくれるの。このひとね、右手が不自由なんだけど、それも普通に働いて客たちも普通にサービスされてる。
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この普通のレヴェルの上質さ、それがル・サンクのル・サンクたる所以なんでしょうな。

お値段は、ワインとチップを含めて、3人で500EUROくらいでした。75000円か。高いですわ。うん、かなり高い。ディナーじゃないんだよん。さて、ニホン人、高くてもありがたくいただきましたってことでしょうか。でも、ほんと、☆3つの味です。でも、高すぎですわね。

フランス、ユーロになってからものみな高しだとマナエちゃんがいってました。

March 04, 2006

Bouley

2006-03-03
Bouley
☆☆☆☆

120 West Broadway, NY., NY
TEL 1-212-964-2525


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1)アミューズ;ゴートチーズのムースにマッシュルームのヨーク

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2)生ウニに青リンゴのソルベを載っけて、あのとろりとした泡のソースはなんだったっけかなあ。ポン酢が下に敷いてあったわん。

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3)これはルージェという地中海の赤い小さな魚を三枚におろしたやつを皮側をぱりぱりに焼いて、そんで、下にはラッキョみたいな小タマネギと、モレーユ・マッシュルーム(網傘茸)、そんでソースはロブスターとその焼いた殻でとったこれまた絶品の出汁ですね。うまかった。技の光る逸品でした。

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4)なんだか妙にうまい卵をポーチにしてそこにトリュフのソースをかけ、スペインの生ハムであるセラノの上物を置き、さらにぷりぷりのプローン(エビ)を添えて、そこにパルミジャーノを一枚削いで、そのうえに100年もののバルサミコをかけてみました。まずいわけねーだろが、ンニャロ! これでかつおちゃんの彼氏であるレジーはブッ飛び、以後、重病人のように唸ったりヤク中のように天を仰いだりしながら食べ続けるのでした。

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5)このイワシがまた、あーた、なんでしょ、わけわかりませんでした。口の中でとろけるニョッキといい、ソース自体、何ですか? 説明聴いてもわかりません。というか、説明聴いてもこんな味になるとは信じられないわけで。どうしてこんなにうまいの? イワシでしょ、だって、あーた。そうそう、このイワシのピュレみたいなソースにはほんのりとヴァニラが使ってあったのです。へええ、青魚の癖をヴァニラで中和させるなんて。まいった。

ここで私は思い出しました。
今夜はじつは、とても久しぶりにデイヴィッド・ブーレイその人がわれわれのためにキッチンに立って調理してくれたのでした。おもえば最近はずっとスーシェフに任せきりで、それも彼のレシピと指導で大したうまいのですが、それ、ちょっとちがうんです。思い出したのは、デイヴィッドの料理は、なんでこうなるのかわからない、一体感と統一感なんだわなあ。解析できないの。

で、

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6)牡蠣とシュリンプの蒸し物、オレンジソース
ひえー、ぽわぽわ。牡蠣はあくまで牡蠣っぽく、エビはエビの甘さをそのままに、この食感はなんでせう? 涙が出てきます。これは13年のブーレイ通いで最も新しいコンセプトでした。このエビはオイルに入れて低温で加熱したそうです。道理で味が逃げていないんだね。

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7)このあたりで私らは4人で4本目のワインに突入。酔っぱげてます。で、ナンタケットのブラックバスをなんかの出汁ソースで加熱トマトを下に敷いてピーを散らして出してくれた、ものすごい軽〜い、でも深〜い味だった。バスの火の通し加減も、そう、こうなんだよねえ、ブーレイって。生じゃないけど、わずかにタンパク質が変質し始めるそこんところで,ハイドーゾ。

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8)これはもう腹一杯だから肉料理は1つでいいよっていったら最後に出てきたもの。リー・ドー・ヴォーです。子牛の胸腺。そういや、ブーレイでリー・ド・ヴォー食べるの初めてです。下にはアスパラとなんかのグリーンのソースで、口にしたとたん、は? とっても懐かしい味がするのはどうして? 何が入ってるの? と思いを巡らすがわかりません。で、降参。訊くと、カルダモンだそう。つまり、カレーの一部を構成するスパイス。はあ〜、そうだ、そうだよ、こりゃ。周りのぐるりはバナナのピューレだよん。で、別盛りの皿で、ブーレイの有名なポテトピューレが出てきたわけです。

