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もうそろそろ新聞も

以下のニュースはTBS報道局の特ダネです。でも、どの新聞社の記事もそれに触れていない。
それは情報として十全なのか。

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【朝日.com】年賀再生紙はがき、無断で古紙配合率低く 日本製紙
2008年01月10日12時47分

 製紙大手の日本製紙は9日、同社が作った「年賀再生紙はがき」の用紙について、古紙の配合率が受注時の取り決めを大幅に下回っていたと発表した。発注元である日本郵政や、購入者への謝罪文も同時に公表した。

 日本製紙によると、配合率は40%と取り決めていたが、古紙が多いと不純物が増えて要求される品質を満たせないと判断し、日本郵政に無断で1〜5%しか使っていなかった。いつから基準を下回っていたかは調査中という。年賀はがきの98%は「年賀再生紙はがき」で、その用紙の日本製紙のシェアは約8割。

 日本郵政は、はがきを印刷会社に発注し、印刷会社が用紙を日本製紙などから調達している。日本郵政は「印刷会社など関係者から調査し、結果を待って今後の対応策を検討する」としている。

【毎日.com】再生紙はがき:年賀はがき配合率「古紙40%」、実は1% 納入元、無断で下げ

 日本郵政グループの古紙40%の年賀はがき(再生紙はがき)で、古紙成分が1~5%のものがあったことが9日、分かった。納入元の日本製紙が、無断で配合率を下げていたことを認めた。日本郵政は「環境重視のイメージが傷つきかねない」と反発し、調査を行う。

 年賀はがきの発行数は毎年約40億枚。うち97・5%が再生紙を利用している。日本製紙は年賀はがき用の紙の約8割を納入しており、古紙の割合が基準に達しない紙が大半とみられる。

 日本製紙は「古紙の割合を多くすると、紙にしみのようなものができるなど品質が下がるため、配合率を低くした」と説明している。同社は、社内調査を始めたが、数年前から配合率を下げていた可能性が高いという。【野原大輔】

【読売】「古紙40%」年賀はがき、実は一部で1~5%

商品偽装
 環境への配慮をうたって古紙を40%利用して作ることになっていた年賀はがきの一部で、実際には1~5%しか古紙が含まれていなかったことがわかった。


 日本郵政(東京都千代田区)などによると、はがき用の紙を納入した日本製紙(同)が品質を向上させるため無断で古紙の配合率を下げたという。

 問題となっているのは、昨年末に全国の郵便局で販売された「再生紙はがき」。経済産業省によると、「再生紙」と表記する場合、含有する古紙の割合について規定はないが、年賀はがきについては日本郵政側が印刷会社と、全体の40%を古紙とする契約を結んでいたという。

 しかし、印刷会社に納入された紙のうち、日本製紙が納入した分で、パルプの割合が極端に高いことがわかった。古紙にはちりなどが多く含まれ、紙のきめが粗くなるため、古紙配合率を下げたとみられる。

 日本製紙は「詳細は答えられない」としている。日本郵政では、「イメージダウンとなるので、明確な契約違反が確認できた場合、損害賠償請求も検討している」としている。

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アメリカに住んで驚いたことは、新聞もテレビも、他紙あるいは他局の特ダネを、自分のところでぜんぜんおかまいなしに「◎◎がこう報じた」と報道することでした。昨日のCNNも、ヒラリー・クリントンの当選確実をAP通信が打つと「APが当確を打ちました」とやりました。日本のテレビ局ニュースが「共同通信がいま当確を打ちました」とか「NHKが当確としていますが、私たちはまだ不確定要素があるとして打ちません」とか言うのは聞いたことがありません。いやそれよりも、私は毎日新聞と東京新聞で新聞記者だったのですけれど、例えば朝日とか読売がなにかすごい特ダネを抜いたときに、それがどんなに重要なニュースであっても、そう、建前は自分で調べたことじゃないから=つまり自分でほんとうのことかどうか確認できないから、それを掲載することはできない、とするのですね。それは当然です。でも、そうなのかなあ、と思ったのは、自分でそれが本当だったと確認できたとしますわね、つまり、後追いですわ。そのとき、そのニュースを書いても、整理さんに扱いを小さくしてくれとデスクなんかが言うんですわね。「いや、抜かれネタでね」とか。

