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Shall We Dance?

リチャード・ギアの米国版を見てきました。なんとも、オリジナルの周防監督版にとても敬意を払ったつくり方で、しかもいい意味で米国映画で、とてもよかったです。

周防版を見たときにどこかに書いたのですが、この「Shall We ダンス?」はじつは本質的にカミングアウト映画でした。社交ダンスをやっていることが恥ずかしいことでどうしても周りにいえない。それをそんなことはない、恥ずかしいなんていうのは変だ、とだんだんと自信を持ってくる。そうして最後の大団円、大カムアウトへと向かうわけですね。カムアウトというのが、英語では社交界へのデビューという意味があるのも面白い符合ですが、まあ、それは周防さんの意図したところではないでしょうけれど。

さて、アメリカ版はおそらくそのカムアウトの部分を腑分けしたのだと思います。社交ダンスが、そんなに日本ほどは恥ずかしいものではない環境で、これはカミングアウト映画というよりラブストーリーにする必要があった。そこで、カミングアウトの部分はしっかりとゲイの伏線、といいますか、ゲイのサイドストーリーを用意してそれに任せることにして、主たるストーリーラインはリチャード・ギアと奥さん役のスーザン・サランドンの結婚生活を基盤にして進めて行く、いや、というより、最終的に結婚生活にフォーカスするように進めて行く、という感じです。

アメリカ映画ですから、日本映画にあった言葉ではないニュアンスのやりとりはより明確に言葉や態度や行動でスクリーン上に示されるようになります。それでとてもメリハリの利いた映画になりました。

それでいて全体の雰囲気は周防版とそっくりなのです。なにせリチャード・ギアだって役所広司に似ている。いっしょにダンスを習う、なんでしたっけ、あの濃い俳優、そうそう、竹中直人、それにおでぶちゃんのコメディアンがやった役も、渡辺えり子の役もそっくりアメリカ版で取り入れられています。ダンス教室のオーナーのおばちゃん先生もなんだか不思議に似ています。草刈民代はジェイ・ローに置き換わっていて、あ、これはイメージが違うなと思っていたのですが、そのジェイ・ローがずいぶんと抑えた演技をしていて、これもなかなかよかった。

私立探偵に夫の素行調査を依頼するスーザン・サランドンが「人はどうして結婚するのか知ってる?」と自問するくだりがあります。そのセリフを聴いていて泣けてしまいました。そうだよなあ、と、ざらついた心を反省したい、そんな感じ。

ひとを、ながく好きでいたいと思わせてくれるような映画ですよ。
ひとを信じられなくなったときは、プロザックよりもこういう映画がいいですね。

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