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このあとはデザート4皿でした。
バラの花びらのソルベとか。カレーのアイスクリームとか。
もう、極楽とはこのことです。
4人で食べて、このコースはシェフズメニューで1人135ドル。
ワイン4本。
サンセールから初めて、ニュージーランドのMatakanaワイナリーのピノグリを2本。
それで、ソムリエの勧めてくれたシラーズを勧められるままに。これもうまかった。
でもヨッパげてて覚えてないです。すんません。
で、830ドルくらいかな、ぜんぶで。
それでチップを入れて1000ドル払いました。
ひとり250ドル計算です。でも、ワイン1本ずつ飲んでこれだもん、日本の感覚じゃ信じられないくらい安いよね。

January 16, 2006

モレスク

2006-01-16
グリルも充実で、フレンチなのかイタリアンなのか
いわゆる看板のない業界人御用達のその筋で超有名なレストラン
モレスク

東京・港区白金台5-3-3
TEL 03-3445-2880

前菜
 ポロネギのマスタードヴィネグレット
 プンタレッラのアンチョビドレッシング

豚バラ肉の黒酢ソース煮込み
サバのスモークにキャベツとアンチョビのソテー
ジャガイモのトリュフ掛けバターヴェネグレットの温菜
豚肉のコンフィとセップ茸のソテー
ホワイトアスパラガスの半熟卵載せ
わさびのリゾット

2人で
生ビールとシャンペン1杯ずつ
グラスワイン(銘柄忘れた)
 サンセール3杯
 ムルソーのシャルドネ1杯
 ブルゴーニュの赤 2杯
食後酒(マール、グラッパ=オルネライヤ、自家製レモンチェッロ)
デザート(クレームなんとか=マスカルポーネかな? チーズ風味のほわほわクリームのカシスソース掛け)

また満腹っす。
ここはね、この日が3度目なんだけど、今日が一番美味しかった。
ドワを開けると山田くんと前田くんという、相似形の2人のウェイターがシンクロダンスのように振り返っていらっしゃいませといってくれるの。相似形と言っても山田くんはポッチャリ体型、前田くんはスリムなんだけど、雰囲気が絶妙によろしい。前田くん、27歳なんだって。そんで清潔感あふれるさわやかな若者、んで、なんかとってもかわいいの、って、料理ではなくスタッフを書いてどーする。料理は、これまたシェフが目元涼しげなイケメンで……。

えっと、ここの料理はわりと簡単です。素材さえ見つかればホームパーティーにすぐ応用できるような、そんな気の利いたヒントにあふれてます。奇を衒わないというか、とても素直な、肩の凝らない高級感というか、いや、やっぱり清潔感なんだろうな、ここは。

サバのスモークが美味しかったあ。
それとプンタレッラもよろし。プンタレッラって、イタリアのチコリの一種なんだろうね。苦みと根菜のようなコリコリした茎の食感が珍しい。こういう野菜、日本でも作ってるんだなあ。楽しいね。
セップ茸というのはイタリアではポルチーニね。それを豚のオイル煮込みというか、コンフィでちょっとカリカリ気味の切り身といっしょにさっとソテーするわけ。豚コンフィの塩加減と食感と、それがセップのむっちり感と相まって、いいねえ、大将。
それとわさびのリゾット。お米だけじゃなくて押し麦も入れていて、米のアルデンテと、押し麦のプクプクプリンとした食感の違いがこれまたいいんだ。上にのせた山盛りの大葉の千切りがまず口に広がるでしょ、そんでその奥からわさびの香りが立ち上ってくる。バックグラウンドにはふんだんなパルミジャーノのナッティーな甘さとしょっぱさ。絶品。でも、ほら、こうしてわかっちゃったらなんだか自分でも作れそうな感じがするでしょ。でもそれでもいいのです。美味しくて、しかもそういうちょっと啓蒙的っていうか、日常レヴェルでのほほうというお気づかせってのがうれしいじゃありませんか。

この日は締めて2人で34000円でした。
アラカルトはだいたい2000円前後、肉のグリルなどは2600円から3000円台ですね。2人で分けてちょうどよい分量で、いろいろと注文するのがよろし。