それって、まだ続いているようですね。
でも、いいじゃないのかなあ、って思うの、もう、そういうの。
「TBSが報じたところによると、」っていうことのほうが、読者・視聴者にとって必要な情報じゃないのかなあ。いや、どっかの地裁で例えそうやって報じたとしてもそれが虚報だった場合にそれによって生じる損害は伝聞ででも報じたそのメディアが負う、みたいな判決が出ましたわね、具体的にはどういう事件でどういう内容だったかは忘れましたけど。

いや、たとえ冒頭のこの古紙再生偽装、このニュース、「日本製紙」が認めたことで初めて他社・他紙が書けるニュースになったんですが、その場合でも、この事態の発覚の敬意として「TBSに内部告発の手紙が来て、」というふうに報じるのが、十全の情報ではないか? そうじゃなきゃ、なんでこのことが明らかになったのか、読者としてはわからんのですよ。まさか、日本製紙が誰にも何も言われないのに懺悔したってか?ってことですわ。おまけにTBSは今回、全国の系列局報道部に指示したのかあちこちの郵便局で再生紙ハガキを購入してそれをどっかの分析所に持ち込んで古紙の混合率を計算させてまでいて、かなり用意周到にがんばって日本製紙にその事実を突きつけ、どうだ、参ったかってやったんですわ。発覚の敬意くらいTBSに敬意を示したっていいんじゃないのかい?

だって、それを言わないってのは、それは十全の事実ではないんだもの。言わないことはウソではないが、言わないことによって伝えるべきことを伝えないという事実を放っておく、未必の故意ですよね。

同じような、なんというか、意味があるのかないのかわからんような「縄張り意識」みたいなのが日本のメディアにはほかにもまだ残っています。

たとえば他局の番組のこと、口にできない、というか口にしないのが礼儀とされるでしょ? 礼儀と言って違うなら、あるいは暗黙のルール? それもじつにくだらんのです。そこにリンゴがあるのをみんなわかっているのに、リンゴがない振りをしてリンゴの話を絶対にしないかのような。むかし、紅白歌合戦で絶対その直前に決まったレコード大賞のことを言わなかったんですよ。そのことに触れるようになったのは20年くらい前からかなあ。そのまえは、レコード大賞獲って駆けつけた歌手のこと、知らんぷりして曲紹介してた。レコード大賞の権威が落ち始めたころに、言うようになったんだけどね。

で、アメリカのトークショートかで俳優がゲストに来ると、ぜんぜんかまわないで他局や他系列の映画会社の映画の話とかするんです。たとえば「笑っていいとも」にゲストで出てきた俳優が日本テレビの新番組について話すのと同じです。へえ、こういう話をするんだって最初はビックリしたけど、聞いてればべつになんの異和感もなくなる。だって、事実だもんね。もっとビックリするのは、他局で、他局の番組の番宣CMが流れたりするのよ。これも日本じゃ考えられない。

これは、あれかね、大映とか日活とか東宝とか、俳優たちがみんな映画会社のお抱えで他の社の映画には出られなかった時代の名残でしょうね。自分の出演作、出演会社にがんじがらめになって、それ以外のものは存在しないも同然、っていう。

対してこちらは俳優は組合もあるし(いままだ脚本家組合のストが続いていて番組製作が大混乱に陥っているように、かなりパワフルなのです)、まずは話が「会社」つながりではなく、「俳優」本人つながりだということなんでしょうね。その俳優の前作がパラマウントであろうがフォックスであろうがワーナーであろうが、CBSだろうがABCだろうがNBCだろうが、主語はその俳優であって映画会社やTV局ではない、ってこと。ここら辺も個人主義と会社主義とかの違いなんでしょう。

こう考えるとどうでもいいのになあと思われることもバカみたいな歴史的背景や文化背景があったりするのがわかりますが、それはトートロジーっぽく言えばやはりしょせんバカみたいなことなのです。

そういう呪縛から逃れて、わかってることはみんな教えてよって、思うんですがね。

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