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力を入れればチューブのお尻が破れる

近年まれに見る痛快な奇想ですわね、こりゃ。
ま、産経新聞の記事をお読みください。

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「君が代」替え歌流布 ネット上「慰安婦」主題?

 卒業式、入学式での国歌斉唱が浸透するなか、「君が代」の替え歌がインターネット上などで流布されている。「従軍慰安婦」や「戦後補償裁判」などをモチーフにした内容だが、本来の歌詞とそっくり同じ発音に聞こえる英語の歌詞になっているのが特徴で、はた目には正しく歌っているかどうか見分けがつきにくい。既に国旗掲揚や国歌斉唱に反対するグループの間で、新手のサボタージュの手段として広がっているようだ。
 替え歌の題名は「KISS ME(私にキスして)」。国旗国歌法の制定以降に一部で流れ始め、いくつかの“改訂版”ができたが、今年二月の卒業シーズンごろには一般のブログや掲示板にも転載されて、広く流布するようになった。
 全国規模で卒業式、入学式での国旗掲揚、国歌斉唱に反対する運動を展開するグループのホームページなどでは、「君が代替え歌の傑作」「心ならずも『君が代』を歌わざるを得ない状況に置かれた人々のために、この歌が心の中の抵抗を支える小さな柱となる」などと紹介されている。
 歌詞は、本来の歌詞と発声が酷似した英語の体裁。例えば冒頭部分は「キス・ミー・ガール・ユア・オールド・ワン」で、「キー(ス)・ミー・ガー(ル)・ヨー・ワー(ン)」と聞こえ、口の動きも本来の歌詞と見分けにくい。
 歌詞の意味は難解だが、政府に賠償請求の裁判を起こした元慰安婦と出会った日本人少女が戦後補償裁判で歴史の真相が明らかにされていくのを心にとどめ、既に亡くなった元慰安婦の無念に思いをはせる−という設定だという。皇室に対する敬慕とはかけ離れた内容で、「国家は殺人を強いるものだと伝えるための歌」と解説したホームページもあった。
 ≪陰湿な運動≫
 高橋史朗・明星大教授(教育学)の話「国旗国歌法の制定後、正面から抵抗できなくなった人たちが陰湿な形で展開する屈折した抵抗運動だろう。表向き唱和しつつ心は正反対。面従腹背だ。国会審議中の教基法改正論議で、教員は崇高な使命を自覚することが与野党双方から提案されている。この歌が歌われる教育現場では、論議の趣旨と全く反する教育が行われる恐れすらある」
     ◇
 ■「君が代」の替え歌 歌詞と訳
 【詞】
Kiss me, girl, your old one.
Till you're near, it's years till you're near
Sounds of the dead, will she know?
She wants all told, now retained.
For cold caves know the moon's seeing the mad and dead.

 【訳】
 私にキスしておくれ、少女よ、このおばあちゃんに。
 おまえがそばに来てくれるまで、何年もかかったよ、そばに来てくれるまで。
 死者たちの声を知ってくれるのかい。
 すべてが語られ、今、心にとどめておくことを望んでくれるんだね。
 だって、そうだよね。冷たい洞窟(どうくつ)は知っているんだからね。
 お月さまは、気がふれて死んでいった者たちのことをずっと見てるってことを。
(産経新聞) - 5月29日3時16分更新


***

何が面白いかって、この英語、一応意味が通じるし、ちゃんと君が代に聞こえないこともない。

もっと面白いのは「高橋史朗・明星大教授(教育学)の話」。「陰湿な形で展開する屈折した抵抗運動」とかって、でもこれ、「陰湿」な感じはあんまりしないんじゃないかなあ。
それと「屈曲」ねえ。まあ、まっすぐじゃないわな、わたし bent ですからそもそもそういうのが好きなのかも。ってか、権力が正面からドドってやってくるときに、非権力者たちはそれを躱すために躯を柔らかくしてくねくねといろんな策を練っていたのであって、高橋史朗ちゃん、民衆の教育ってのはそれが醍醐味、そうも含めて考えないとダメなんでないかね? 産経は北朝鮮関連の工作員もしくはその周辺の反日活動と関係しているのかもしれないと(例の産経抄でも)臭わしておりますが、まあそういうこともあり得るだろうけどね。それより、ここまで(屈曲的に)知的だと、こちらも自覚的にあるいは対抗的に知的にならざるを得ないから、そんで赦せちゃうというか、敢闘賞をあげてもよいような気になってくる。

それと、「表向き唱和しつつ心は正反対。面従腹背」とかっていう批判はむしろ、それを強制させた方に向けられるべきものであって、意を尽くす努力なしに強制すれば面従腹背というのは当然の結果として生じてくるのは歴史の常。そこを考えずにけしからんっていうのは、ひとの家に放火しといてその家から逃げるとは何事だって怒ってるような、盗人猛々しいというか(ちょっとちがうか)、お門違いの批判でしょう。

けっきょくはあれでしょ、日本国の首相も言ってたじゃない? 靖国参拝に関して「私の心の問題だから、他人が口を挟むことはしてもらいたくない、また口をはさむことが問題だ」って。

君が代、日の丸も心の問題。心を尽くさずして強制したつけがお尻から出てきただけの話で、私はむしろこの替え歌は、とても屈曲しつつもちゃんと光を求めて空へと顔を出す松が枝のようにたくましく健康的に見えます。

それにしても産経がこれを報じたというのがいいですわね。これが朝日だと新聞沙汰にしてさらに意図的に煽ってるみたいな印象になるが、産経だと、批判しつつもなお、結果的に世間に流布・流通するって感じの段取りを踏むだろうから。皮肉なもんだ。

ちなみに、歌は次のように日本語音に対応します。

Kiss me, girl, your old one.
き み  が よ お わ
Till you're near, it's years till you're near
ち よ  に    や  ちよ   に(it's は飲み込む)
Sounds of the dead, will she know?
さ  ざ   れ  ぅいし の
She wants all told, now retained.
 いわ   おと  な りて(最初のS音を脱落させる)
For cold caves know the moon's seeing the mad and dead.
  こ け  の    むう  すう    まあ あ で(最初のFor は言いかけて飲み込む)

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