というわけで、今週土曜日のホームパーティーにはポロネギと豚肉の黒酢煮込みとこのわさびリゾットの3品を変形させてメニューに取り入れてみようと思いましゅ。

October 30, 2005

Bouley Upstairs/Ferran Adria del Bulli

2005-10-30
☆☆☆

今夜こそは行くまいと思っていたのに、ともだちのオサムちゃんが誕生日近いの、とかいうんで、あ、じゃ、行こ、とまたまたまたまたアップステアーズに行っちゃった。

破産状態。

例によって三上さんのすっげえ京都味の絶品和食が数品出て、つぎにデイヴィッドのわけのわからんタルタルが出て、うぇー、うっめえ、三上さん、これ、わかる?っていってみんなで分析しようと思って何が入ってるんだか探ったんだけど、タラゴン? or ミント? 松の実? マスタードシード? コリアンダーシード?(これは自信なし) もちろん黒胡椒だよね? でもけっきょく分析したって再現が出来るわけでもなく、あ、バルサミコね、でも、もうや〜めたってなって、いやあ、うまいねえ、すっごいねえ、っとだけで堪能していいんじゃないの? そうそう、下に敷いてあるのはパッションフルーツのピュレにフレッシュグリーンピーのさっと茹でたののみじん切りだぜ。これを和えるとまたうまいんだ。でも、こんなに重ねてるのにぜんぜん重くならない。三上さんも、うまいですね、これはぁ、とか言っちゃって。

っとかなんとか天国気分でいたら、ごちゃごちゃと夜の11時なのにうるさいご一行さまが入ってきて、ほしたらグリルにいたデイビッドがあらって顔をして出てきてみんなとご挨拶してるから、いったいどんなセレブがきたのかね? と思ったら、あ〜た、エル・ブリのフェラン・アドリアさまご一行さまだった。

え? エル・ブリ、もう休み期間?

ま、そんなことは関係ないけど、デイビッドが三上さんにこいつは友達ですごいシェフだから、とにかく日本料理を出してくれって頼んでるんだけど、三上さん、フェランなんて知らないから、へ? って顔。で、ま、すっご有名なスペインのレストランの創設者で、ブーレイで出る泡のソースもこいつの発案だってくらいなのって説明して、でも、三上さん、いつも出してるのを出したらおいしいに決まってるよ、とかエンカレッジして、いろいろブレインストーミングして出したら、フェランちゃん、もううんうんうなづきながら5品食べてた。時々両方の親指を突き上げてTwo Thumbs Upね。

よかったよかった。

んで、デビちゃんが私をフェランに紹介してくれて、フェランちゃん、英語ぜーんぜんしゃべれないの。でも、通訳を介してデビちゃんなんか私のことぐちゃぐちゃ言ってるから、そのうちになんだかよくわからんうちにフェランちゃんからじかにエルブリに招待されたわ。ま、口だけだろうけどさ、行ったら一品くらいは増えるかも。30皿が31皿に変わるくらい。ふむ。

でもおもしろかった。
3巨頭、相まみえる。
そのウィットネス、目撃証人さね。
三上さんの和食どうだった?って訊いたら、70行くらいしゃべってた。シンプルと思ってはいけない、このだしの深さは、とかなんとかのたまうんだけど、yeah, I knew, って。は、失礼。

でもいいなあ、このくらいのプロフェッショナルは。
私もそういう感動をひとに与えたいもんだ。

フェランは、やっぱ、面構えが違う。
デイビッド・ブーレイも、同じ。
三上さんも同じ。

にんげん、面構えね。
それが本日の結論。

October 10, 2005

Bouley Upstairs

2005-10-10 w/yoshie
Bouley Upstairs
☆☆☆☆
122 West Broadway NY., NY. USA
予約とらず


煮蚫の蚫煮汁と雲丹のソース
イタリアのママのズッキーニの酢漬けをニンニクとオイルで和えたものを刻み、真鯛の千切りといっしょに混ぜて
紋甲いかのウンベリア製プロシュート巻き&大根煮にマグロの脂身の炙り焼きをのせて酢みそを添えたもの
boiled skate & gnocchi with carrot & passion fruits sauce w/pomegranate, baby basil
sauteed bass and foie gras with truffle vinegar sauce & sliced baby green tomato
grilled swordfish with gin & red bell pepper sauce(?)
コーベビーフのブロイルの海苔ソース カボチャの煮付けを添えて


やっぱり、書き初めはここにしなくちゃならんだろうねえ。

おれはね、日本でバブルのときに新聞記者をしていて、まあ、適当に金はもらってたんだけど社会部記者だったもんで忙しくてさ、あんまりたいしたレストランなんか行かなかった。というか、時代って恐ろしいもんで、あのころ、80年代から90年代の初めにかけては、日本には、東京にさえ、おいしい地酒なんか出回っていなかったし、ワインなんて雲上の高級酒というか、バカ高かったから味もわかるほど飲めなかったわけさね。チーズに関しては何をか況や。

そんで、運あってニューヨークに来てさ、まあ、話せば長くなるけど、ワインは安いし、チーズは安いし、おまけにちょうどニューヨーク自体のグルメブームにかち合った幸運もあって、バルサミコなんてののうまさも初めて知って、オリーヴオイルとバルサミコだけでなんだって食べられるじゃん、とかって思ってたときに、知り合いのジュンコちゃんに、「おいしいところ、あるのよ。連れてってあげる」っていわれて、そんでトライベッカのBouleyってレストランに初めて連れて行ってもらったわけなのですよ。

緊張しましたねえ。なんせ、ジャケット着用でしょ、ネクタイなんかうまく締められないの、当時、おれ、自分では。

そしてさ,Duane Street にあった、昔のブーレイのね、厚く重い、大きな木製のドアを開けたらさ、箱入りの林檎が山になって積まれているの。そんでその香りが、ほわーんと清々しく我を包めり、なわけですよ。

4時間,あるいは5時間でしたね、シェフのお任せコース。
私が食べたのは、何だったのでしょう。地上のものではなかった、と思ったのは、それまでにちゃんとしたフレンチを食べたことがなかったから? いや、そんなことはないと思うんだ。美味いものは知ってたの。まずはうちの母親の美味いものはほんと美味くてね、それにB級グルメだって美味いものと美味くないものは知ってた。謙遜していわなかったが、一応高級料亭とかも役得で何度か行ったことがあるし、本格懐石だってフレンチだって日本では一応ちゃんとした一流店も知ってたわけですさ。

でも、違ったんです、このDavid Bouleyの作るもんは。なにからなにまで。
ジュンコちゃんはBouleyを知っていて、そんで、Davidもきっと自分で作って出してくれていたんだと思う。そのときも他のテーブルと出るものが微妙に違っていたから。ってか、当時、彼はほとんど毎日そうやって客ごとに特別な料理を出していたんだね。

で、毎月、通い始めました。
ずっと、1993年から、一時閉店の96年まで。
一度として同じものが出てきませんでした。
たった一度、なんだったけかなあ、魚かフォワグラか、焼き具合がなんだか違っていて、聞いたらDavidがいなくて別のスーシェフが焼いたんだってすまなそうにいわれた。そのときだけでした、出されたものに隙があったのは。

わからないのさ、なにがこういう味になっているのか。ソースがね。
まあ、果物と野菜のだしがキーなんだろうなあ。でも、食べてるうちに分析の意欲がへなへなと崩れ落ちて、美味さに身を委ねて陶酔してしまいたくなるの。

そんなかんなで13年。
で、本日も行ってきました。アップステアーズ。ブーレイ本店ではなくて、いま(2005年秋冬)はここでDavidがオープングリルの前に立って、客をオーディアンスに料理をしています。(2006年からはテストキッチンでやっていて、アップステアーズには深夜の客としてくるほうが多くなってますが)

先日、エリック・クラプトンが来てね、という話をDavidがうれしそうにするのだ。うれしそうなのはクラプトンが来たからじゃなくてね、クラプトンが、レコーディングのスタジオに籠っているとこれはおれの仕事じゃないって思うんだって言ったことがうれしかったらしい。おれにはオーディアンスが必要なんだ、って言うんですってよ。

Davidいわく、「そうなんだよ、オーディアンスがいることが必要なんだ。きみとか、エリックとか、他の常連のあの人とかこの人とか」って、そうかそうか、クラプトンもDavid Bouleyのオーディアンスなんだよね。一流ってのは、一流を相手にその話を自分の話にして喰ってしまうんだわのう。

いまアップステアーズには和食のNYトップである三上忠夫さんが寿司カウンターに入っていて、従って冒頭のようなメニューとなります。きょう面白かったのは、三上さんが出していると、Davidがやってきて、そろそろおれにも出させろと言って来ること。店に入ったときは「きょうはハンバーガーとピザを作ってやる」と、これまたいままで食べたことのないものを料理してやろうぞ、という顔だったのに、三上さんの出すものを見て3品とも魚にして来たのが面白かった。張り合ってるんだもんね、おたがい。クソっ,そう来るか、とかいって。

ああ、客冥利に尽きるなあ。これ以上、何を望めるレストランがこの世に存在するのだろうか。

料理はスッゲエが、サービスは混乱中。